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一悶着

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「おいお前!そこで止まれ!」

そう言われて俺は止まる。

「何者だ!」

「ただの旅人です」

「嘘をつけ!お前みたいな空を飛んくる旅人がいるか!」

さっきから俺に向かって吠えてくる男は犬の耳と尻尾が生えている犬の獣人だ。

鎧を身につけいるのでこの国の兵士だろう。

だけど正直困ったな。

これじゃあ王都に入れない。

「!、お前!その手を繋いでいる子供はなんだ!」

「娘です」

「お前は人族だろ!なのに獣人が娘だと!?嘘をつくにももっとマシな嘘をつけ!」

どうしよう。

早く王都に入りたい。

こいつを相手にしている時間がもったいない。

周りを見てみると他の獣人の兵士が遠巻きにこっちを見ている。

(ちょっと助けを求めてみるか)

「すみませ~~ん!この人のことどうすればいいですか~?」

俺がそう言うと兵士の1人である猫の獣人の男性が身振り手振りでジェスチャーをしてきた。

俺に向かって吠えているこいつには死角になっているのでこいつには見えていない。

(ん?あれは……ちょっと待ってかな?)

俺がジェスチャーからそう判断すると猫獣人の人は検問所の中へと急いで入っていった。

誰かを呼んでくるのか?

「おいお前!なに俺のことを無視している!」

あっちの方に気を取られていると怒ったような口ぶりで犬獣人の兵士が怒鳴ってきた。

「はぁ……。どうすれば信じてもらえるんですか?」

「お前のような怪しいやつ誰が信じるか!」

「……じゃあこの子は通れますか?」

「ふんっ、その子はいいだろう」

どうやらルミナはいいらしい。

「ルミナは通っていいらしいから先に検問所の中に入って待っててくれ。中の兵士の人に事情を話してどこかで待てせてもらうようにお願いすれば大丈夫だと思うから」

「おとーさんはどうするの?」

「俺はまだ通れないみたいだからここにいるよ」

「じゃあルミナもおとーさんと一緒にいるの」

「ルミナまで待つ必要はないよ?」

「ルミナはおとーさんと一緒がいいの」

「そっか、ありがとうな」

俺はそう言ってルミナの頭を撫でる。

「この子は俺と一緒に残るみたいなんで、この子のためにも早く通してください」

「子供を利用しようがお前みたいな怪しいやつは通さん!」

利用って。

俺はルミナが疲れてないか心配で言ってるだけなんだが。

ほら、子供だから体力が少ないし。

だけどこのままじゃ通れない。

そろそろこいつを無視して無理矢理通ろうと思った時、検問所の方から人が来た。

どうやらさっきの猫獣人の兵士が呼んできたようだ。

猫獣人の人が呼んだ人は今俺の前にいるのとは違う犬獣人の男性だった。

呼ばれた男性は犬獣人の兵士に近づいてくる。

「おいガリオ、なにをやってるんだ?」

「お、親父……」

「お前また問題を起こしているのか?」

「違う!ただ怪しい奴が来たから…」

「この人がか?」

「そうだ!」

「こんの…馬鹿もんがぁ!」

そういうと同時に親父と呼ばれた犬獣人は、ガリオと呼ばれた犬獣人の脳天に拳骨をおみまいする。

「な、なにすんだよ親父!」

「お前また人の話を聞かずに疑ったりしたんだろ!さっき部下から報告が来たぞ!」

「だ、だって……」

「だってじゃない!」

それからは赤の他人の親子の説教が始まった。

10分後。

やっと説教が終わったみたいだ。

長くなりそうだったので説教が終わるまで地面に胡座をかいて座り、俺の脚の上にルミナを座らせていた。

「終わりましたか?」

「ああ、すまんな。俺の名前はベリルだ、息子が迷惑をかけた」

「実害はなかったので大丈夫です。それで、入ってもいいですか?」

「ああ、だが先に検問を受けてもらうが構わないか?」

「大丈夫です」

「では来てくれ」

俺はルミナを先に立たせて後から立ち上がり、ルミナと手を繋いでベリルさんについていく。

ついていくと検問所の中の何かの台がある部屋へと通された。

俺はその台に見覚えがあった。

「この台ってステータスカードを作る台ですか?」

「おお、よく知ってるな。今からこの台でステータスを確認させてもらう。それで特に変なところがなければ検問所を通れる。どっちもステータスカードは持っているか?」 

「俺は持ってますけどこの子はないですね」

「それならここで作ってもらう」

「無料なんですか?」

「最初はな。二度目以降は料金を払ってもらう」

「そうですか。じゃあルミナ、先に行ってきな」

「わかったの」

ルミナは台のほうに行き、台の上に手を置こうとするが少し高いようで届いていない。

しょうがないので俺はルミナのところに行き、ルミナの脇の下に手を入れ持ち上げる。

「これで届くか?」

「おとーさん、ありがとうなの」

俺に感謝の言葉を述べた後ルミナは台の上に手を置く。

すると台は光りステータスカードが作成された。

それをルミナは台の上から取る。

「できたみたいだな。それじゃあ見せてもらっても構わないか?」

「先にこっちで確認してもいいですか?」

「ああ、いいぞ」

許可が出たので俺はルミナと一緒にステータスカードを見る。



ルミナ 6歳 獣人族 狐獣人
職業/なし/レベル--
ステータス値
HP      10/10
MP      4/4
STR    5
DEF    3
SPE    7
INT     4
DEX   6
スキル
気配察知1、方向感覚
魔法適性
火、無属性


マリーヌ王女が普通の兵士が20くらいと言っていたしこの年ではこれが平均的なステータスなのだろう。

「じゃあ、お願いします」

「わかった」

ベリルさんはルミナからステータスカードを受け取り確認する。

「よし、この嬢ちゃんは問題ないな」

ベリルさんはルミナにカードを返す。

「次は君だがステータスカードはあるんだな?」

「はい、今出します」

ポケットからステータスカードを取り出しベリルさんに渡す。

だけど不思議なことにベリルさんは俺のステータスカードを見ると固まってしまった。

「どうしたんですか?」

「え……、あっ…その……この『アナザースキル』や『異界具』って……」

「……あ…」

完全に忘れてた、どうしよう。

今更誤魔化せない。

「君は……いやあなたは異世界から呼ばれた方なのですか?」

バレてしまった。

ベリルさんも話し方がさっきと違う。

「……はい、そうです」

俺は正直に言った。

「ほんっ~~とうにすみませんでしたぁ!」

「えっ!?いや、ちょっと!」

ベリルさんが急に土下座をして謝ってきたので狼狽えてしまった。

「この世界の住人の身勝手な都合で戦ってもらっているというのに数々の無礼、お許しください!」

「いやいやいや!全然そんなこと思ってませんから!」

「本当ですか!?」

「本当です!だから気にしなくて大丈夫です!」

俺がそういうとベリルさんはやっと立った。

「こちらにはどうして来られたのですか?」

「こっちには……ていうかベリルさんのその喋り方何ですか?」

「敬意を払うべきかと思いまして」

「それはいいですけど話し方は戻してくれ負けさせんか?」

「しかし…」

「お願いします」

「……わかりました。じゃあこっちにはどうしてきたんだ?」

「ちょっと獣王様にお願いがあってきたんです」

「そうか、それならステータスカードを見せれば大丈夫だと思うぞ」

「そうですか。あ、そうだ。ベリルさん」

「なんだ?」

「王都にある服屋を紹介してくれませんか?ルミナがこのままだとかわいそうなんで」

「そうか、ちょっと待っててくれ」

「あと、魔物の素材を換金できるところも教えてください」

「わかった、そっちの方もやっておく」

ベリルさんはこの部屋にある棚から地図を取り出して何かを書き記した。

「ほれ、この地図に書いておいたから持っていくといい」

「ありがとうございます」

「さっきの迷惑料だと思ってくれればいい。では、良い1日を」

俺はルミナと一緒にベリルさんに軽く会釈し、部屋から出ていった。
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