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15 超ビギナーズラック

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 首の後ろをトントンしながら冷静になる。

 危ない危ない。妄想の世界に閉じ込められる所だった。

 とりあえず出だしは好調だ。中身は女物ではあったが、赤カプセルを引いたんだからな。
 ガチャは色々あるけど、男物の服を引くまでデラックスを粘ってみるか?

 装備品だと鎧、レギンス、ヘルム、ガントレット、剣、盾と種類が多くて、最低限の鎧とレギンスだけを揃えるのも大変と思う。だが服ならば巫女装束を見た感じ、一着出せばそこで終了できる。しかも服なので軽いってのがいい。
 うん、やっぱりデラックスにしよう。

 投入口に魔石を10個入れた。よし、レバーが光ったな。

 男物が出ることを強く願ったが、物欲が出るとこういうのは大抵上手く行かないと考え直し、菩薩のような心で回すよう心掛けて集中力を高める。


 ・・・ココだ。



 ガチャコン!   テー!テテテテー!テテテテー!チャーチャチャチャー!

 ファンファーレが響き渡る。



「なにィ!?レインボーだとお!?」

 いきなりやっちまった!これがビギナーズラックと言うヤツか?
 運は多少良い方だと思ってはいたが、まさか最強を引けるとは・・・。

 カプセルの美しさに感動しながら開けて、中のカードを確認する。

 書かれている文字は【服】

 ん?また服なのか。今度こそ男物ならいいのだが・・・。


 カプセルが服に変化する。


 カラン!

「うわわわッ!」

 なぜか服の上に乗っていたヘルメットを床に落としてしまった。
 ヘルメットとセットってどういうこっちゃ!?

 服を広げてみる。


「・・・・・・俺はコレを見たことがある」


 上下ともに赤い服。

 肩と胸元は、黒と金で豪華な感じにデザインされており、白いベルト、白いブーツ、白い手袋もセットになっている。

 何よりもインパクトがある付属品はマスクだ。
 いや、ヘッドギアと言うのか?これは。

 そして最後のパーツは床に転がっている白いヘルメット。

 もう間違いないだろう。


「赤い流星のコスチュームじゃねえか!!!」


 全身全霊、魂を込めてツッコんだ。



[赤い流星セット]
 :これを着用することにより、3倍の速度で動けると言う伝説がある。評価S
 :上着、ズボン、ブーツ、ベルト
  手袋、ゴーグル、ヘルメット、マントの8点セット。
 :フル装備で全パラメータ5%アップ
 :斬撃耐性++ 衝撃耐性++ 魔法耐性++ 炎耐性+ 熱耐性+ 冷気耐性+
  汚れ耐性++
 :自動修復(大)サイズ自動調節 防水機能 消臭脱臭機能



 死ぬほどつええ・・・。

 俺はコレを着なきゃならんのか?
 せめてマスクとヘルメットは勘弁して欲しいが、フル装備で5%アップという特典付きなのがポイントだ。
 それに魔物と戦い続ける以上、ヘルメット着用の方が安全なのは間違いない。

 白状しよう。俺は確かに彼に憧れたことがある。
 いや、憧れたのは俺だけじゃないハズだ!なんだかんだで格好良いからな。

 でもだ。
 
 19歳にもなって、赤い流星の服を着るような事態になるとは普通思わないだろ!

 ・・・だが重大な目的がある今の俺は、絶対に死ぬワケにゃいかない。
 そしてこの衣装を着れば、間違いなく生存率が跳ね上がることだろう。


「ああ、わかったよ。着ればいいんだろ!?」


 どうせココには俺の他に誰もいないんだ。ああ、着てやるさ!!


 ・・・・・


 服は全部着用した。残るはマスクとヘルメットだけだ。

 ウーム・・・。このマスクを着けたら前が見えにくくならんか?
 でもフル装備せんとパラメータ上がらんしなあ。

 マスクを装着してみた。

「え?普通にハッキリクッキリ見えるんだが・・・」

 あれえ?俺ちゃんと装着したよな??

 手で触ってみると、ちゃんとマスクの感触があった。
 マジか。赤い流星は前がしっかり見えていたのだな・・・。

 最後にヘルメットをかぶって、この世界に赤い流星が誕生した。


「きっと俺の顔は真っ赤になっていることだろう」

 マスクを付けているので、表情を隠せるのは助かる。
 まあ他に誰もいないけどな!

 それにしてもこのヘルメット。何もかぶってないと思うほど感触が無い。重さもまったく感じない。
 この手袋にしても窮屈な感じが全く無くて、物に触れても素手と同じ感覚なんだよ。

 本当異世界ってワケ分からんな。いやまあ有難い仕様なんだが。


 一旦部屋に戻り、スタスタと鏡の前に行き自分の姿を確認する。


「どこからどう見ても、完璧に赤い流星だ」


 もういいや。ここにいる間は赤い流星として生きてゆこう。
 そして、とある事実に気付いた。

 虎徹さんが中二病全開な理由って、間違い無くコレじゃん!

 清光さんの特攻服も絶対ガチャから出したヤツだよな?
 彼はリーゼントだったから、ガチで暴走族な可能性もあるが。

 なるほど。ガチャを回すには何かを捨てなきゃダメなんだな。

 暴走族、レディース、中二病、赤い流星。もしかすると巫女さんも誕生する。
 いいだろう。今は赤い流星として生きてやるさ。


 だが俺は諦めないぞ。いつか違う服を手に入れて普通の人間に戻ってやるからな!
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