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第1章 光と悪夢
第9話 崩壊への扉
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午後3時、アーガスの家の前で騒いでいる住人の大声で起床した。今日も多くの住人が悪夢に苦しめられている人々を抱えながらアーガスや騎士に詰め寄っていた。
「昨日、私の子どもが黒魔術師に襲われてしまって1日中泣き叫んでいます。どうか助けてください」
「俺の友人を優先的に救え。俺は隣町を治めている貴族だ」
「先生の命を救ってください。お願いします」
個人部屋の窓ガラスから身を乗り出して眺めると、レーグル町の町民だけでなく隣町から噂を聞きつけてやってきた国民が100人くらい押し寄せてきた。貧困な家庭から貴族、子どもから老人まで、身分や年齢は様々だった。
俺は焦って対応しているアーガスをサポートするために個人部屋から出ると、アメリア、エミリー、フレイ、ミアが同時に部屋から出た。エミリー以外の4人は目を合わせて玄関へ行くことを決意したが、エミリーは俺たちを過剰に心配していた。俺たちは大騒ぎしている玄関に向かいながら話し始めた。
「皆さん、今日は出歩いてはダメですよ。深夜の戦いで尽き果てた今の皆さんでは治療が厳しいですよ。今日は休んでください。私がアーガスさんや住人を説得します」
「エミリー、気遣ってくれてありがとう。でも私は悪夢を救うために今日も戦うわ。そうだよね、東条くん、フレイさん」
「アメリアの言う通りだ、俺たちは黒魔術師に負けられない。一刻も早く地獄の世界から患者を救うのが俺たちの使命だ」
「エミリーさん、私たちの体調を気にしてくれるのは有り難いけど、私たちは1流の魔道士よ。魔力を使い果たしたくらいで諦める3流の魔道士とは違うわ。心配しないでね」
「ミアさん、何か言ってください。アメリアさんたちを止めてください」
「ごめん、エミリー。私は黒魔術師に恨みがあるからアメリアたちを止めることができないし、私の行動を制限しないで欲しい。エミリーは私たちの無事を祈ってくれれば助かる」
「そんなあ、皆さんは黒魔術師との戦いでボロボロじゃないですか。何が何でも休んでください。特に東条さん、ミアさん、深夜は魔力が枯渇して倒れていたのですよ。そんな体力では戦えないですよ」
「エミリー、俺の体調のことは気にしないでくれ。俺は平常だ、ミアはどうだ?」
「私も回復した。だから私も黒魔術師と戦う。休憩する理由はない。エミリー、残念だけど諦めて」
エミリーは4人の覚悟に根負けして、悔しい表情をしながら下を向いた。
「はい、承知しました。でも皆さん、絶対に生き残ってくださいね」
その後、エミリーは何も言わずに下を向きながら俺たちと廊下を歩き続けた。俺はミアに昨日のことについて尋ねてみた。
「ミア、なぜ俺たちを庇ったんだ? ミアは黒魔術師ではないのか?」
「私は6歳までは普通の魔道士だった。でもある日の深夜に黒魔術師に拐われて奴隷として働かされた。だから私は奴隷生活から抜け出すために昨日のタイミングで黒魔術師と決別するために東条を庇った。東条、昨日はありがとう」
「ミアのお陰で助かった、こちらこそありがとう。ミア、もし言いたくなければ言わなくていい。黒魔術師について話してくれないか?」
「分かった、私が知っていることをすべて話す。東条、何が聞きたい?」
「黒魔術師の弱点があれば教えてほしい。俺たちは光が弱点ということしか知らない」
「残念だけど光以外の弱点はない。ちなみに黒魔術師が行動できる時間はアルストレイア王国で陽の光が少ない午前0時から午前5時まで。奴らは光を嫌っているから、光を放つ者を優先的に襲う習性を持っている。治療するときは必ず1人以上の黒魔術師が襲ってくることを覚悟してほしい」
「午前5時以降はどこで生活しているんだ?」
「光が全く差し込まない真っ暗な洞窟で暮らした。悔しいけど、その洞窟がどこにあるのかは覚えていない。そこで私は奴らに魔法を叩き込まれた」
「なぜ黒魔術師はミアを誘拐したんだ? 6歳の魔道士を連れ去るなんておかしいだろ!」
「理由は簡単、戦闘員が欲しかったから。奴らの特徴として、悪夢に苦しめられている人が多ければ多いほど奴らの魔力が強くなる。だからアルストレイア王国を悪夢で支配するために私を連れ去った。」
「悪夢で苦しめられている人だけでなく、黒魔術師の目的のために連れ去られた魔道士も大勢いるのか!」
「そう、洞窟では私だけでなく魔道士の生徒や教師が奴らに捕まって鎖で全身を縛られていた。食事も最低限で睡眠時間は全く無い。ひたすら奴らの魔法を覚えて、罪がない住人に対して悪夢の魔法を唱えた。奴らに逆らえば殺されるから毎日涙を流しながら唱えた」
「質問してごめん。こんなに地獄のような生活だと思っていなかった」
「いいえ、心配しなくていい。私もみんなに話すつもりだったから。東条、もし力を貸してくれるなら私と一緒に奴らを倒してくれないか?」
「ああ、絶対に倒してやる! この世界を救ってやる! 俺はいつでもミアの味方だ、何かあったら俺を頼ってくれ」
淡々と黒魔術師について語っていたミアが俺の決意を聞くと少しだけ笑顔になった。
「私に協力してくれてありがとう。私だけでは無理だったけど東条がいれば問題ない」
数分後、長い廊下を歩き続けて玄関を出るとアーガスや騎士、大勢の住民が悲鳴を上げながら倒れていた。目の前には貴族の背中を踏みながら爆笑している黒魔術師が立っていた。なぜ午後3時なのに黒魔術師が出現しているのか?
「貴様、なぜここにいる? 貴様らは深夜にしか行動できないはずだ!」
「東条、俺達が昼間から行動して文句あるのか? 俺たちも進化しているのだよ、雑魚魔道士」
「もしかして光を克服したのか?」
「違う、お前の仲間にミアがいるだろ? ミアは黒魔術師ではないから光がある場所でも生活できる。殺されても黒い灰となって消えない」
「まさかお前は魔道士なのか?」
「大正解! 俺は黒魔術師の理念に賛同した魔道士だよ。君たちは俺たちの栄養を奪い取る邪魔者だ、ここで消えてくれ」
「ふざけるな! 悪夢に苦しんでいる人々を増やしてどうする? この国は滅びるぞ!」
「東条、落ち着け。俺は悪夢を唱えたと言っていない。俺は雑魚たちを気絶させただけだ。昼間から悪夢を唱える方法はまだ開発されていないから安心しろ。だけど俺は黒魔術師だぜ、この国が滅びたほうがいいじゃん! 無能な貴族や政治家から国を奪い取るために悪の道に走ったんだよ! 俺に正義を語っても無駄だぜ、勇者気取りの東条さんよ!」
「俺と戦え。絶対にお前を倒す。覚悟しろ、裏切り者!」
「やってやるよ、東条。お前らを消し去ればこの国は俺たちのものだ! お前らの最期の日に特別に教えてやる、俺はエリート魔道士のデグラ様だ!」
身長175センチのデグラという20代くらいの男性は両手に槍を出現させて俺に向かって走ってきた。俺はすぐに大剣を出現させて両手で構えた。デグラは俺の腹に向けて槍を突いてきたが、俺は大剣で身を守ってから槍を振り落とした。
デグラはすぐに後方に飛び跳ねて後退してから黒色の球体を両手で作成し始めた。大きな球体を作っているため詠唱には時間がかかっている。隙ができているデグラに対して俺は左足に力を入れながら衝撃波を放ち、デグラの詠唱を中断させた。デグラは風圧に耐えきれず、頭から地面に叩きつけられた。
デグラは意識を取り戻して立ち上がった。しかし俺はデグラが意識を失っているときに両手に剣を出現させながらデグラに駆け寄り、起き上がったデグラの首に向けて鋭い刃を近づけた。
「デグラ、死ぬのはお前だ。黒魔術師と協力して世界征服を企むお前を許さない。最期に何か言うことはあるか? 死ぬ前に一瞬だけ待ってやる、反撃しようとしたら速攻でトドメを刺す」
「ならばお前の悪口を言って仲間を引き裂いてやるよ。おい、東条の仲間! こいつは異世界から来た魔道士だぜ。アルストレイア王国の何も知らない奴を信じるのか? お前たちは何をするのか分からない異端者のこいつの味方をするのか?」
すると遠くで俺を見守っていた4人は笑いながら俺を味方してくれた。
「2つだけ訂正しておくわ。1つ目に東条くんは日本という異世界では魔道士ではなかったのよ。能力者ではない平凡な高校生という学生だったのよ。2つ目に口先だけのお前よりも行動や態度で示してくれる東条くんのほうが何万倍も信用できる。お前はアルストレイア王国の国民だけど全く信用できない。だから東条くんと共に戦っているのよ。お前は何も分かってないわ」
「東条さんは悪夢を救う救世主です。東条さんがいないとこの世界が滅んでしまいます。私はできる限り東条さんに尽くしたいと思います」
「東条くんは命の恩人よ。私たちのために必死に戦ってくれる東条くんは大好きだよ! 私もエリート魔道士の誇りにかけてもっと魔法を勉強するから、一緒に頑張ろうね!」
「デグラ、お前は黒魔術師に落ちたのか! 見損なったぞ! 東条、デグラを今すぐ潰せ、私が許可する」
デグラは悲鳴を上げながら俺に懇願していた。
「やめろ、俺を殺さないでくれ。悪かった、謝るよ。だから命だけは助けてくれ」
「残念だけど、仲間を軽蔑したお前を絶対に許さない!」
俺は地面に向けて衝撃波を放ち、溶岩が確認できるほど地下深くまで穴を掘った。さらに怯えているデグラに至近距離で衝撃波を放ち、先程作成した穴に叩き落とした。その後、住人が穴に落ちないように魔法で大量の土や岩を生成して元の状態に戻した。
デグラがいなくなったと同時に俺たちは倒れている住人に回復魔法を唱えた。既に悪夢に拐われている住人を除いて、アーガスや助けを求めてやってきた住人が目を覚ました。するとアーガスや住人は俺たちに拍手をし始めた。
「ありがとうございます、皆様のお陰でこの町の危機が救われました。いつも皆様に負担をかけさせて申し訳ございません」
「黒魔術師を倒した魔道士の噂は本当だったのね! ありがとう!」
「君たちは英雄だ!」
大勢の住人が感謝しているとき、アメリアは住人に向かって大声で叫んだ。
「私たちは悪夢をこの世界からなくすために戦っている魔道士です。今日も治療を実施するので安心してください。ここに集まっていただきました全員の治療をしますので、焦らずゆっくりと受付してください」
アーガスの家の玄関の前では大歓声に溢れ、俺たちを褒め称えた。
その後、アメリアとエミリーは受付、ミアとアーガスは倒壊した広間の修理の手伝い、ミアと俺はアメリアに指示されて深夜の黒魔術師との戦闘のために寝ることにした。
俺とミアが長い廊下を歩いているとき、ミアは俺に涙を流しながら俺の腕を強く掴んだ。
「私のために話を聞いてくれて、ありがとう。東条のお陰でスッキリした」
「ミア、俺のために黒魔術師の情報を教えてくれて、ありがとう。深夜も厳しい戦いが始まると思うけど一緒に頑張ろうな」
「ええ、東条も気をつけて。今度は魔力の管理を徹底する戦い方をして。君が倒れたら黒魔術師に勝てない」
「ああ、大切に魔力を使うよ。それまでに今から寝て魔力を回復させよう」
俺とミアはそれぞれ個人部屋に戻り、午後11時40分まで寝た。
「昨日、私の子どもが黒魔術師に襲われてしまって1日中泣き叫んでいます。どうか助けてください」
「俺の友人を優先的に救え。俺は隣町を治めている貴族だ」
「先生の命を救ってください。お願いします」
個人部屋の窓ガラスから身を乗り出して眺めると、レーグル町の町民だけでなく隣町から噂を聞きつけてやってきた国民が100人くらい押し寄せてきた。貧困な家庭から貴族、子どもから老人まで、身分や年齢は様々だった。
俺は焦って対応しているアーガスをサポートするために個人部屋から出ると、アメリア、エミリー、フレイ、ミアが同時に部屋から出た。エミリー以外の4人は目を合わせて玄関へ行くことを決意したが、エミリーは俺たちを過剰に心配していた。俺たちは大騒ぎしている玄関に向かいながら話し始めた。
「皆さん、今日は出歩いてはダメですよ。深夜の戦いで尽き果てた今の皆さんでは治療が厳しいですよ。今日は休んでください。私がアーガスさんや住人を説得します」
「エミリー、気遣ってくれてありがとう。でも私は悪夢を救うために今日も戦うわ。そうだよね、東条くん、フレイさん」
「アメリアの言う通りだ、俺たちは黒魔術師に負けられない。一刻も早く地獄の世界から患者を救うのが俺たちの使命だ」
「エミリーさん、私たちの体調を気にしてくれるのは有り難いけど、私たちは1流の魔道士よ。魔力を使い果たしたくらいで諦める3流の魔道士とは違うわ。心配しないでね」
「ミアさん、何か言ってください。アメリアさんたちを止めてください」
「ごめん、エミリー。私は黒魔術師に恨みがあるからアメリアたちを止めることができないし、私の行動を制限しないで欲しい。エミリーは私たちの無事を祈ってくれれば助かる」
「そんなあ、皆さんは黒魔術師との戦いでボロボロじゃないですか。何が何でも休んでください。特に東条さん、ミアさん、深夜は魔力が枯渇して倒れていたのですよ。そんな体力では戦えないですよ」
「エミリー、俺の体調のことは気にしないでくれ。俺は平常だ、ミアはどうだ?」
「私も回復した。だから私も黒魔術師と戦う。休憩する理由はない。エミリー、残念だけど諦めて」
エミリーは4人の覚悟に根負けして、悔しい表情をしながら下を向いた。
「はい、承知しました。でも皆さん、絶対に生き残ってくださいね」
その後、エミリーは何も言わずに下を向きながら俺たちと廊下を歩き続けた。俺はミアに昨日のことについて尋ねてみた。
「ミア、なぜ俺たちを庇ったんだ? ミアは黒魔術師ではないのか?」
「私は6歳までは普通の魔道士だった。でもある日の深夜に黒魔術師に拐われて奴隷として働かされた。だから私は奴隷生活から抜け出すために昨日のタイミングで黒魔術師と決別するために東条を庇った。東条、昨日はありがとう」
「ミアのお陰で助かった、こちらこそありがとう。ミア、もし言いたくなければ言わなくていい。黒魔術師について話してくれないか?」
「分かった、私が知っていることをすべて話す。東条、何が聞きたい?」
「黒魔術師の弱点があれば教えてほしい。俺たちは光が弱点ということしか知らない」
「残念だけど光以外の弱点はない。ちなみに黒魔術師が行動できる時間はアルストレイア王国で陽の光が少ない午前0時から午前5時まで。奴らは光を嫌っているから、光を放つ者を優先的に襲う習性を持っている。治療するときは必ず1人以上の黒魔術師が襲ってくることを覚悟してほしい」
「午前5時以降はどこで生活しているんだ?」
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「なぜ黒魔術師はミアを誘拐したんだ? 6歳の魔道士を連れ去るなんておかしいだろ!」
「理由は簡単、戦闘員が欲しかったから。奴らの特徴として、悪夢に苦しめられている人が多ければ多いほど奴らの魔力が強くなる。だからアルストレイア王国を悪夢で支配するために私を連れ去った。」
「悪夢で苦しめられている人だけでなく、黒魔術師の目的のために連れ去られた魔道士も大勢いるのか!」
「そう、洞窟では私だけでなく魔道士の生徒や教師が奴らに捕まって鎖で全身を縛られていた。食事も最低限で睡眠時間は全く無い。ひたすら奴らの魔法を覚えて、罪がない住人に対して悪夢の魔法を唱えた。奴らに逆らえば殺されるから毎日涙を流しながら唱えた」
「質問してごめん。こんなに地獄のような生活だと思っていなかった」
「いいえ、心配しなくていい。私もみんなに話すつもりだったから。東条、もし力を貸してくれるなら私と一緒に奴らを倒してくれないか?」
「ああ、絶対に倒してやる! この世界を救ってやる! 俺はいつでもミアの味方だ、何かあったら俺を頼ってくれ」
淡々と黒魔術師について語っていたミアが俺の決意を聞くと少しだけ笑顔になった。
「私に協力してくれてありがとう。私だけでは無理だったけど東条がいれば問題ない」
数分後、長い廊下を歩き続けて玄関を出るとアーガスや騎士、大勢の住民が悲鳴を上げながら倒れていた。目の前には貴族の背中を踏みながら爆笑している黒魔術師が立っていた。なぜ午後3時なのに黒魔術師が出現しているのか?
「貴様、なぜここにいる? 貴様らは深夜にしか行動できないはずだ!」
「東条、俺達が昼間から行動して文句あるのか? 俺たちも進化しているのだよ、雑魚魔道士」
「もしかして光を克服したのか?」
「違う、お前の仲間にミアがいるだろ? ミアは黒魔術師ではないから光がある場所でも生活できる。殺されても黒い灰となって消えない」
「まさかお前は魔道士なのか?」
「大正解! 俺は黒魔術師の理念に賛同した魔道士だよ。君たちは俺たちの栄養を奪い取る邪魔者だ、ここで消えてくれ」
「ふざけるな! 悪夢に苦しんでいる人々を増やしてどうする? この国は滅びるぞ!」
「東条、落ち着け。俺は悪夢を唱えたと言っていない。俺は雑魚たちを気絶させただけだ。昼間から悪夢を唱える方法はまだ開発されていないから安心しろ。だけど俺は黒魔術師だぜ、この国が滅びたほうがいいじゃん! 無能な貴族や政治家から国を奪い取るために悪の道に走ったんだよ! 俺に正義を語っても無駄だぜ、勇者気取りの東条さんよ!」
「俺と戦え。絶対にお前を倒す。覚悟しろ、裏切り者!」
「やってやるよ、東条。お前らを消し去ればこの国は俺たちのものだ! お前らの最期の日に特別に教えてやる、俺はエリート魔道士のデグラ様だ!」
身長175センチのデグラという20代くらいの男性は両手に槍を出現させて俺に向かって走ってきた。俺はすぐに大剣を出現させて両手で構えた。デグラは俺の腹に向けて槍を突いてきたが、俺は大剣で身を守ってから槍を振り落とした。
デグラはすぐに後方に飛び跳ねて後退してから黒色の球体を両手で作成し始めた。大きな球体を作っているため詠唱には時間がかかっている。隙ができているデグラに対して俺は左足に力を入れながら衝撃波を放ち、デグラの詠唱を中断させた。デグラは風圧に耐えきれず、頭から地面に叩きつけられた。
デグラは意識を取り戻して立ち上がった。しかし俺はデグラが意識を失っているときに両手に剣を出現させながらデグラに駆け寄り、起き上がったデグラの首に向けて鋭い刃を近づけた。
「デグラ、死ぬのはお前だ。黒魔術師と協力して世界征服を企むお前を許さない。最期に何か言うことはあるか? 死ぬ前に一瞬だけ待ってやる、反撃しようとしたら速攻でトドメを刺す」
「ならばお前の悪口を言って仲間を引き裂いてやるよ。おい、東条の仲間! こいつは異世界から来た魔道士だぜ。アルストレイア王国の何も知らない奴を信じるのか? お前たちは何をするのか分からない異端者のこいつの味方をするのか?」
すると遠くで俺を見守っていた4人は笑いながら俺を味方してくれた。
「2つだけ訂正しておくわ。1つ目に東条くんは日本という異世界では魔道士ではなかったのよ。能力者ではない平凡な高校生という学生だったのよ。2つ目に口先だけのお前よりも行動や態度で示してくれる東条くんのほうが何万倍も信用できる。お前はアルストレイア王国の国民だけど全く信用できない。だから東条くんと共に戦っているのよ。お前は何も分かってないわ」
「東条さんは悪夢を救う救世主です。東条さんがいないとこの世界が滅んでしまいます。私はできる限り東条さんに尽くしたいと思います」
「東条くんは命の恩人よ。私たちのために必死に戦ってくれる東条くんは大好きだよ! 私もエリート魔道士の誇りにかけてもっと魔法を勉強するから、一緒に頑張ろうね!」
「デグラ、お前は黒魔術師に落ちたのか! 見損なったぞ! 東条、デグラを今すぐ潰せ、私が許可する」
デグラは悲鳴を上げながら俺に懇願していた。
「やめろ、俺を殺さないでくれ。悪かった、謝るよ。だから命だけは助けてくれ」
「残念だけど、仲間を軽蔑したお前を絶対に許さない!」
俺は地面に向けて衝撃波を放ち、溶岩が確認できるほど地下深くまで穴を掘った。さらに怯えているデグラに至近距離で衝撃波を放ち、先程作成した穴に叩き落とした。その後、住人が穴に落ちないように魔法で大量の土や岩を生成して元の状態に戻した。
デグラがいなくなったと同時に俺たちは倒れている住人に回復魔法を唱えた。既に悪夢に拐われている住人を除いて、アーガスや助けを求めてやってきた住人が目を覚ました。するとアーガスや住人は俺たちに拍手をし始めた。
「ありがとうございます、皆様のお陰でこの町の危機が救われました。いつも皆様に負担をかけさせて申し訳ございません」
「黒魔術師を倒した魔道士の噂は本当だったのね! ありがとう!」
「君たちは英雄だ!」
大勢の住人が感謝しているとき、アメリアは住人に向かって大声で叫んだ。
「私たちは悪夢をこの世界からなくすために戦っている魔道士です。今日も治療を実施するので安心してください。ここに集まっていただきました全員の治療をしますので、焦らずゆっくりと受付してください」
アーガスの家の玄関の前では大歓声に溢れ、俺たちを褒め称えた。
その後、アメリアとエミリーは受付、ミアとアーガスは倒壊した広間の修理の手伝い、ミアと俺はアメリアに指示されて深夜の黒魔術師との戦闘のために寝ることにした。
俺とミアが長い廊下を歩いているとき、ミアは俺に涙を流しながら俺の腕を強く掴んだ。
「私のために話を聞いてくれて、ありがとう。東条のお陰でスッキリした」
「ミア、俺のために黒魔術師の情報を教えてくれて、ありがとう。深夜も厳しい戦いが始まると思うけど一緒に頑張ろうな」
「ええ、東条も気をつけて。今度は魔力の管理を徹底する戦い方をして。君が倒れたら黒魔術師に勝てない」
「ああ、大切に魔力を使うよ。それまでに今から寝て魔力を回復させよう」
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