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第314話 メガネ美女現る
しおりを挟む―――――マグロのおっちゃん視点―――――
「まさかマグナロック様が自力で脱出しているなど思いもしませんでした!」
「いや、自力などではない。俺はたまたまお隣さんだったから、ついでに助けてもらえただけに過ぎん」
「お隣さん??」
「牢屋のお隣さんだ。今日隣の牢屋に引っ越して来たばかりの子供が、拷問されて気絶していた俺を治療してくれてな」
「はい?その助けてくれたお隣さんって、子供なのですか!?」
「子供といっても全然普通の子供なんかじゃないからな?突然ジグスレイドを潰すと言い出して、正直『何言ってんだこいつ?』と思ったが、驚いたことに本気だったんだよ!牢屋に入れられている分際なのにだぞ?」
「は、ははっ・・・。随分と好戦的なお子様なのですね」
「たぶんお前が想像する100倍くらい好戦的だな。というか、それだけの力があるからこその発言だったんだ。絶対にあの子を敵に回すんじゃねえぞ?国が亡びる」
「国が亡びるって、いくら何でもそれは・・・」
国が滅びるはさすがに少し言い過ぎかもしれんが、あれだけの魔物を召喚して全く疲れた様子を見せなかったからな。
看守を一撃で葬ったデカくて凶悪極まりない魔物。
おそらく、あの1体を倒すだけでも1000の兵士が殺られるだろう。
だが問題なのはそこからだ。あの子が魔物使いなら、魔物を少しずつ削っていけばいずれ殲滅出来るだろうけど、恐ろしいことに召喚士なんだよ!
死ぬ思いで倒した魔物が一瞬で復活するんだぞ?
しかも、アレよりも強い召喚獣がいるとか言ってたような気がする・・・。
「牢屋に閉じ込められている状態からジグスレイドの拠点を制圧したんだぞ?今も屋敷の中には500人近くの構成員が瀕死の状態で転がっている。しかも俺は一切手出ししていない。全てその子が一人でやったんだ!」
「うぇええええええええええ!?手練れの魔法詠唱者とかですか?」
「違う。奴らは魔物の大群によって全滅させられた」
「魔物の大群ですか!?凄腕の魔物使いなのですね!」
「ハズレだ」
「いや、でも魔物の大群って・・・」
「魔物を使役する職業は他にもあるだろう?」
彼女がハッとした顔になった。
「もしかして召喚士ですか?」
「正解だ」
「嘘ですよね?筋骨隆々な子供とか、全く想像がつきません!」
「いや、クーヤに筋肉なんて存在しないぞ」
「クーヤ?」
「ああ、クーヤってのがその子の名前だ」
「でも、そんなんでどうやって召喚獣を手に入れたのですか?」
「しらん!むしろ俺が聞きたいくらいだ。本当に意味不明な子供なんだよ!」
「・・・あ、可愛い子発見!」
「ん?」
俺の後ろを見ているようだったので、振り返ってみた。
「クーヤじゃないか!」
「えええええーーーーー!!あの天使の様な可愛い子がそうなのですか!?」
************************************************************
―――――天使の様な可愛いクーヤちゃん視点―――――
「ねえねえマグロのおっちゃん!その人誰?」
大手企業の秘書みたいな感じの、キリッとしたメガネ美人だ。
拉致被害者の女性の中に、こんな人いなかったと思うんだよね。
「ああ、彼女は俺の部下だ。ジグスレイドに囚われていた俺を救出しようと、仲間達と共にチャンスを伺っていたらしい」
「おお~、仲間に見捨てられてなかったんだね!」
「こう見えても部下達に結構慕われているんだぞ!」
「初めまして。ファリーメルテと申します」
ほうほうほう!これまた珍しい感じの名前ですね。
ファリーお姉ちゃん?・・・いや違うな。
「メルお姉ちゃんって呼ぶね!ボクはクーヤだよ」
それを聞いたメルお姉ちゃんが、ブルッと震えたような気がした。
「メルお姉ちゃん・・・すごくいいかも!そんな呼び方されたのは初めてです!」
「クーヤってなぜか素直に頭の3文字とかで呼ばないんだよな~。俺なんてマグロのおっちゃんって呼ばれているんだぞ?」
「マグロのおっちゃん・・・、ふふっ!アハハハハハハハ!!」
なんかウケたらしい。
他の人は大体そのまま呼んでるんだけどね~。
「せっかくだから、メルお姉ちゃんもステーキ食べていいよ!」
「私もご一緒していいのですか?」
「そうだそうだ、俺も肉の順番待ちをしている最中だった!」
鉄板のステーキがちょうどイイ感じに焼けていたので、二人分を確保した。
メルお姉ちゃんも、良い匂いにやられてお腹が空いていたのだろう。
マグロのおっちゃんと同時に、ステーキにかぶりついた。
「うっま!!何なんだこの肉は!?」
「わああああ~!なんて美味しいお肉なのでしょうか!」
「そりゃあ子供達も満面の笑みになるわな。こんな美味い肉初めて食ったぞ!」
「・・・王様でもこんな極上のお肉は食べたことが無いのでは?」
「無いだろうよ。おそらくミミリア王国にしかいない魔物の肉なのだろう」
「ミミリア王国ですか!?」
「クーヤ達はミミリア王国出身らしい」
「へーーーーー!一度行ってみたいですね!」
バッファローの存在はトップシークレットなので、一部の高ランク冒険者しか知らない、未開の地にいる魔物とだけ説明してあげた。
肉を平らげた二人は、とても満足そうな顔をしている。
「ねえねえマグロのおっちゃん!仲間がいるなら、屋敷の中で死にかけてる人達を何とかしてもらえない?」
「そうだな・・・。悪党とはいえただ死なせるのは勿体ないか。鉱山送りにして少しでも国の為に働いてもらうとしよう。ファリー、頼めるか?」
「メルです」
「・・・メル、頼めるか?」
「了解しました」
メルお姉ちゃんが姿を消してから10分もすると、マグロのおっちゃんの部下と思われる人達が現れて、ゾロゾロと屋敷の中へ入って行った。
ジグスレイドの人達、鉱山のお仕事がんばってね~!
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