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第16話 ”受肉”とは
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そうこうしているとガウラが戻ってきた。
「お、アーゲラ君もいるね。丁度いい。さっきはすまなかった。感情的になってしまったよ。」
頭を下げたガウラにアーゲラが続く。
「私からも謝りたいことがあるんです。」
アーゲラは椅子から立ち上がり、戻ってきたらガウラに向かってそう言った。
「ん?僕にかい?」
「はい。とはいえ、エノコとカルノーサにもなんですけれど。」
「ん?なんすか?」「え、なに?」
3人とも思い当たる節がないそうだ。
そんな3人とは対照的に神妙な面持ちのアーゲラが口を開いた。
「私は、ガウラさんを信じることができませんでした。エノコさんに諭されて尚、信じたくないと願ってしまいました。それが人を傷つける原因となりました。本当にすみませんでした。」
深く頭を下げるアーゲラ。
ガウラは、アーゲラの言葉の意味を理解するとともに、アーゲラの人となりを少しだけ理解した。
「なるほど、そう言うことか。司祭に憑いた怪異が自傷していた時のことだね?」
「はい。」
「あれは仕方のないないことだったと思うぞ。外から来て今日会ったばかりの男と親同然の人間。どちらの言葉を信じたいかは明らかだ。私だってそうしたかもしれない。むしろ僕の言葉に耳を傾けてくれたエノコちゃんがすごかったんだよ。だから、するべきは謝罪ではなく感謝だよ。」
アーゲラはガウラの言葉に頷き、エノコに感謝する。
「エノコ、ありがとう。」
「どういたしまして。」
エノコはにっこりと笑顔で返す。
「それを言うんなら自分方こそ不甲斐なかったっす。先生の思惑はわかってたっすから。でも何にもできなかったす。」
それを言うならと話し始めたカルノーサは、申し訳なさそうにそう告げる。アーゲラ同様にもっとやれたのではないかという想いが胸につっかえていたようだ。
申し訳なさそうに言ったカルノーサをガウラは、明るく慰める。
「そんなことはないさ、あの場は静観でいいと思うぞ。俺を助けたら部外者二人で余計怪しくなる。それより呼びかけに反応してよくエノコちゃんを助けた。」カルノーサの顔がパアっと明るくなった。
「それよりも、エノコちゃんに振りほどかれたのはいただけないなかったな。」
ガウラは、カルノーサが笑顔になったのを見計らって冗談半分で毒づく。
「そ、それはそうっすね。エノコちゃんめっちゃ力強かったっす…」
「あれは、死んじゃうと思って。。。ご迷惑をおかけしました。」
"じぶんだけじゃないっすよね!"とエノコに対して言い、エノコも申し訳なかったと伝える。二人はすでに冗談を言い合えるほどに仲良くなっていたようだ。
冗談はさておきと、誰にだって間違いはあったのだからそこまで落ち込む必要はないとガウラは、アーゲラに伝える。
「まあ何はともあれ君だけのせいではない。私にも落ち度はあったさ。司祭に憑いた怪異を刺激してしまったしな。何度繰り返しても同じ決断をすると思えるなら、信念に合った決断だったと思えばいい。あまり気に病むことはない。アーゲラ、君は間違っていなかったぞ。」
「はい。ありがとうございます。」
慰めはしたもののアーゲラの表情が晴れたというわけではなかった。ガウラは、大変そうだなと思いつつ、そっとしておくことにした。
「ほかに何か聞きたいことがある人はいる?」
「あのそういえば、受肉ってよくあることなんですか?」
エノコからの質問にガウラが答える。
「受肉自体はそこまで珍しいものではない。ところで司祭、いつごろからなどは覚えていらっしゃいますか?」
「そうですねえ、おそらくですが、彼が7歳か8歳の時からだと思います。」
「え!、てことは8年以上も前のことなんですか?!」
目を丸くして驚くガウラとカルノーサ。その反応に司祭は、自分の記憶を疑いながら話を続ける。
「ええ、おそらくは。彼が7歳か8歳の時に一度、怪異に襲われたのに傷一つ負わなかったことがあったんです。それから少しずつ体調を崩していたなと今になって思うので。おそらくはその辺りかと。」
「長いんですか?」ガウラの驚きようにエノコは恐る恐る尋ねる。
「長いっすね。」「ああ。あまり例をみない。正直初めて聞いた。2-3年ほどの長期間なのかとは考えていたがそこまで長いとはな。」
「そもそも怪異が人に憑く理由とは、親しい人間に成り代わることで無警戒な人間を襲いやすいというのがが主な理由になる。ほかにも人間であれば同じ人間からの警戒心が弱くなり、効率よく襲いやすくなるとか。まあ結果として不自然な行方不明は増えるから、通常1-2か月もあれば、情報は入ってくる。長くても2-3年とかなんだ。」
「ほかに類を見ない例なので司祭にもいろいろ聞かなければならないと思われます。ご同行を願うことになるので、その際はよろしくお願いします。」
自分の知見が浅いせいかは分からないが指示を仰ぐ必要はありそうだと考え、ガウラは司祭に同行の旨を伝え、司祭はそれを快諾した。
「ええ。わかりました。」
「ほかになにかある?司祭も何かありますか?子供たちも聞いてくれていいぞ?」
皆の顔の見まわし、質問が無いことを確認したガウラは今後について話を始めた。
「それじゃ、これからやってもらうことを話す。」
「お、アーゲラ君もいるね。丁度いい。さっきはすまなかった。感情的になってしまったよ。」
頭を下げたガウラにアーゲラが続く。
「私からも謝りたいことがあるんです。」
アーゲラは椅子から立ち上がり、戻ってきたらガウラに向かってそう言った。
「ん?僕にかい?」
「はい。とはいえ、エノコとカルノーサにもなんですけれど。」
「ん?なんすか?」「え、なに?」
3人とも思い当たる節がないそうだ。
そんな3人とは対照的に神妙な面持ちのアーゲラが口を開いた。
「私は、ガウラさんを信じることができませんでした。エノコさんに諭されて尚、信じたくないと願ってしまいました。それが人を傷つける原因となりました。本当にすみませんでした。」
深く頭を下げるアーゲラ。
ガウラは、アーゲラの言葉の意味を理解するとともに、アーゲラの人となりを少しだけ理解した。
「なるほど、そう言うことか。司祭に憑いた怪異が自傷していた時のことだね?」
「はい。」
「あれは仕方のないないことだったと思うぞ。外から来て今日会ったばかりの男と親同然の人間。どちらの言葉を信じたいかは明らかだ。私だってそうしたかもしれない。むしろ僕の言葉に耳を傾けてくれたエノコちゃんがすごかったんだよ。だから、するべきは謝罪ではなく感謝だよ。」
アーゲラはガウラの言葉に頷き、エノコに感謝する。
「エノコ、ありがとう。」
「どういたしまして。」
エノコはにっこりと笑顔で返す。
「それを言うんなら自分方こそ不甲斐なかったっす。先生の思惑はわかってたっすから。でも何にもできなかったす。」
それを言うならと話し始めたカルノーサは、申し訳なさそうにそう告げる。アーゲラ同様にもっとやれたのではないかという想いが胸につっかえていたようだ。
申し訳なさそうに言ったカルノーサをガウラは、明るく慰める。
「そんなことはないさ、あの場は静観でいいと思うぞ。俺を助けたら部外者二人で余計怪しくなる。それより呼びかけに反応してよくエノコちゃんを助けた。」カルノーサの顔がパアっと明るくなった。
「それよりも、エノコちゃんに振りほどかれたのはいただけないなかったな。」
ガウラは、カルノーサが笑顔になったのを見計らって冗談半分で毒づく。
「そ、それはそうっすね。エノコちゃんめっちゃ力強かったっす…」
「あれは、死んじゃうと思って。。。ご迷惑をおかけしました。」
"じぶんだけじゃないっすよね!"とエノコに対して言い、エノコも申し訳なかったと伝える。二人はすでに冗談を言い合えるほどに仲良くなっていたようだ。
冗談はさておきと、誰にだって間違いはあったのだからそこまで落ち込む必要はないとガウラは、アーゲラに伝える。
「まあ何はともあれ君だけのせいではない。私にも落ち度はあったさ。司祭に憑いた怪異を刺激してしまったしな。何度繰り返しても同じ決断をすると思えるなら、信念に合った決断だったと思えばいい。あまり気に病むことはない。アーゲラ、君は間違っていなかったぞ。」
「はい。ありがとうございます。」
慰めはしたもののアーゲラの表情が晴れたというわけではなかった。ガウラは、大変そうだなと思いつつ、そっとしておくことにした。
「ほかに何か聞きたいことがある人はいる?」
「あのそういえば、受肉ってよくあることなんですか?」
エノコからの質問にガウラが答える。
「受肉自体はそこまで珍しいものではない。ところで司祭、いつごろからなどは覚えていらっしゃいますか?」
「そうですねえ、おそらくですが、彼が7歳か8歳の時からだと思います。」
「え!、てことは8年以上も前のことなんですか?!」
目を丸くして驚くガウラとカルノーサ。その反応に司祭は、自分の記憶を疑いながら話を続ける。
「ええ、おそらくは。彼が7歳か8歳の時に一度、怪異に襲われたのに傷一つ負わなかったことがあったんです。それから少しずつ体調を崩していたなと今になって思うので。おそらくはその辺りかと。」
「長いんですか?」ガウラの驚きようにエノコは恐る恐る尋ねる。
「長いっすね。」「ああ。あまり例をみない。正直初めて聞いた。2-3年ほどの長期間なのかとは考えていたがそこまで長いとはな。」
「そもそも怪異が人に憑く理由とは、親しい人間に成り代わることで無警戒な人間を襲いやすいというのがが主な理由になる。ほかにも人間であれば同じ人間からの警戒心が弱くなり、効率よく襲いやすくなるとか。まあ結果として不自然な行方不明は増えるから、通常1-2か月もあれば、情報は入ってくる。長くても2-3年とかなんだ。」
「ほかに類を見ない例なので司祭にもいろいろ聞かなければならないと思われます。ご同行を願うことになるので、その際はよろしくお願いします。」
自分の知見が浅いせいかは分からないが指示を仰ぐ必要はありそうだと考え、ガウラは司祭に同行の旨を伝え、司祭はそれを快諾した。
「ええ。わかりました。」
「ほかになにかある?司祭も何かありますか?子供たちも聞いてくれていいぞ?」
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