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106 取引成立

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 ―――――清光視点―――――


 小烏丸が持ち掛けてきた取引は、築城と服の強化だった。


「城と、服の最大強化の取引か・・・」


 見た目的には釣り合ってるとはとても言えないが、服の最大強化はやろうと思って出来るような事ではない。武器だけじゃなく服も最強になるってのは非常に魅力的だ。小烏丸め、良い交渉を持ち掛けて来たな。・・・だがしかし!


「なるほど、面白い取引だ。そうだな・・・、俺の服だけじゃなく、コテツの服も最大強化するという条件なら良いだろう」





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 ―――――小烏丸視点―――――



 なるほどそう来たか・・・、だがそれは想定内だ。

 更に半月から一ヶ月苦しむことにはなるが、巨大な城なんて普通は作るのに莫大な金と年月と労働力が必要だ。この取引は絶対に悪くない条件のハズ。


「わかりました。二人分の服を最大強化しましょう」
「ならば取引は成立だ!」

 よしッ!

「ああ、武器と服とどちらを先に強化した方がいいですか?」
「んー、そうだな・・・。武器は予備があるから問題ないが、コテツの黒衣は予備が無いからな。服を先にしてもらおうか、コテツの服からで頼む」
「一ヶ月だっけ?その間何着っかな~・・・」
「了解です。じゃあ先に虎徹さんの服からスタートで、完成したら連絡しますね」

 突然始まった交渉を横で静かに聞いていたミスフィートさんと目が合った。

「な、なあ!城って・・・、こんな城が尾張にも建つのか!?」
「その通りです!取引が無事成立しましたので、ルーサイアに城が建ちますよ!」
「うわあ~~~!凄いじゃないか!!清光殿、宜しく頼む!」

 まさかこの美しい城が手に入るなんて、そりゃあビックリだよな。
 俺だってコレを見た時は、他人事でしかなかったもん。

「城は任せてくれ。あー、ついでだから2人について行ってそのまま建てるか」
「え?大丈夫なんですか?」
「ニーナ、問題ないだろう?」
「んーー、たぶん大丈夫にゃ!」
「あ、ならオレも一緒に行こ!一度尾張に行けば、転移で自由に行き来出来るようになるからな!」

 あーそっか。虎徹さんにはその手があるんだっけ。
 転移魔法とかむっちゃ羨ましいわ。

「あのー、帰りはバイクを使うとして、ミスフィートさんの格好じゃバイクは厳しいから着替えさせたいのですが、部屋を貸してもらっていいですか?」
「そうだな。ニーナ、隣の部屋に案内してやってくれ」
「わかったにゃ」


 ニーニャさんの案内で、隣の部屋に連れて行ってもらう。





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 ―――――清光視点―――――



「コテツ、どう思った?」

「ん?ああ、ミスフィート殿のことだよな?絶対につえーぞ。のほほんとした雰囲気の人だけど、会話中一瞬の隙も無かった」
「やはり同じ感想か。ジャバルグを倒したってんだから弱い筈がないんだが、小烏丸が崇拝してるだけのことはあるな」

 小烏丸の武器の力で大名になる事が出来た、というのも事実だろう。
 しかし何年もの間、反乱軍のリーダーとして活動していた実力は本物だ。
 小烏丸と出会えて良かったな。強さだけじゃなく、豪運の持ち主とも言えよう。

「つーか、小烏丸もパワーアップしてたな!戦で結構レベル上げたんじゃね?」
「まあそういう事なのだろう。これが敵なら相当厄介だが、味方となれば頼もしい限りだ」
「それよりアニキ!オレらも服を預けるから着替えないとイカンぞ!」
「おっとそうだった!」





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 ―――――小烏丸視点―――――



 ミスフィートさんの着替えを終え、さっきの部屋に帰って来た。


「にゃはははははは!コテツが白いにゃ!!」

 それを聞き、釣られるように虎徹さんを見てみると、確かに白衣姿になっていた。

「オレは一ヶ月の間、マッドサイエンティストとして生きることになった!!どうぞよろしく!」
「ハハハハッ!でも清光さんは変わってないですね」
「何を言う!背中を見て見ろ、全然違うだろ!!」

 清光さんが後ろを向いた。
 あー、確かに違うな。お経だったのが、天下無双の文字になっている。

「なるほど!予備の特攻服も持っていたんですね」
「じゃあ、強化する服も預けておくぞ」


 二人の服を預かった。


「あ、そうそう!ミスフィート殿」
「ん?私か?」
「アニキは城を作るけど、オレだけ何もしないのもアレなんで、コレをあげるよ」

 虎徹さんが、俺のと色違いのリュックをミスフィートさんに渡した。

「それって、もしかしてマジックバッグでは!?」
「その通りだ。ミスフィート殿、このナイフで指を少し切ってからリュックに触れて登録してくれ」
「登録?リュックってのは、この鞄の事であってるよな?」
「ああ、その背負うタイプの鞄の名前をリュックサックと言います。マジで凄まじい鞄なので、虎徹さんに言われた通りにして下さい」


 ミスフィートさんが、言われた通りに登録を完了した。
 それを確認した後、さっき俺のマジックバッグに入れた蒼いバイクを取り出した。


「このバイクに触れて、『入れ』と強く願ってみて下さい」
「ん?わかった。やってみる」

 バイクが消えて、ミスフィートさんのマジックバッグに収納された。

「え!?消えたぞ??」
「不思議だとは思いますが、今のでバイクがそのリュックの中に入ったんです。『バイク出てこい』って念じれば取り出せます」

「おお、出て来た!・・・・・・ん?」

 ミスフィートさんが手をポンと叩いた。

「あーーーっ!!小烏丸七不思議の秘密はこれだったのか!!!」
「その通り。俺もこのマジックバッグを虎徹さんから頂いたんですよ。そのマジックバッグの中には、とんでもない量の物が入りますので重宝しますよ」
「そうだったのか!虎徹殿、凄い鞄をありがとう!!」
「喜んでもらえて良かったよ」

 いやー本当にありがたい!これで莫大な財宝や金貨なんかを、彼女が自分で管理出来るようになった。

「あー、バイクはしょうがないですけど、小物なんかを取り出す時は、リュックから取り出すふりだけでもした方が良いかもです。どこから出したんだ!?って思われてしまうので・・・。俺が何度もやらかしてるから今更ですけどね!」
「なるほど、確かに小芝居をしないと違和感が出てしまうな。小烏丸の違和感にはもう慣れたが」
「まあ、明らかにリュックより大きい物を出してましたしね」

 しょうがないものはしょうがないのだ。


「さて、そろそろ尾張に向けて出発しようか」


 やるべきことは全部やったので、後はもう帰るだけだ。
 急いで三河に来て本当に良かった。尾張に巨大な城が建ったら絶対みんな驚くぞ!
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