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第166話 最後のダンス

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 僕は世界の端っこで一人、膝を抱え座り込んでいた。
 端っこというだけあって、僕の眼下には真っ黒の闇が広がっている。
 ずーっと見ていると吸い込まれそうで、下腹の辺りから何かゾクゾクと変な感覚が上がってくる。

「ユウタ」

 誰かが僕を呼んだ?

「ユウタ!」

 振り返るとフィナが立っていた。
 彼女はスッと僕の真横に座った。
 
「元気出して」
「うん……」

 ネスコの話を聴いて僕は少なからずショックを受けていた。
 もう戦いたくない。
 そう思っていた。
 だから、この闇の中に落ちて全てを終わりにしたかった。

「フィナは知っていたの?」
「ん」
「この世界と地球ちきゅうが繋がってたてこと」
「ん~。フィナは難しいことは分からない。ただ一つ言えることは、私はユウタのために生きているってことだけだよ」

 フィナは僕の手を取った。
 彼女の柔らかい指が僕の指を包んだ。

「ユウタ、踊ろ!」

 地面に根っこを張ったように張り付いていた僕の尻は、フィナの誘いであっけなく引き離された。
 どこからともなく音楽が聴こえて来る。
 それはフィナのスキルによる二人だけにしか聴こえない音楽だった。
 僕が手の平を返すと彼女はターンをする。
 背中合わせになったかと思うと、向かい合わせになり扇の様に展開する。
 まるで万華鏡の模様が次々に変化する様に。
 陽気な曲でジルバを踊った後、音楽がフェードアウトしていく。

「次はタンゴだよ」

 勇ましい曲が流れ始めた。
 中腰でお互い手を取る。
 僕はフィナの腰にソッと手を添えた。
 音楽に弾き出される様にファーストステップを踏む。
 5歩のステップを踏んだ後、ストップ。

「おっ! ユウタ! メリハリ効いてる!」

 フィナが嬉しそうに声を上げる。

「フィナが沢山教えてくれたからね」

 ストップ・アンド・ゴーはタンゴの基本だった。
 曲が盛り上がるとともに、二人で世界の端っこのギリギリまで近づきそこで高速回転する。
 真上から見たらフィナのスカートが舞って花びらみたいになっているんだろうな。
 曲がフェードアウトし、一旦離れる。
 最後に静かな曲が流れだした。
 僕は両手を広げ、フィナを受け止めた。
 フィナは僕にその身を預ける様に左半身を僕の右半身に密着させ、しなやかな首を後ろに倒した。
 ワルツのスローで優雅な曲と共にフィナをリードしステップを踏む。

「ユウタ」
「何?」
「また会おうね」
「うん」

つづく
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