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第305話 ボロクソのおっさんを治療する

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 ―――――レオナ視点―――――


 しつこいバカどもを返り討ちにしたまでは良かったが、戦闘が終わってすぐにクーヤがいなくなってることに気付いて愕然とした。

 まさかアタシらに同行してる子供を狙って来るとは思わなかった・・・。

 まあクーヤのことだから、殺されでもしなければ自力で何とかするとは思うが、それよりも問題なのはこっちだ!

 クーヤが誘拐されたことに気付いた瞬間、タマの雰囲気が一変し、どす黒い靄の様なモノを身体の周りに纏い始めた。

 間違いなく、バーサーカーという職業クラスの狂気的な何かだと思う。

 もしクーヤが殺されでもしたら、彼女はもう狂気の世界から戻って来られなくなるかもしれない。っていうかすでに危険領域だ!!

 クーヤがいない状況で、どうやったらこっちの世界に連れ戻せるんだ!?
 まさかタマがそれほどまでにクーヤに依存していたとは・・・。


「ねえ、アレを見て!」


 アイリスが指差した方向を見ると、ハム助が駆け寄って来るのが見えた。


「ハム助じゃねえか!!」


 タマの視線が、ハム助に向いたのが分かった。


『チュウ!』


「・・・なんだ??」


 ハム助がキョロキョロを周囲を見渡し、向こうに走って行ったかと思うと、落ちていた木の枝を拾って戻って来た。そして地面に文字を書き始めた。


「そうか!クーヤからの伝言だ!!」


「!?」


 それを聞いたタマの目が大きく開き、身体から放出されていた黒い靄が止まった。


「・・・えーと?誘拐されて牢屋に入れられたけど全然よゆー!たぶんヤツらのアジト。急いで助けに来なくても大丈夫。危なくなったらドラちゃん呼ぶから」

「良かったーーーーー!クーヤちゃん無事だったんだね!」
「思ったよりも元気そうじゃない?」
「悪者に誘拐されながらもハム助を召喚して連絡手段を残したんですね!流石は天使様です!」
「・・・クーヤ、無事なの?」

 お?タマがしゃべった!

「この感じだと怪我ひとつ無くピンピンしてそうだな!つーか、危なくなったらドラちゃん呼ぶとか言ってやがるぞ!そうなったら旅行どころじゃなくなっちまう」
「ドラちゃんはちょっとやり過ぎじゃないかな?」
「危なくなったらって言ってるから大丈夫じゃない?召喚獣を大量に出したら、危なくなるのは向こうの方だと思う!」
「天使様を誘拐するとは馬鹿な連中ですね。この中で一番危険人物なのに」
「もう旅行とかどーでもいい。アイツらだけは潰す!」


 よし、いつものタマに戻った!

 あっぶねーーーーーーーーーーーーーーー!!
 タマの心が壊れでもしたら、クーヤを悲しませてしまうとこだったぜ・・・。


「確かにもうすでに旅行どころじゃなくなっちまったか。ふむ、クーヤは余裕とか言ってっけど、早めに救出した方がいいのは間違いないだろう」
「でもどこに誘拐されちゃったんだろ?」
「人質を取ったんだから、奴らがすぐにでも脅しに来るんじゃない?」
「クーヤの居場所なら簡単に調べられるぜ?」


 全員の視線がこっちに向いた。


「ハム助、クーヤはどこにいる?」


 ビシッ!


 考えるまでもなく、いつでも召喚士の居場所を把握しているのだろう。
 ハム助がクーヤのいる方角をビシッと指差した。





 ************************************************************



 ―――――隣の牢屋のおっさんが気になるクーヤちゃん視点―――――



 ウーム・・・。

 薄暗い牢屋の中だからハッキリとは見えないけど、隣のおっさんは血まみれのボロクソ状態なんじゃなかろうか。

 おそらく拷問をされた後なんだと思うけど、あのデカい悪者看守が『明日こそは口を割らせてやる』とか言ってたよな?

 このおっさんが何者かは知らないけど、この国で一番デカい悪の組織よりも悪党だとは思えないし、ここはクーヤちゃんが助けてあげるとするか!


「白ハムちゃん召喚!」


 シュッ


 隣の牢屋の中に白ハムちゃんを召喚した。


「そこに倒れているボロクソのおっさんを癒してあげて!」


『チュウ!』


 ホワ~ン


 白ハムちゃんがボロクソのおっさんの治療を開始した。

 でもゆっくりしてる時間が無いかもしれないから、1時間くらい治療したらボロクソのおっさんを叩き起こして話を聞こう。


 ん~、1時間もどうすっかな~。


 ハム助に伝言のことを聞くと『さっき地面に書いた』って返事が来たので、隣の牢屋にいるボロクソのおっさんの治療をしている最中だってのと、こっちは余裕だからちゃんと宿を取っておくようにと、追加で伝えてもらった。

 お姉ちゃん達の方からもハム助を中継して、怪我してないかとか色々聞かれたけど、本当に怪我一つしていないので、これでもかってくらい余裕をアピールする。


 ―――――そうこうしている間に1時間が経過。


「そろそろボロクソのおっさんを起こさなきゃな」


 白ハムちゃんを、ボロクソのおっさんの上に乗せてみた。


「うぅ・・・」


 少しうなされただけか。


 ハムちゃんを3体追加し、ボロクソのおっさんを全員でペシペシ叩いてもらう。


 ペシペシ ペシペシ ペシペシ ペシペシ
 ペシペシ ペシペシ ペシペシ ペシペシ


「いてッ!イテテテテテテテ!・・・はあ?」

 ペシッ

「いてッ!!な、何なんだ一体!?」


 やっと起きたか!


「ボロクソのおっさん静かにして!騒いでたらあの看守が来るよ!」


 キョロキョロした後、ボロクソのおっさんが黄色いショタに気付いた。


「オ、オイ!この動物は何なんだよ!?」

「ボロクソのおっさんを治療してくれた恩人、いや、恩ハムちゃんだよ!」

「オンハムちゃん??何を言っているのかはよく分からんが、確かに拷問された割にはあまり体が痛くないな」

「わかったらもっと近くまで来て。小さな声で話さないと看守に気付かれるよ」

「おっと!それもそうだな」


 ボロクソのおっさんが、すぐ近くまで寄って来た。


「本当に意味が分からん状況だが、とにかくボウズが助けてくれたんだな?」
「うん。ボロクソのおっさんが死にかけてたから放っとけなくて」
「そうか、ありがとうな!しかしその『ボロクソのおっさん』って呼び方はヤメてくれないか?俺の名は『マグナロック』だ!」
「長いです!『マグロのおっちゃん』でいい?」
「何でマグロって略すんだよ!?そこは普通マグナだろ!!」
「シーーーーッ!もっと小さな声で!マグロのおっちゃんは声が大き過ぎです!」
「ああ、すまん!もうマグロのおっちゃんでも何でも好きに呼んでくれ・・・」
「ちなみにボクはクーヤだよ!」
「クーヤか、良い名前だな。俺はマグロだ。よろしくな!」


 鉄格子越しに『マグロのおっちゃん』と握手を交わした。
 呼び名のことはもう諦めてくれたようだ。

 さてさて、彼に色々と話を聞いてみるとしますか!
 
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