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第10話 ガウラVSアーゲラ
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怪異の消滅時に発生する紫色の煙。そしてアーゲラから溢れ出た新たな気配は、異常なモノだった。放出された気配はそのままアーゲラの周りを回りながら、アーゲラの中へときれいに消えていった。
「さて、と。どうしようか。」
ガウラは掴まれた拳をすぐさま振りほどき、距離を取る。その異常な気配は、ガウラとしても数える程度しか感じたことがなかった。もう捕縛などを視野に入れる余裕はなくなっていた。
ガウラは、己の最大限の力を発揮するため、エノコに対する謝罪を思いながら、詠唱を始める。
『我、修羅の門を叩く狂人なり。
命に焔を宿し願わくば、その命溶け切らんことを。"憑依"』
右の拳で左の胸を「ドンッ」と叩くと、「ズゴゴゴゴッ」と音を立て、氾濫した川の流れのごとき勢いで、橙色のオーラが全身を駆け巡った。
「あの馬鹿者!修羅の門を叩きおった!この子を殺す気ではないか!!話をする前に死んでしまう!急がねば!」
アーゲラの声の主は辺りを見渡し、「あそこか!」と吐き捨て空へと飛び、どこかへ向かった。
「時間稼ぎのつもりか」
ガウラはそう呟き、アーゲラを追う。現にガウラを覆う強大なオーラは、微かにではあるが徐々に皮膚を焼いており、瞳孔が開いた目つきは、精神を蝕むほどの荒業なのだと思われる。そんな状態になるほどの大技ですら勝率が自分に傾いているか怪しく思うガウラ。焦らざるを得ない状況に、捕縛などという考えは欠片も残っていない。
「おなご!助けてくれ!!」
エノコとカルノーサは声のする方に目を向けると、空にアーゲラの姿があった。
「アーゲラ?!よかった。無事だったのね。」「え、でもどうしてここに?」
「ガウラとかいう男に殺されそうになって逃げて来たんじゃ。」
「え!なんで!?」「なんで先生が?」
追ってきたガウラが言う。
「二人ともそいつから離れろ、そいつはもうアーゲラ君ではない。」
「え?どういうことですか?」
「目を見ればわかるさ、さあ、瞼を開いてみたらどうだ、怪異。」
「それはできん。目も見たら怖がられることなどもうわかっておる。」
「怖がる、だと?まるで自分は無害だとでも言うつもりか?反吐が出る。」
「怪異だからと一つに括るな!いい奴がおれば悪い奴もおる。人間だって同じじゃろ!いい奴だと言うつもりはないが、むやみやたらに殺しはせんわ!」
「ほざけ怪異が。お前らの言葉など信用できるか!」
ガウラはアーゲラに向かって走り出す。
「バカが!血迷いおって!」
アーゲラの声の主は、エノコとカルノーサから距離を取った。自分がここにいては、エノコとカルノーサに被害が出ると悟ったからだ。それを見たガウラはアーゲラを追従する。
「エノコ!ダメっす!!」
「待ってください!!」
エノコはカルノーサの静止を振り切り、走り出し、アーゲラを守るために身を呈してガウラに向かい両手を大きく広げた。
「エノ…!」「嘘じゃろ!!」
エノコとガウラの距離は、ガウラが勢いを殺すことができない位置まで迫っていた。
アーゲラの声の主は、出力を最大まで上げた。地面を蹴る足は「ブチブチッ」と悲鳴を上げ、地面を抉るほどの脚力でエノコの元へ進み、間一髪のところでエノコの服を掴み、そのまま上空に投げ飛ばして救出した。
「小僧!!」
「は、はいっす!」
声に反応したカルノーサが上に飛びエノコを無事につかみ取る。ガウラの拳を避けることができないアーゲラの声の主はその拳を受け止める。
「バーーーーーーン!!!!!!!」
その衝撃は落雷のような大きな轟音と辺りに立っているのがやっとな強風を吹き荒らした。
「一旦話をする時間が欲しいのじゃ。頼む、待ってくれ。身体が持たん」
「さて、と。どうしようか。」
ガウラは掴まれた拳をすぐさま振りほどき、距離を取る。その異常な気配は、ガウラとしても数える程度しか感じたことがなかった。もう捕縛などを視野に入れる余裕はなくなっていた。
ガウラは、己の最大限の力を発揮するため、エノコに対する謝罪を思いながら、詠唱を始める。
『我、修羅の門を叩く狂人なり。
命に焔を宿し願わくば、その命溶け切らんことを。"憑依"』
右の拳で左の胸を「ドンッ」と叩くと、「ズゴゴゴゴッ」と音を立て、氾濫した川の流れのごとき勢いで、橙色のオーラが全身を駆け巡った。
「あの馬鹿者!修羅の門を叩きおった!この子を殺す気ではないか!!話をする前に死んでしまう!急がねば!」
アーゲラの声の主は辺りを見渡し、「あそこか!」と吐き捨て空へと飛び、どこかへ向かった。
「時間稼ぎのつもりか」
ガウラはそう呟き、アーゲラを追う。現にガウラを覆う強大なオーラは、微かにではあるが徐々に皮膚を焼いており、瞳孔が開いた目つきは、精神を蝕むほどの荒業なのだと思われる。そんな状態になるほどの大技ですら勝率が自分に傾いているか怪しく思うガウラ。焦らざるを得ない状況に、捕縛などという考えは欠片も残っていない。
「おなご!助けてくれ!!」
エノコとカルノーサは声のする方に目を向けると、空にアーゲラの姿があった。
「アーゲラ?!よかった。無事だったのね。」「え、でもどうしてここに?」
「ガウラとかいう男に殺されそうになって逃げて来たんじゃ。」
「え!なんで!?」「なんで先生が?」
追ってきたガウラが言う。
「二人ともそいつから離れろ、そいつはもうアーゲラ君ではない。」
「え?どういうことですか?」
「目を見ればわかるさ、さあ、瞼を開いてみたらどうだ、怪異。」
「それはできん。目も見たら怖がられることなどもうわかっておる。」
「怖がる、だと?まるで自分は無害だとでも言うつもりか?反吐が出る。」
「怪異だからと一つに括るな!いい奴がおれば悪い奴もおる。人間だって同じじゃろ!いい奴だと言うつもりはないが、むやみやたらに殺しはせんわ!」
「ほざけ怪異が。お前らの言葉など信用できるか!」
ガウラはアーゲラに向かって走り出す。
「バカが!血迷いおって!」
アーゲラの声の主は、エノコとカルノーサから距離を取った。自分がここにいては、エノコとカルノーサに被害が出ると悟ったからだ。それを見たガウラはアーゲラを追従する。
「エノコ!ダメっす!!」
「待ってください!!」
エノコはカルノーサの静止を振り切り、走り出し、アーゲラを守るために身を呈してガウラに向かい両手を大きく広げた。
「エノ…!」「嘘じゃろ!!」
エノコとガウラの距離は、ガウラが勢いを殺すことができない位置まで迫っていた。
アーゲラの声の主は、出力を最大まで上げた。地面を蹴る足は「ブチブチッ」と悲鳴を上げ、地面を抉るほどの脚力でエノコの元へ進み、間一髪のところでエノコの服を掴み、そのまま上空に投げ飛ばして救出した。
「小僧!!」
「は、はいっす!」
声に反応したカルノーサが上に飛びエノコを無事につかみ取る。ガウラの拳を避けることができないアーゲラの声の主はその拳を受け止める。
「バーーーーーーン!!!!!!!」
その衝撃は落雷のような大きな轟音と辺りに立っているのがやっとな強風を吹き荒らした。
「一旦話をする時間が欲しいのじゃ。頼む、待ってくれ。身体が持たん」
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