上 下
206 / 420

第206話 黄衣の天使

しおりを挟む
 おっとイカンイカン!

 面白そうな会話が聞こえてきたから、ついそっちに気を取られてしまったけど、せめて生き残った冒険者だけでも助けるんだ!


 ―――――時は20分前に戻る。


 倒れていた冒険者の、盗賊に剣で斬られたと思われる数ヶ所にも及ぶ深い傷を、ナナお姉ちゃんの水魔法で綺麗に洗い流してもらってから、ハムちゃんの治癒魔法とハム水の両方を使って塞いでいった。

 商人と思われるおっさんも血を流していたんだけど、そっちはハム水なしでも大丈夫そうだったので、ナナお姉ちゃんに傷口を洗い流してもらってから、ハムちゃんの治癒魔法でポワポワされながらジッとしている所だ。

 おっさんにはご家族の方がついてくれているので大丈夫だろう。

 一番大きな傷が塞がり、ようやく流血が止まったので、濡れた身体を召喚獣タオルで拭いてから、女冒険者を『ふわふわカーペット』の上に寝かせた。


 ・・・とまあ、ここまでやって少し落ち着き、後は冒険者自身の生命力にかけるしかないって状態にはなった。

 絶対に助けてあげたいんだけど、この銀髪の綺麗なお姉さんがどれほど血を失ったのかが問題なんだよね。

 ハム水を飲ませれば助かる可能性も上がるんだけど、寝ている人に飲ませるなんてちょっと無理だしな~。あとは容態の変化にすぐ気付くように、こうして付き添うくらいしか出来ないのです。


「助けて頂き、本当に有難う御座いました!」


 声のした方を見ると、治療していた男がみんなに向かって頭を下げていた。そしてその後ろから、馬車の中にいた奥さんと娘さんと思われる二人も歩いて来ていた。

 良かった~!ハムちゃんの治療ですっかり傷が癒えたんだ。


「傷はもう治ったのか?」
「はい、この通りです!治癒魔法を使える動物がいるなんてビックリですよ!」
「「本当にありがとうございました!」」

 男が斬られた右腕をみんなに見せたんだけど、それなりに大きな傷だったのに、もう傷跡すら残ってないような気がする。白ハムちゃんスゲー!!

「へ~~~!こんな短時間の治療で、もう傷跡すら残っていないのか」
「本当に凄いね!これなら向こうの女性も助かるかも!」
「クーヤちゃんに任せておけば、絶対助かるよ!」

 そうだといいなあ・・・。
 こんな綺麗なお姉さんが盗賊ごときに命を奪われるなんて、絶対許されないよ!

「戦闘で命を落とした冒険者を馬車に乗せることは可能か?」
「大丈夫です。しかし冒険者達には本当に可哀相なことをしました。まさか20人を超える規模の盗賊に襲われるなんて・・・」
「それはあンたのせいじゃないさ。盗賊の襲撃から雇い主を守るのが彼らの仕事なんだから、こうなるのも覚悟の上だ」
「うはっ!20人超えてたの?」
「俺らが倒したのは全部で14人だったか?冒険者らも健闘したんだな」
「来た時12人倒れてた。それと治療中の女の人」
「死んだ冒険者は4人だから、盗賊を8人倒していたんだね」
「悔しかったろうね・・・」


 冒険者の仕事でも、護衛ってやっぱ大変だなあ。

 何事もなく終わるケースがほとんどだとは思うけど、護衛がいるのに襲って来たということは、それって勝てる自信があるからなんだよね。

 そういう危険な集団が現れた途端、今日のような惨事が起きてしまうんだ。
 何人かでも助けることが出来て本当に良かったよ。


「うぅ・・・」


 ん?


「あ、お姉ちゃんの意識が戻った!」

 銀髪のお姉ちゃんと目が合った。

「黄色い天使がいる・・・」
「天使?それより痛い所はない?」
「痛い所?」

 黄色い天使って何だよ!?
 それって『白衣の天使』みたいな?いや、黄色いから『黄衣の天使』だな!

「痛ッ!くッ、そうか、盗賊にやられて・・・」
「あまり動かない方がいいよ!治療が終わるまでジッとしててね」
「・・・治療?」

 銀髪のお姉ちゃんが、治療中のハムちゃんを見つめた。

「こっちにも白い天使がいる・・・」
「ハムちゃんだよ。今、お姉ちゃんの治療をしてくれてるの」
「ホワホワして気持ちいい」

 ボクも前にやってもらったことあるけど、確かにアレは気持ち良かった!

「意識が戻ったのか!」

 ショタの声を聞いて、レオナねえ達が駆けつけて来た。

「・・・冒険者?もしかして、貴女方が盗賊を倒して、うぐッ!」
「ああ、無理してしゃべらなくていい!馬車を襲っていた盗賊は全て討伐したから安心しろ。馬車の中にいた親子3人は無事だ」
「良かった・・・、ありがとう」


 変に声を掛けると律儀な銀髪お姉ちゃんが返答してしまうので、それからしばらく全員が無言のまま30分ほど経過した。


「ふ~~~、かなり良くなりました」

 そう言った銀髪のお姉さんが立ち上がろうとしたが、地面についた右手に激痛が走ったようで顔をしかめた。

「くッ!これでは剣も握れない・・・」

 それでも右手以外はかなり良くなったみたいで、何とか立ち上がった。

「剣はアタシが持ってやる。道中の護衛も引き継ぐから休んでいろ」
「感謝します。冒険者5名で馬車を護衛していたのですが、他の4名がいきなり不意打ちで倒されてしまいまして。盗賊を8人まで倒したのは覚えているのですが、多勢に無勢、あの人数はさすがに無理でした・・・」
「アタシらが駆けつけた時には、お仲間はもうすでに息絶えていた。遺体は馬車で街まで運んでもらうから安心してくれ」
「いえ、あの4名は仲間ではないですね。私はソロで依頼を受けました」
「あ、そうだったのか。しかし20を超える盗賊相手に8人まで倒すとは、見事な腕じゃないか!Aランクか?」
「結局やられてしまいましたが。Aランク冒険者の『プリンアラート』です」

 おおおおーーーーー!『プリン・ア・ラ・モード』みたいで可愛い名前ですね!

「アタシはレオナ!同じくAランク冒険者だ。よろしくな!」
「宜しくお願いします。しかしこの怪我では、もう冒険者を続けるのは無理かもしれませんね。痛いだけでなく右腕に力が入らないので、完治するかどうか・・・」
「ムムム、力が入らないってのは少しマズイか・・・」

 なにィ!?せっかくAランクまで昇進したのに冒険者廃業は可哀相すぎるよ!
 何とかならないもんかなあ・・・。

 こうなったらWハムちゃんで治療してみる?
 増やせばいいってもんじゃないのかもしれないけど。

 いや、待てよ・・・?


「プリンお姉ちゃん!その右腕、もしかしたら治るかも?」


 ショタの発言にお姉ちゃん二人が振り向いた。


「ミミリア王国に来て、『女神の湯』で湯治するのです!」
「おおーーー!クーヤ、それだ!!」
「ミミリア王国?」
「っていうか、ウチのお風呂なんですけどね!」
「天使様の家のお風呂ですか!行きます!!」
「即決かよ!!」


 話の流れで、銀髪のお姉さんがウチに来ることになりました!
 あっ、ドラちゃんを見せることになるから口止めしなきゃですね。

 しかし天使様って・・・。
 
しおりを挟む
感想 165

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

赤い流星 ―――ガチャを回したら最強の服が出た。でも永久にコスプレ生活って、地獄か!!

ほむらさん
ファンタジー
ヘルメット、マスク、そして赤い軍服。 幸か不幸か、偶然この服を手に入れたことにより、波乱な人生が幕を開けた。 これは、異世界で赤い流星の衣装を一生涯着続けることになった男の物語。 ※服は話の流れで比較的序盤に手に入れますが、しばらくは作業着生活です。 ※主人公は凄腕付与魔法使いです。 ※多種多様なヒロインが数多く登場します。 ※戦って内政してガチャしてラッキースケベしてと、バラエティー豊かな作品です。 ☆祝・100万文字達成!皆様に心よりの感謝を! 小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。  

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...