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この国
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やっと朝が来た。
昨日は夜が明けるまで見張りをしていたのでさすがに疲れた。
特に面倒だったのは次から次へと湧いてくる魔物の対処だった。
ルミナが俺によりかかって寝ているので動くこともできないし討伐するにも音を立てるわけにはいかなかった。
だけどナビが反射を調整して任意で音も反射できるようにしたのでその場で騒がず、動かずに魔物を倒すことができた。
(ナビって本当に有能だな)
『お褒めに預かり光栄です』
それでも周りには魔物の死骸が転がっていて死屍累々となっているがルミナを起こさずに対処できたのでよしとしよう。
「……ん…」
焚火を眺めているとルミナが起きた。
まだ少し眠いようで寝ぼけ眼を擦っている。
「おはよう、ルミナ」
「おはようなの」
「朝ごはん食べるか?」
「食べるの」
ルミナがそう言ったので昨日のホーンディアの肉を焚火で焼く。
血も抜いておいたし前に食べた時は3日前のものでも焼けば大丈夫だったので多分問題ないだろう。
(そういえば昨日、ルミナは水を飲んでなかったけど大丈夫なのか?)
「ルミナ、喉は渇いてないか?」
「渇いてるの」
そう聞いて俺はアイテムボックスから水筒を取り出す。
これは樹海に来て最初に池を見つけた際に水を持っていけるようにするため、木を削って作ったものだ。
下手くそで蓋と水筒の間に隙間があるがアイテムボックスに入れるので水が漏れる心配はなかった。
俺は水筒をルミナに渡す。
するとルミナは渡された水筒をものすごい勢いで飲み始めた。
水筒は大きいわけではないので当然中の水は無くなった。
「あっ……。ごめんなさい……なの……」
水がなくなったことに気付き、俺に怒られると思ったのか耳をペタンと伏せて謝ってきた。
「大丈夫、気にするな」
俺がこう言ったのは昨日ルミナが寝ている時に鑑定でルミナのステータスを見て『方向感覚』というスキルがあったからだ。
『鑑定』でさらに詳細を見たら『行きたいところの方角がわかるという』というものだった。
これがあればこの樹海から出られるかもしれない。
なので水を全部飲んだことは特に問題ないと思っている。
「それよりも肉焼けたけど食べるか?」
「……食べるの」
俺はルミナに焼けた肉を渡す。
今は昨夜ほどの食欲は無いようで一個で満腹になったようだ。
「そういえばルミナはなんでこの樹海にいるんだ?」
「村の人にごくつぶしはいらないって言われて追い出されたの」
「……ごめん、聞いちゃいけなかったな」
「今はおにーちゃんがお腹いっぱい食べさせてくれるから全然へーきなの」
「お兄ちゃんって俺のことか?」
「そうなの」
どうやら一緒に食事をしたのが功を成したようで信頼してくれてるみたいだ。
「そういえばここがどの国の領域かわかるか?」
「ここは獣王様が治める獣人の国なの」
「国の名前は?」
「たしかガフなんちゃらだったの」
「もしかしてガフラスティ獣王国?」
「多分そうなの」
これはラッキーだ。
まさかキャマロッツ王国の同盟国の国だとはな。
俺がキャマロッツ王国で召喚された異世界人だと言えばもしかしたら協力してくれるかもしれない。
希望的観測だからまだな確実なことは言えないけどな。
「王都はどこにあるかわかるか?」
「ん~~、多分あっちなの」
ルミナは意識せずに『方向感覚』を使ったのか向こうを指で指す。
これで王都の方向は分かったから行けるな。
「よし、ありがとうな」
「おにーちゃんはどうするの?」
「王都へ向かうよ。ルミナはどこか行くあてはあるか?あるならそこに送るよ」
「……行くあてもないし…居場所もなかったの……」
「え?じゃあ親は、ってそうか……」
この子はさっき穀潰しはいらないと言われてで追い出されたと言っていた。
それはつまり、自分を養ってくれる人が村にはもういないということだ。
ということは当然、親もいないということ。
(俺ってデリカシーがないなぁ)
俺はさっきの発言を後悔した。
(ならどうする?ここに置いていくのは絶対駄目だし……)
俺は思考の末、ある結論に至る。
「じゃあ俺と一緒に来るか?」
「……いいの?」
「ああ、構わないよ」
「ルミナのこと捨てたりしない?」
「そんなことしないよ」
「ずっと一緒にいてくれるの?」
「ルミナがそれを望むなら」
「本当なの?」
「本当だよ」
「……じゃあ。おとーさんって呼んでもいいの?」
「え?」
(お父さん?俺が?)
「やっぱり…ダメ……なの?」
俺がルミナの言葉に対して返答に困っていると、不安になったのかルミナが聞いてくる。
「いや!駄目じゃないぞ!」
「……本当?」
「全然大丈夫!」
「…じゃあ、ルミナはおとーさんの娘になったから、おとーさんと一緒に行くの」
ルミナは父親ができたことが嬉しいのか笑顔でそう言ってきた。
俺はその場の勢いでルミナの父親になることを承諾してしまった。
(はぁ、やっちまった……、まぁ、いいか)
今日、異世界で俺は娘ができた。
昨日は夜が明けるまで見張りをしていたのでさすがに疲れた。
特に面倒だったのは次から次へと湧いてくる魔物の対処だった。
ルミナが俺によりかかって寝ているので動くこともできないし討伐するにも音を立てるわけにはいかなかった。
だけどナビが反射を調整して任意で音も反射できるようにしたのでその場で騒がず、動かずに魔物を倒すことができた。
(ナビって本当に有能だな)
『お褒めに預かり光栄です』
それでも周りには魔物の死骸が転がっていて死屍累々となっているがルミナを起こさずに対処できたのでよしとしよう。
「……ん…」
焚火を眺めているとルミナが起きた。
まだ少し眠いようで寝ぼけ眼を擦っている。
「おはよう、ルミナ」
「おはようなの」
「朝ごはん食べるか?」
「食べるの」
ルミナがそう言ったので昨日のホーンディアの肉を焚火で焼く。
血も抜いておいたし前に食べた時は3日前のものでも焼けば大丈夫だったので多分問題ないだろう。
(そういえば昨日、ルミナは水を飲んでなかったけど大丈夫なのか?)
「ルミナ、喉は渇いてないか?」
「渇いてるの」
そう聞いて俺はアイテムボックスから水筒を取り出す。
これは樹海に来て最初に池を見つけた際に水を持っていけるようにするため、木を削って作ったものだ。
下手くそで蓋と水筒の間に隙間があるがアイテムボックスに入れるので水が漏れる心配はなかった。
俺は水筒をルミナに渡す。
するとルミナは渡された水筒をものすごい勢いで飲み始めた。
水筒は大きいわけではないので当然中の水は無くなった。
「あっ……。ごめんなさい……なの……」
水がなくなったことに気付き、俺に怒られると思ったのか耳をペタンと伏せて謝ってきた。
「大丈夫、気にするな」
俺がこう言ったのは昨日ルミナが寝ている時に鑑定でルミナのステータスを見て『方向感覚』というスキルがあったからだ。
『鑑定』でさらに詳細を見たら『行きたいところの方角がわかるという』というものだった。
これがあればこの樹海から出られるかもしれない。
なので水を全部飲んだことは特に問題ないと思っている。
「それよりも肉焼けたけど食べるか?」
「……食べるの」
俺はルミナに焼けた肉を渡す。
今は昨夜ほどの食欲は無いようで一個で満腹になったようだ。
「そういえばルミナはなんでこの樹海にいるんだ?」
「村の人にごくつぶしはいらないって言われて追い出されたの」
「……ごめん、聞いちゃいけなかったな」
「今はおにーちゃんがお腹いっぱい食べさせてくれるから全然へーきなの」
「お兄ちゃんって俺のことか?」
「そうなの」
どうやら一緒に食事をしたのが功を成したようで信頼してくれてるみたいだ。
「そういえばここがどの国の領域かわかるか?」
「ここは獣王様が治める獣人の国なの」
「国の名前は?」
「たしかガフなんちゃらだったの」
「もしかしてガフラスティ獣王国?」
「多分そうなの」
これはラッキーだ。
まさかキャマロッツ王国の同盟国の国だとはな。
俺がキャマロッツ王国で召喚された異世界人だと言えばもしかしたら協力してくれるかもしれない。
希望的観測だからまだな確実なことは言えないけどな。
「王都はどこにあるかわかるか?」
「ん~~、多分あっちなの」
ルミナは意識せずに『方向感覚』を使ったのか向こうを指で指す。
これで王都の方向は分かったから行けるな。
「よし、ありがとうな」
「おにーちゃんはどうするの?」
「王都へ向かうよ。ルミナはどこか行くあてはあるか?あるならそこに送るよ」
「……行くあてもないし…居場所もなかったの……」
「え?じゃあ親は、ってそうか……」
この子はさっき穀潰しはいらないと言われてで追い出されたと言っていた。
それはつまり、自分を養ってくれる人が村にはもういないということだ。
ということは当然、親もいないということ。
(俺ってデリカシーがないなぁ)
俺はさっきの発言を後悔した。
(ならどうする?ここに置いていくのは絶対駄目だし……)
俺は思考の末、ある結論に至る。
「じゃあ俺と一緒に来るか?」
「……いいの?」
「ああ、構わないよ」
「ルミナのこと捨てたりしない?」
「そんなことしないよ」
「ずっと一緒にいてくれるの?」
「ルミナがそれを望むなら」
「本当なの?」
「本当だよ」
「……じゃあ。おとーさんって呼んでもいいの?」
「え?」
(お父さん?俺が?)
「やっぱり…ダメ……なの?」
俺がルミナの言葉に対して返答に困っていると、不安になったのかルミナが聞いてくる。
「いや!駄目じゃないぞ!」
「……本当?」
「全然大丈夫!」
「…じゃあ、ルミナはおとーさんの娘になったから、おとーさんと一緒に行くの」
ルミナは父親ができたことが嬉しいのか笑顔でそう言ってきた。
俺はその場の勢いでルミナの父親になることを承諾してしまった。
(はぁ、やっちまった……、まぁ、いいか)
今日、異世界で俺は娘ができた。
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