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38 反乱軍のアジト

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 ミスフィートさんの後ろに続いて、アジトの中に入った。
 しかし中にいる人は、すぐ後から入って来た俺を見て、また警戒心を強めた。

「な、何者だ!?」

 ああ、俺のことか。
 確かにこんなマスク着けた奴がアジトに入ってきたら警戒するわな。

「武器を収めろ!彼は敵ではない。今日から軍に入る事になった」

「し、しかしッ!」
「見た目は派手だけど、奴らと戦えるほどの実力はあるのか?」

「それは間違いない。何しろさっき助けてもらったのだからな」
「助けて!?いや、でも・・・」
「なあ!アタシと勝負させてくれよ!実力を見てみたい」

 勝ち気そうな女が勝負を持ち掛けて来た。

「ぐぬぬ・・・、どうする?」
「俺は構わないですよ」

「よっしゃ!じゃあ訓練場に行こうぜ!」


 訓練場は、階段を降りた地下にあった。



「武器はどうするんだ?」
「剣でいいだろ!まさか怖いわけじゃあるまい?」
「なるほど。それで構わない」

「いや、危険だぞ!大丈夫なのか!?」

 ミスフィートさんが心配してるが別に問題は無いだろう。
 訓練場の中央まで歩き、勝ち気な女と向かい合う。

「俺は準備出来ている。始めてくれ」
「剣も抜かずにか!?アタシも舐められたもんだね!」

「わかった。両者構え!」

 女が剣を構える。


「始め!」

 すかさず女がダッシュで接近し、剣を振り下ろす。

 速い!

 女の剣を躱すと、すぐさま軌道を変えて剣が襲い掛かって来る。

 なるほど、言うだけのことはある。2年前の俺なら絶対に勝てない相手だ。

 だがな。

 ギンッ!

 抜刀術で女の剣を叩き折った。

「え?・・・あーーーーっ!アタシの剣がッ!」
「それまで!」

 ふー、なんとか勝てたか。
 この登場の仕方で負けてたらちょっと恥ずかしいとこだった。


「こがらすまる!凄く強くなったな!2年前とは別人の様だ!」


 ミスフィートさんに褒められてしまったぞ。やっぱ嬉しいな。
 しかし俺は、ミスフィートさんの致命的な弱点にも気付いてしまった。


「ミスフィートさん、貴女とも一戦したいのだけど、どうですか?」
「ん?私とか?」

「ええ。テーブルの足なんかじゃなく、貴女の剣と本気で戦ってみたい」

「ほう?言うじゃないか。ユリ、私の剣を持って来てくれ!」
「あいよー!」


 少しして、ユリという女が剣を抱えて戻って来た。

 ミスフィートさんが剣を受け取り、ビュンと振る。

 確かにいい剣だ。
 彼女の本当の力が見れるかもしれない。

「じゃあ早速始めるぞ?」
「いつでもどうぞ」

「じゃあワタシが合図をするね。それでは両者構え!」


 訓練場の空気が重くなった。これが強者のプレッシャーか・・・。


「始め!」


「・・・・・・」


 お互い不用意な攻撃はせず、じりじりと隙を伺う。

 二人の強烈なプレッシャーで、場がおかしなことになっている。
 先に動いた方が負ける、そんな状態だ。

 だが俺は敢えて隙を作り、ニヤリと笑った。
 まあ、虎徹さんを真似ただけだが。

 当然ミスフィートさんがそのような隙を見逃すハズもない。
 瞬きする間もなく、一瞬で目の前に剣が迫る。

 ココだ!

 ギンッ!

 ミスフィートさんの剣が折れ、訓練場の床に突き刺さった。


「なッ!?」


「ミスフィートさん、やはり貴女は途轍もなく強い」


 床に落ちた折れた剣を拾い上げる。


「だが貴女には大きな弱点がある」


 折れた剣を彼女に渡す。


「貴方の実力に武器がまったく見合ってないんだ」

「くっ!!しかしそれ以上の武器など、此処では手に入らない!」


 背中のリュックを降ろし、大量の刀を床にぶち撒いた。


「な!?」
「うわあ~!武器がこんなに・・・」
「でもこの剣、細すぎないか??」

「えーと、みんな鑑定は使えるかい?」

「あ、ああ。鑑定なら使えるが」


「!!!」
「こ、これは」
「何コレ!?凄く強いけど・・・、刀って何?」


[刀]
 :織田小烏丸作の刀。魔法が付与されている。評価A
 :斬撃強化(大)
 :衝撃耐性++


「みんな!今日から、この刀を使いこなせるように訓練して欲しい」
「非常に有難いが、いいのか?」

 ミスフィートさんを見て、一つ頷く。

「どれも一緒だけど、それぞれ好きな刀を手に取ってくれ」


 訓練場にいた全員が刀を持ったのを確認する。


「じゃあ刀を鞘から抜いていいですよ。ああ、刃には触るな!簡単に指が切断されるぞ!」

 思わず強く言い放ってしまったけど、これくらい強く言わないと大怪我してからでは遅いしな。この刀は本当に危険だから、逆に良かったかもしれない。

「うわ~~~~!綺麗な剣・・・」
「いや、剣じゃなくて刀って言うらしいぞ」
「痛ッ!」
「っておい!今触るなと言われたばかりだろうが!」

「これは凄い・・・、この刀があればジャバルグと戦える!」

「ミスフィートさん」
「ん?」
「貴女はこの軍の総大将だ。総大将にはそれに相応しい武器を持つ必要がある」
「私はみんなと一緒ので構わないが」

 リュックから一振りの刀を取り出し、彼女に手渡した。


「なッ!なんだこの凄まじい剣は!!」


[毘沙門天]
 :織田小烏丸作の刀。様々な付与魔法が込められている。評価S
 :総オリハルコン製。
 :斬撃強化(強)斬撃速度強化(強)刺突強化(強)刺突速度強化(強)
 :自動修復(中)衝撃耐性+++ 汚れ耐性+++


「貴女にその刀を献上します。その武器と貴女の力で皆を導いてくれ!」


 この日を境に反乱軍は急激に強くなる。ついに反撃の狼煙が上げられたのだ。
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