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学生A
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「クリスマス楽しみ」
ここ数週間口癖になっている言葉を漏らす。残り1ヶ月ほどとなったカレンダーに書き込まれたカウントダウンは、新年が始まったばかりの頃にセコセコ書き込んだものだ。我ながら気が早いとは思うが、その書き込みは確かに日々に下らない喜びを運び込んでくれていた。そうして遂に迎えた約1ヶ月前。ハロウィンを終えた辺りから国中は緑や赤に色づいていたが、日付が二十に乗ったからこその実感もある。
「クリスマス~♪ふーんふふ~」
うろ覚えの陽気な鼻歌を交えながらベッド下の段ボールを引きずり出す。タトウ式の蓋を開けば、飛び出んばかりの勢いで緑の針葉が顔を出した。流石に偽物ではあるが、三つに分けられているそれは、組み立てればニメートルほどの高さを持つクリスマスツリーだ。
手に針葉がチクチク刺さるが、気にとめる程でもなくそのままむんずと掴み上げる。カサカサ、ジャカシャカと音を鳴らしながら狭い段ボールから葉が羽を伸ばした。
「うぉっは!!!」
無意識にも口角が上がり、漏れ出た声は分かりやすく喜色を浮かべている。大きなその一部はツリーの下部で、一際広い葉幅は容赦なく腕や腹に突き刺さる。痛いような痒いような気もするが、なんだかもう全てが面白く楽しく嬉しかった。なるほど、これがクリスマスハイか
「ここが世界の中心だ!!」
ドン、と下部を部屋の真ん中に立てる。ただの棒である最下部に同じく段ボール内の支え棒を噛み合わせる。まだ下半身にも満たない小ささだが、段ボールの中にはこれがあと二つある。ここからはひたすら積むだけだ。カサカサバサバサ、音を立てながら積み上げたそれはついに自分の身長を越えた。今の所、突如室内に現れたただの木ではあるが、馬鹿みたいに存在を主張するそれが面白くて仕方なかった。あぁ、最高だ。最高。
「メリークリスマス1ヶ月前記念」
気が早すぎるし、まだ正確な1ヶ月前にも満たないが、楽しいからいいのだ。
お察しの通り熱狂信者ではないし、所謂世間に乗っかって楽しむだけのにわかである。まぁ、楽しいことは楽しんでなんぼだろう、と過去の自分も言っていることだしそれでいいのだ。だってほら、こんなにも楽しい。
「ツリーの飾り付けくらいは、正確な1ヶ月前記念日のためにとっておいてやるか」
世間に踊らされる一人の明るく陽気な冬の夜
ここ数週間口癖になっている言葉を漏らす。残り1ヶ月ほどとなったカレンダーに書き込まれたカウントダウンは、新年が始まったばかりの頃にセコセコ書き込んだものだ。我ながら気が早いとは思うが、その書き込みは確かに日々に下らない喜びを運び込んでくれていた。そうして遂に迎えた約1ヶ月前。ハロウィンを終えた辺りから国中は緑や赤に色づいていたが、日付が二十に乗ったからこその実感もある。
「クリスマス~♪ふーんふふ~」
うろ覚えの陽気な鼻歌を交えながらベッド下の段ボールを引きずり出す。タトウ式の蓋を開けば、飛び出んばかりの勢いで緑の針葉が顔を出した。流石に偽物ではあるが、三つに分けられているそれは、組み立てればニメートルほどの高さを持つクリスマスツリーだ。
手に針葉がチクチク刺さるが、気にとめる程でもなくそのままむんずと掴み上げる。カサカサ、ジャカシャカと音を鳴らしながら狭い段ボールから葉が羽を伸ばした。
「うぉっは!!!」
無意識にも口角が上がり、漏れ出た声は分かりやすく喜色を浮かべている。大きなその一部はツリーの下部で、一際広い葉幅は容赦なく腕や腹に突き刺さる。痛いような痒いような気もするが、なんだかもう全てが面白く楽しく嬉しかった。なるほど、これがクリスマスハイか
「ここが世界の中心だ!!」
ドン、と下部を部屋の真ん中に立てる。ただの棒である最下部に同じく段ボール内の支え棒を噛み合わせる。まだ下半身にも満たない小ささだが、段ボールの中にはこれがあと二つある。ここからはひたすら積むだけだ。カサカサバサバサ、音を立てながら積み上げたそれはついに自分の身長を越えた。今の所、突如室内に現れたただの木ではあるが、馬鹿みたいに存在を主張するそれが面白くて仕方なかった。あぁ、最高だ。最高。
「メリークリスマス1ヶ月前記念」
気が早すぎるし、まだ正確な1ヶ月前にも満たないが、楽しいからいいのだ。
お察しの通り熱狂信者ではないし、所謂世間に乗っかって楽しむだけのにわかである。まぁ、楽しいことは楽しんでなんぼだろう、と過去の自分も言っていることだしそれでいいのだ。だってほら、こんなにも楽しい。
「ツリーの飾り付けくらいは、正確な1ヶ月前記念日のためにとっておいてやるか」
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