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2章 サンタクロースの春
17話 帳尻合わせ
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これからまた仕事があるということで、歓迎会は午前9時頃にお開きとなった。
クリスマスが12月25日のみというのは世界でも日本くらいらしく 、他の国のクリスマスは1月6日まで続く。
プレゼントを配るという仕事こそ無くても、期間中は結構忙しく人手が欲しいという事で、他国に出向するのだと言う。
「まあ雇ってすぐ休暇ってのもなんだけど、行きなり海外って訳にもいかねぇからな。ゆっくり休んでくれや。」
という三田の言葉に従い家へと帰り、余りの疲労に爆睡して、起きたのは翌日の午前7時だった。
それからの日々は、平凡だった。
クリスマスイブの出来事が夢だったのではないかと思えるほどに何もなく、代わり映えのないつまらない毎日だった。
次に彼らと会うことになったのは1月9日のことだった。
僕は三田の指示通りに、朝から千葉支部へと出向いた。
「お、久しぶりだな。元気にしてたか?」
数日ぶりに見る三田は少し疲労感のあるやつれた顔をしていた。
「三田さん大丈夫ですか?やっぱり働きづめで疲れてるんじゃ…。」
心配になって近くの部屋の椅子まで彼を誘導する。
「すまない。流石に1日じゃ疲れが抜けきらなかった。」
苦しそうに机に突っ伏す三田、あのような忙しさで14連勤というのは、流石にサンタクロースといえど堪えるのだろう。
そんな事を考えていると、不意に扉が開く。
「味噌汁持ってきたよ、ってあ!聖人いらっしゃい。」
振り向くと、開いた扉から、味噌汁椀と箸を手に持ったルドルフが入ってくるのが見えた。
「おはようルドルフ。……。えっと…。」
彼女がご飯も何も持たずに、味噌汁だけを持っていたことを不思議に思っていると、察したのかルドルフが苦笑する。
「ああ、これでしょ、気になってるの。しじみ汁だよ。そこの"おじさん"が二日酔いになんかなるから、ね。」
全て暴露したルドルフに、三田は「カッコ悪いから言うなって言っただろ。それにおじさんって言うな、事実だけども。」と抗議するが、それをルドルフはスルーして、持っていた味噌汁を三田の前へ置いた。
「まあ、そういうわけだから、お仕事の方はボクから説明するね。ほら、座って。」
ルドルフに促されるまま、彼女の対面に腰掛ける。
「こほん。まずは、サンタクロースがオフシーズンに何をしているか、何をしなきゃいけないのかから説明していくね。」
咳払いまでして、真面目モードに入ったのだろうなといった雰囲気だったので、本当はその僕も合わせて真面目に話を聞く。
「よろしくお願いします。」
「さて、やらなきゃいけないことは、いくつかあるんだけど、最初は今日からやる"プレゼントの帳尻合わせ"について説明するね。」
「帳尻合わせ?」
「そう。僕たちは例の袋からたくさんプレゼントを出したよね?でも、あの袋はプレゼントを生成してくれる訳でも倉庫みたいなところから取れるようにしているわけでもないんだ。
どうやってるのかって言うと、未来に自分の手元に来るものを前借りするっていう魔術を使ってる訳なんだ。」
「あ、成る程。前借りしているということは、それをこれから入手しないといけないのか。」
僕は、そう言った後に、もしかしたら説明したかったかもと思い、触れ腐れてないかなと彼女の顔色を窺う。
しかし、予想に反して彼女は心底嬉しそうな、それでいて羨望の混じっているような顔でこちらを見ていた。
「うん。そうして魔術の条件を整えなきゃいけないって訳。あれだけで分かっちゃうなんて流石聖人だね。」
ストレートに褒められ、少し気恥ずかしくなる。
「さて、じゃあ二日酔いでダウンするような"おじいさん"は置いておいて仕事に取りかかろうか。」
ルドルフはそういうが早いか、席をたち、外へと飛び出したので、慌てて僕も後を追う。
玄関を出たところで、三田の「誰がおじいさんだ!あと気を付けていけよ!」という声が僕の耳には辛うじて聞こえるのだった。
クリスマスが12月25日のみというのは世界でも日本くらいらしく 、他の国のクリスマスは1月6日まで続く。
プレゼントを配るという仕事こそ無くても、期間中は結構忙しく人手が欲しいという事で、他国に出向するのだと言う。
「まあ雇ってすぐ休暇ってのもなんだけど、行きなり海外って訳にもいかねぇからな。ゆっくり休んでくれや。」
という三田の言葉に従い家へと帰り、余りの疲労に爆睡して、起きたのは翌日の午前7時だった。
それからの日々は、平凡だった。
クリスマスイブの出来事が夢だったのではないかと思えるほどに何もなく、代わり映えのないつまらない毎日だった。
次に彼らと会うことになったのは1月9日のことだった。
僕は三田の指示通りに、朝から千葉支部へと出向いた。
「お、久しぶりだな。元気にしてたか?」
数日ぶりに見る三田は少し疲労感のあるやつれた顔をしていた。
「三田さん大丈夫ですか?やっぱり働きづめで疲れてるんじゃ…。」
心配になって近くの部屋の椅子まで彼を誘導する。
「すまない。流石に1日じゃ疲れが抜けきらなかった。」
苦しそうに机に突っ伏す三田、あのような忙しさで14連勤というのは、流石にサンタクロースといえど堪えるのだろう。
そんな事を考えていると、不意に扉が開く。
「味噌汁持ってきたよ、ってあ!聖人いらっしゃい。」
振り向くと、開いた扉から、味噌汁椀と箸を手に持ったルドルフが入ってくるのが見えた。
「おはようルドルフ。……。えっと…。」
彼女がご飯も何も持たずに、味噌汁だけを持っていたことを不思議に思っていると、察したのかルドルフが苦笑する。
「ああ、これでしょ、気になってるの。しじみ汁だよ。そこの"おじさん"が二日酔いになんかなるから、ね。」
全て暴露したルドルフに、三田は「カッコ悪いから言うなって言っただろ。それにおじさんって言うな、事実だけども。」と抗議するが、それをルドルフはスルーして、持っていた味噌汁を三田の前へ置いた。
「まあ、そういうわけだから、お仕事の方はボクから説明するね。ほら、座って。」
ルドルフに促されるまま、彼女の対面に腰掛ける。
「こほん。まずは、サンタクロースがオフシーズンに何をしているか、何をしなきゃいけないのかから説明していくね。」
咳払いまでして、真面目モードに入ったのだろうなといった雰囲気だったので、本当はその僕も合わせて真面目に話を聞く。
「よろしくお願いします。」
「さて、やらなきゃいけないことは、いくつかあるんだけど、最初は今日からやる"プレゼントの帳尻合わせ"について説明するね。」
「帳尻合わせ?」
「そう。僕たちは例の袋からたくさんプレゼントを出したよね?でも、あの袋はプレゼントを生成してくれる訳でも倉庫みたいなところから取れるようにしているわけでもないんだ。
どうやってるのかって言うと、未来に自分の手元に来るものを前借りするっていう魔術を使ってる訳なんだ。」
「あ、成る程。前借りしているということは、それをこれから入手しないといけないのか。」
僕は、そう言った後に、もしかしたら説明したかったかもと思い、触れ腐れてないかなと彼女の顔色を窺う。
しかし、予想に反して彼女は心底嬉しそうな、それでいて羨望の混じっているような顔でこちらを見ていた。
「うん。そうして魔術の条件を整えなきゃいけないって訳。あれだけで分かっちゃうなんて流石聖人だね。」
ストレートに褒められ、少し気恥ずかしくなる。
「さて、じゃあ二日酔いでダウンするような"おじいさん"は置いておいて仕事に取りかかろうか。」
ルドルフはそういうが早いか、席をたち、外へと飛び出したので、慌てて僕も後を追う。
玄関を出たところで、三田の「誰がおじいさんだ!あと気を付けていけよ!」という声が僕の耳には辛うじて聞こえるのだった。
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