午後のはなし

てふ102

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エキストラA

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シンシンと降り注ぐ雪を払うように頭を振る。もうすっかり日の沈んだ現在時刻、まともに人影は見られなかった。マフラーに顔をうずめ、白くなった地面へ視線を落とした。
数日前は初雪だなんだと騒ぎ立てていた近隣住民も、今はすっかり無関心を通している。いや、寧ろ雪掻きに愚痴を零していたか。
「都合の良い女じゃないのよ!」
なんて、ふと正月休みドラマ一挙放送で目にしたワンシーンを思い出した。いや、あれはなかなかにドロドロとした恋愛ものだったなんて感想を今更抱きながらも歩を進める。
しかしまぁ、雪さんも騒ぎ立てられうっとおしがられ大変なものだ。幼い頃の石蹴りのように軽く積もった雪を蹴り上げる。大して飛ばずに落ちた雪はドラマやアニメのように綺麗な白は持たず、砂利や土を巻き込みくすんでいた。

自分だって雪掻きは嫌いだし、若いからなんて理由が通用するような歳でもなくなってきた。休日や出勤が少し遅いとき、目ざとく頼んでくる近隣住民は苦手だった。序でにいうとドロドロとした恋愛ものも好きじゃない。
それでも、雪や冬は嫌いじゃなかった。
仕事の都合、転勤、なんてドラマで有りがちな設定は案外身近にあり、自分も経験者の一人となる。一、二年前越してきた此処は故郷の数倍ほど積雪が多かった。随分と新鮮で、新生活に胸を馳せたのが懐かしい。雪の多いことに、以外にも自分は慣れてからも喜びを感じていた。そういう意味ではこの環境はひどく自分に合っていたのだろう。多少汚くても積もった雪を踏みしめる感触は嫌いじゃないし、息が白くなるのを見てチンパンジーのように喜ぶ自分をどこかに感じていた。
まぁ、だからって雪掻きを楽しめるかと言われれば「そうではない」のだが。

ドラマのような転勤をしても、着いた先に事件があるわけでも運命的な出会いがあるわけでもなかった。所詮はエキストラとでも言おうか、酷く現実的な世界で誰かのために経済を回し、誰かのために道の雪屋根の雪を掻いている。
ザク、ザクと一定のリズムを刻む足音は屋根の下錆びた階段へ差し掛かり音を変える。



雪は好き。
暑いより寒い方が好き。
大家さん基近隣住民との関わりは嫌い。
雪掻きも嫌い。

長々御託紛いのものを垂れてきたが、極論こうなのだ。








つまり、アパート暮らしを止めたい。一軒家に引っ越したい。これQ.E.D。
早く安定して高額で一カ所に留まれるような職になりたーい。

ふう、と白い息を出してから冷たい鍵を鍵穴へと差し込んだ。















積雪を踏みしめ将来の夢を語る。ネガティブでもない、弁えとも言えない主役であることの否定を白い息へ溶かす。
そんな、年始から日常へと戻っていく冬の夜。
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