120 / 199
第120話 ある世界でのレベルの話
しおりを挟む
私の目の前には胸を切り裂かれ、苦悶の表情のまま絶命した老人の死体が横たわっていた。
その死体の名前はレゴラス。
大祖先ことガイアの祖父。(地球での名前はミヤナガ・タダオミ)
「後は頼む」
そう言い残し、彼は竜神の剣の刺突により絶命した。
その剣の使い手、マリアンは彼を見下ろしこう言った。
「救世主を早く呼べ」
レゴラスはマリアンを説得しようとした。
ゲームクリアには彼女の力が必要だと、強く訴えた。
レベル90の戦士は少数だが存在する。
だが、レベル95の戦士は彼女しかいない。
この世界において、レベル90台に突入するとレベルを一つ上げるのに大量の経験値を必要とする。
大量の資源、それはつまり、大量の時間とモンスターが必要だということだった。
レベル91を超えた存在は魔王討伐に必要な人材だった。
だが、その訴えも虚しく、名・狙撃手であるレゴラスは殺された。
この世界で死んだ者はどこに行くのか、それはこの世界で生きている者には分からない。
一つだけ言えることは、この世界、つまりゲームをクリアすれば死者の魂は地球に転生するかもしれない。
ということだけである。
レゴラスは我々、生き残った者に後を託したのだ。
<リンネ>
ガイアからの通信が入った。
「何だ?」
<あなたのヒントのお陰で、双子の段のボスモンスターを倒すことが出来ました。ありがとうございます>
「うむ」
私の憶測が役立ったのは嬉しいことだった。
間違えて転移した先で、ボスまで倒してしまうとはガイアとユウタには驚かされる。
<もうすぐそちらに到着します>
ラストダンジョンはここからだいぶ遠いはず。
どうやって行くのか。
その疑問に、先回りする様に答えられた。
<ボスモンスターが転移玉をドロップしました。それを使い、ギルドホールの近くまで転移出来たのです>
「なるほど」
もうすぐユウタに会える。
そう思うと胸が高鳴った。
「何をしてる?」
突如、低い声が耳朶を打つ。
タイチを椅子代わりに座るマリアンが、こちらをじっと見ている。
「もう救世主が来るのか?」
彼女は竜神の剣に付着したレゴラスの血を、クロスで拭きながら笑い掛けて来た。
「ああ。もうすぐだ」
「楽しみだな。奴は見た目、レベルだけが高い弱そうな治癒魔法使いだ。だが、私達、人間ではもう手の届かないくらいほど強い存在になっている」
レベル95の彼女をして、ユウタはそれだけの存在になっていた。
ユウタが遠い存在になったような気がした。
つづく
その死体の名前はレゴラス。
大祖先ことガイアの祖父。(地球での名前はミヤナガ・タダオミ)
「後は頼む」
そう言い残し、彼は竜神の剣の刺突により絶命した。
その剣の使い手、マリアンは彼を見下ろしこう言った。
「救世主を早く呼べ」
レゴラスはマリアンを説得しようとした。
ゲームクリアには彼女の力が必要だと、強く訴えた。
レベル90の戦士は少数だが存在する。
だが、レベル95の戦士は彼女しかいない。
この世界において、レベル90台に突入するとレベルを一つ上げるのに大量の経験値を必要とする。
大量の資源、それはつまり、大量の時間とモンスターが必要だということだった。
レベル91を超えた存在は魔王討伐に必要な人材だった。
だが、その訴えも虚しく、名・狙撃手であるレゴラスは殺された。
この世界で死んだ者はどこに行くのか、それはこの世界で生きている者には分からない。
一つだけ言えることは、この世界、つまりゲームをクリアすれば死者の魂は地球に転生するかもしれない。
ということだけである。
レゴラスは我々、生き残った者に後を託したのだ。
<リンネ>
ガイアからの通信が入った。
「何だ?」
<あなたのヒントのお陰で、双子の段のボスモンスターを倒すことが出来ました。ありがとうございます>
「うむ」
私の憶測が役立ったのは嬉しいことだった。
間違えて転移した先で、ボスまで倒してしまうとはガイアとユウタには驚かされる。
<もうすぐそちらに到着します>
ラストダンジョンはここからだいぶ遠いはず。
どうやって行くのか。
その疑問に、先回りする様に答えられた。
<ボスモンスターが転移玉をドロップしました。それを使い、ギルドホールの近くまで転移出来たのです>
「なるほど」
もうすぐユウタに会える。
そう思うと胸が高鳴った。
「何をしてる?」
突如、低い声が耳朶を打つ。
タイチを椅子代わりに座るマリアンが、こちらをじっと見ている。
「もう救世主が来るのか?」
彼女は竜神の剣に付着したレゴラスの血を、クロスで拭きながら笑い掛けて来た。
「ああ。もうすぐだ」
「楽しみだな。奴は見た目、レベルだけが高い弱そうな治癒魔法使いだ。だが、私達、人間ではもう手の届かないくらいほど強い存在になっている」
レベル95の彼女をして、ユウタはそれだけの存在になっていた。
ユウタが遠い存在になったような気がした。
つづく
0
お気に入りに追加
300
あなたにおすすめの小説
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
転生賢者の異世界無双〜勇者じゃないと追放されましたが、世界最強の賢者でした〜
平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人は異世界へと召喚される。勇者としてこの国を救ってほしいと頼まれるが、直人の職業は賢者であったため、一方的に追放されてしまう。
だが、王は知らなかった。賢者は勇者をも超える世界最強の職業であることを、自分の力に気づいた直人はその力を使って自由気ままに生きるのであった。
一方、王は直人が最強だと知って、戻ってくるように土下座して懇願するが、全ては手遅れであった。
ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜
平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。
途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。
さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。
魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。
異世界をスキルブックと共に生きていく
大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる