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88 ドワーフに魔道具を配達

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 ピピンに連れられて風呂場に入って来たのは、ピピン隊のエレンだった。

 すぐに出て行こうと思ったんだけど、シャワーはともかく、浴槽の方はちゃんと説明しなきゃ危険なことに気が付いた。

「あはははははっ!」
「ちょっと、や~め~て~!」

「おーーーい!2人に浴槽の説明だけしとくから、こっちに集合ー!」
「ん?なに?」
「いまさら浴槽の説明??」

 確かに今更って思うかもだけど、今までの浴槽とは全く違うのだよ!

「えーと、ココに取り付けた魔道具は水生成機なんだ。このボタンを押すと・・・、こうやって水が出て来る」

「水生成機は知ってるわよ」
「さっき、お水飲んだもんねー!」
「まあこっちはほとんど問題ないんだけど、もう一つの魔道具の方が少し危ないので説明しとくよ」

 いや、水を出しっ放しにされるのも困るんだけどさ。

「まず最初に、水生成機の起動ボタンを押して、浴槽に水を溜めます。んで、水が浴槽いっぱいになったら水生成機を停止して、次はこっちの熱生成機の方のボタンを押します。すると水が熱せられて、お湯になってくワケですよ」

「へーーーーー!もう火を使って沸かさなくても良いってこと?」

「そそ。ただね、簡単にお湯を沸かせるってのが逆に問題点でもあってさ、浴槽の水がお湯になった後、熱生成機をキチンと停止しないと、非常に拙いことになるんだ」

 うっかりミスってのは、きっとそのうち発生してしまうだろうけどな。
 けど、そこまで読み切って対処しておけば、最悪のパターンは防げるハズだ。

「浴槽の水が熱湯になっているのに、熱生成機を停止し忘れてしまうと、しまいにはお湯が全部蒸発して浴槽がぶっ壊れてしまうのだ。そしてもっと最悪なケースは。風呂場が灼熱状態になって、火事になる可能性がある」
「エーーー!危ないよ!!」
「それは危険ね・・・」

「なので、お湯を沸かす時は必ず何人かでしっかり見張って、確実に停止させるってことを一人一人が心掛けて欲しいんだ」
「了解!」
「ボタンをもう一回押せば止まるのよね?」
「そそ。熱生成機が動いてる時は、ほら、ココが光るからわかるハズ」

 目で見てすぐわかるように、湯沸かし魔道具が稼働中はランプが光るようにしたのだ。いや~、これは作るのに苦労したね。

「なるほど。そこが光ってないか確認することが、ものすごく大事と!」
「もちろん張り紙もしとくけど、2人からみんなに説明してもらって良いかい?」
「わかったー!」
「みんなにしっかり言っておくわね!」

「よーし、んじゃ俺はそろそろ行くんで、ごゆっくりどうぞ~」


 風呂場を出て、脱衣所に移動した。


 本当に危険だと認識させる為に少し大袈裟に説明したので、あんだけ念を押せば気を付けてくれるハズ。
 魔石のエネルギーが切れれば勝手に止まるんだけどさ、それでも最悪のケースを想定してないとマジで危ないからな。

 マジックバッグから紙を取り出して、注意事項をデカデカと書く。

 念の為2枚書いて、1枚は脱衣所の目立つ所に貼り、もう1枚は風呂場のドア横に貼った。そして壁から工事中の貼り紙を引っぺがして、工事の終了だ!


 んじゃ次は、ドワーフ工房に魔道具の配達に行くぞー!



 ・・・・・



 キンッキンッキンッキンッ


 うおおおぉ、少し見ない間にすごいことになってやがる!

 まずドワーフがめっさ増えとる。
 鍛冶の設備も完璧に整っていて、ぶっちゃけ足の踏み場がねえ。


「おーーーーい!頼まれてたモノを持ってきたぞー!」


「お?こがらす殿じゃないか」

 鉱山組のガルダンさんだ。

「前に火を付ける道具を欲しがってたろ?それを作って持って来た」

 テーブルの上に、火の魔道具をどちゃっと置いた。

「おおお!こんなに大量に作ってくれたのか!有難い」
「ドワーフがここまで増えてるとは思わなかったんで、全員の分までは無いかもしれない」
「いやいや、十分助かるわい!」
「皆には刀を作ってもらってるしな。むしろこっちが助かってるよ」
「ガハハハハ!ジャバルグ軍には絶対に勝たなきゃならんからな!ワシらが頑張ればその分勝算が上がる故に、止まるワケにゃ行くまいよ」
「だな!尾張を奪取するまで突っ走ろう。目立った功績を上げるには、今こそ好機なんだ。ココで一頑張りすれば、ドワーフの街が現実味を帯びて来るぞ!」
「楽しみじゃのう~」

 尾張を手に入れた後の平和な状態じゃ、もう手遅れなんだよ。
 出世したいならば、間違いなく今が最大の好機だ。1番苦しい時に大きな貢献をするんだ。逆境であればあるほど、その印象は強く残る!

「この前論功行賞があったろ?・・・ここだけの話だけどさ、実は戦功上位にドワーフの名前も挙がってたんだよ。ただドワーフの願いが街だったんで、尾張を手に入れた後じゃないとさすがに無理ってなってさ」
「おお!ワシらの努力も認められてたか!」
「ミスフィートさんは、ドワーフの働きをちゃんと見ているぞ。次も活躍すれば、夢が現実になる可能性は十分ある!」
「おおおおーー!そりゃあもう必死に頑張るしかないのう!」
「ハハハッ!まあ死なない程度に無茶してくれ!」
「ガハハハハハハハ!」

 ほんとドワーフって豪快で話が弾むわー。

 テーブルの上に酒を数本並べた。

「おおっ!酒じゃないか!」
「これで英気を養ってくれ。んじゃ俺はそろそろ行くわ」
「いつも助かるわい!こがらす殿も無茶せんようにな!」


 喧騒な鍛冶工房を出て、領主の館に向かって歩き出した。



 ・・・・・



 館に戻って廊下を歩いていたら、ミスフィートさんと鉢合わせた。
 髪が濡れてる所を見ると風呂上りっぽいな。

「小烏丸っ!あのシャワーってのは本当に凄いな!」
「お?早速使ったんですね」
「頭上からお湯が降って来るんで、泡を流すのが楽だったぞ!」

 なるほど・・・、初シャワーの感想って面白いな!
 たぶん、それぞれが違う感じ方をしたのではなかろうか?

「ピピンが大笑いしてましたけど、くすぐったかったですか?」
「んーーー、確かに少しくすぐったかったかもだな」
「なるほど・・・、初めての体験ですもんね。あ、熱生成機の説明は聞きました?」
「ああ、浴槽の水を沸かすときは、最後にちゃんと停止しないと火事になるから、すごく注意するように!って言われたぞ。貼り紙にも書いてあった」
「おおー!皆に通達されているならば安心ですね。あの魔道具だけはちゃんと扱わないと本当に危険なので、ミスフィートさんからもみんなに警告しておいて下さい」
「わかった。あ、そうだ!久々に髪を乾かしてくれないか?」
「いいですよ。用事は全て終わらせたんで」


 ブオーーー


 ブラシで整えながら、ドライヤーでミスフィートさんの髪を乾かす。

 彼女の髪型は肩くらいまでのセミロングなんだけど、遊び心が芽生えて、何となく外ハネにしてみた。

「んんんん?なんか髪の毛が跳ねているぞ」
「たまにはこんな髪型もアリかなーと思いまして」
「なるほど、コレはわざとやっていたのか!ドライヤーってのは、乾かすだけの道具じゃなかったのだな!」
「そうですねー。お嬢なんかは、かなりドライヤーを使いこなしてると思いますよ。あのクルクルはかなりのテクニックが必要ですから」
「ハハハハッ!お嬢の髪型はドライヤー技術の賜物だったワケか!」


 そんなこんなで、まったりと楽しい時間を過ごした。
 最近は魔道具作りばっかだったから、たまにはこういう息抜きも悪くないね。
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