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第152話 コンティニューは無い仕様です。
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「3って何ですか!?」
僕は訳が分からなかった。
「残機のこと」
「え?」
アスミの冷静な答えを僕は訊きなおした。
「残機って……」
「端的に言うと、救世主であるユウタがあと何回、奇跡を起こせるかの回数を表している」
「え……?」
僕が瀕死になることで発動する奇跡。
それは、どんなモンスターでも人間でも倒す無敵の波動。(これはこれから現れる未知のモンスターに対しても人間に対してもそうなのかは分からないが……)
「じゃ、僕はあと3回しか奇跡を起こせないと……?」
アスミは無言で頷いた。
運営側である彼女が言うのだから間違いない。
「ユウタ。別の言い方をすると、あなたは3回奇跡を発動すると……」
アスミのその言葉を、皆、黙って聞いた。
そして、皆、絶望感に打ちひしがれた。
それは、こうだ。
「死ぬ」
え?
僕は心の中で問い掛けた。
アスミに、そして神に。
それはこの世界、つまりゲームを作った運営に対する問い掛けでもあった。
「アスミさん。それは本当なのですか?」
「うん」
ガイアが僕の動揺を察してか、代わりに問い掛けてくれた。
それは気休めでしかなかった。
「私は運営メンバーであった者を祖先に持つ。つまり、この世界を作った者の一員が有していた意志と知識を受け継いでいる。その運営メンバー、つまり私の祖父はこの世界の設定を担当した開発者だ。だから、この世界の設定に関して私の言うことに間違いは無い」
ああ……。
ということは僕は貴重な一回分の奇跡を、マリアンを助けるために使ったのか。
ラストダンジョンは魔王のいる最下層まであと8段ある。
つまり、魔王に辿り着くまでにあと8体の強力なボスモンスターと戦わなければならない訳だ。
「増やせないのですか?」
「無理だ。そういう仕様なのだ」
僕の希望は虚しく散った。
これからは3回分の奇跡を使うタイミングを慎重に選んでいかなければならない。
「ユウタさんが死んでも、私が彼を生き返らせて見せます!」
ガイアが胸に拳を当て、僕に向かって宣言する。
恐らく自分の命を犠牲にして蘇生魔法を使うのだろう。
「ガイアさん、ダメだ命を粗末にしては」
「いいえ! ユウタさんの命を救うことが私にとって自分の命を大事にすることなんです!」
彼女の頬は紅潮していた。
その熱いまなざしは僕の心を熱いもので満たし、彼女への気持ちは高まるばかりだった。
「私もユウタを救うもん!」
フィナが僕の背中に抱き着いて来た。
いつか感じた二つの柔らかな感触が背中から脳髄を通し全身に伝わる。
「フィナさん! こんなところで、そんな不埒なことを! 突然モンスターが現れてユウタさんが襲われたら、その体制じゃ逃げられませんよっ!」
ガイアがフィナを叱る。
「おかしくないもん! これがフィナの愛情表現だもん!」
フィナが僕の背中に胸を押し当てながらガイアに抗議する。
ガイアとフィナのやり取りを、リンネが横目で見ている。
「ユウタ、お前には恩が出来た。奇跡など使わなくても私がお前を全力で守る」
そこにマリアンも加わった。
それぞれ個性的な女子達が睨み合っている。
つづく
僕は訳が分からなかった。
「残機のこと」
「え?」
アスミの冷静な答えを僕は訊きなおした。
「残機って……」
「端的に言うと、救世主であるユウタがあと何回、奇跡を起こせるかの回数を表している」
「え……?」
僕が瀕死になることで発動する奇跡。
それは、どんなモンスターでも人間でも倒す無敵の波動。(これはこれから現れる未知のモンスターに対しても人間に対してもそうなのかは分からないが……)
「じゃ、僕はあと3回しか奇跡を起こせないと……?」
アスミは無言で頷いた。
運営側である彼女が言うのだから間違いない。
「ユウタ。別の言い方をすると、あなたは3回奇跡を発動すると……」
アスミのその言葉を、皆、黙って聞いた。
そして、皆、絶望感に打ちひしがれた。
それは、こうだ。
「死ぬ」
え?
僕は心の中で問い掛けた。
アスミに、そして神に。
それはこの世界、つまりゲームを作った運営に対する問い掛けでもあった。
「アスミさん。それは本当なのですか?」
「うん」
ガイアが僕の動揺を察してか、代わりに問い掛けてくれた。
それは気休めでしかなかった。
「私は運営メンバーであった者を祖先に持つ。つまり、この世界を作った者の一員が有していた意志と知識を受け継いでいる。その運営メンバー、つまり私の祖父はこの世界の設定を担当した開発者だ。だから、この世界の設定に関して私の言うことに間違いは無い」
ああ……。
ということは僕は貴重な一回分の奇跡を、マリアンを助けるために使ったのか。
ラストダンジョンは魔王のいる最下層まであと8段ある。
つまり、魔王に辿り着くまでにあと8体の強力なボスモンスターと戦わなければならない訳だ。
「増やせないのですか?」
「無理だ。そういう仕様なのだ」
僕の希望は虚しく散った。
これからは3回分の奇跡を使うタイミングを慎重に選んでいかなければならない。
「ユウタさんが死んでも、私が彼を生き返らせて見せます!」
ガイアが胸に拳を当て、僕に向かって宣言する。
恐らく自分の命を犠牲にして蘇生魔法を使うのだろう。
「ガイアさん、ダメだ命を粗末にしては」
「いいえ! ユウタさんの命を救うことが私にとって自分の命を大事にすることなんです!」
彼女の頬は紅潮していた。
その熱いまなざしは僕の心を熱いもので満たし、彼女への気持ちは高まるばかりだった。
「私もユウタを救うもん!」
フィナが僕の背中に抱き着いて来た。
いつか感じた二つの柔らかな感触が背中から脳髄を通し全身に伝わる。
「フィナさん! こんなところで、そんな不埒なことを! 突然モンスターが現れてユウタさんが襲われたら、その体制じゃ逃げられませんよっ!」
ガイアがフィナを叱る。
「おかしくないもん! これがフィナの愛情表現だもん!」
フィナが僕の背中に胸を押し当てながらガイアに抗議する。
ガイアとフィナのやり取りを、リンネが横目で見ている。
「ユウタ、お前には恩が出来た。奇跡など使わなくても私がお前を全力で守る」
そこにマリアンも加わった。
それぞれ個性的な女子達が睨み合っている。
つづく
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