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第118話 素敵なドレスでワルツを
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「リンネさんは私の代わりに、地球のギルドマスターになってくれました」
ガイアはリンネのことを話してくれた。
彼女の助言があればこそ、双子の段のボスモンスターのスキルが分かった。
僕はリンネの顔を思い出した。
大きな黒い瞳に、真っ赤な唇、真っ黒な髪に白い肌。
逆三角形の小さな顔は普段は無表情だが、感情が高ぶると頬が紅潮する。
彼女にも、僕は何度も助けられた。
そう考えると、僕は様々な人に助けられ、ここに至る。
僕が救世主というよりも、周りの皆が救世主の様な気がする。
「ユウタさん」
ガイアに呼び掛けられ、僕は物思いから引き戻された。
彼女の両手に緋色に輝く玉が乗せられていた。
「これは……」
「フォキシィがドロップした転移玉です」
ガイアが僕の顔を覗き込み、問い掛ける。
「使います?」
僕は迷った。
また変なところに転移したらどうしよう。
ガイアは僕の不安を和らげるつもりか、こう説明した。
「転移玉で転移出来る場所は、人間によって踏破済みの場所に限られます。違う言い方をすると、人間がまだ到達したことが無い場所には行くことが出来ません。つまり、ここより酷い場所には転移しないと思います」
なるほど。
合点がいった。
そんな僕の顔をガイアは見つめ、こう続ける。
「どちらにしても、ラストダンジョンは地球のギルドホールから遠い場所にあります。ここは、こんどこそ転移玉を信頼し目的地に戻れることを祈りましょう」
「はい」
フォキシィは転移玉の他にも様々なレアアイテムをドロップしていた。
それをガイアと山分けした。
「あ、これ、フィナが喜びそうだな」
僕が手に取ったそれは、澄んだ絹の水色のドレスだった。
あのフォキシィがこんな素敵なアイテムを持っていたなんて意外だった。
モンスターが所持するアイテムは全て神が決める事なので、僕がどうこう出来る訳ではないが、それにしても狐の化け物に美しいドレスは不釣り合いだ。
フィナがこれを着て僕とワルツを踊る様子を想像した。
彼女が回転する度に、スカートの裾が大輪の花の様に回転する。
その美しさに僕はうっとりした。
「ユウタさん!」
「はっ……はいっ!」
ガイアの声で僕は我に返った。
「ここは敵地ですよ! 気を抜かないでください!」
「は……はい」
ガイアは真面目だなあ。
そういえばフィナは何処だ?
「ねーねー! ユウタ! この下、すごいよ」
僕は驚いた。
フィナは勝手に下へと続く階段を降りて戻って来た様だ。
階段付近で興奮気味に僕を呼んでいる。
「ダメじゃないか、勝手に!」
「だって、どうなってるか知りたかったんだもん」
何にでも興味を持つのはいいことだが、安全を顧みないのでひやひやする。
「フィナさん、下には何がありましたか?」
ガイアが問い掛ける。
少しでも情報を仕入れておきたいということか。
「う~ん、何か泡だらけで先に進もうとしたら押し戻された」
「泡……」
僕とガイアは同時に首を傾げた。
確かこの下は蟹の段だ。
蟹や蟹型のモンスターは泡を吹く。
なるほど。
つづく
ガイアはリンネのことを話してくれた。
彼女の助言があればこそ、双子の段のボスモンスターのスキルが分かった。
僕はリンネの顔を思い出した。
大きな黒い瞳に、真っ赤な唇、真っ黒な髪に白い肌。
逆三角形の小さな顔は普段は無表情だが、感情が高ぶると頬が紅潮する。
彼女にも、僕は何度も助けられた。
そう考えると、僕は様々な人に助けられ、ここに至る。
僕が救世主というよりも、周りの皆が救世主の様な気がする。
「ユウタさん」
ガイアに呼び掛けられ、僕は物思いから引き戻された。
彼女の両手に緋色に輝く玉が乗せられていた。
「これは……」
「フォキシィがドロップした転移玉です」
ガイアが僕の顔を覗き込み、問い掛ける。
「使います?」
僕は迷った。
また変なところに転移したらどうしよう。
ガイアは僕の不安を和らげるつもりか、こう説明した。
「転移玉で転移出来る場所は、人間によって踏破済みの場所に限られます。違う言い方をすると、人間がまだ到達したことが無い場所には行くことが出来ません。つまり、ここより酷い場所には転移しないと思います」
なるほど。
合点がいった。
そんな僕の顔をガイアは見つめ、こう続ける。
「どちらにしても、ラストダンジョンは地球のギルドホールから遠い場所にあります。ここは、こんどこそ転移玉を信頼し目的地に戻れることを祈りましょう」
「はい」
フォキシィは転移玉の他にも様々なレアアイテムをドロップしていた。
それをガイアと山分けした。
「あ、これ、フィナが喜びそうだな」
僕が手に取ったそれは、澄んだ絹の水色のドレスだった。
あのフォキシィがこんな素敵なアイテムを持っていたなんて意外だった。
モンスターが所持するアイテムは全て神が決める事なので、僕がどうこう出来る訳ではないが、それにしても狐の化け物に美しいドレスは不釣り合いだ。
フィナがこれを着て僕とワルツを踊る様子を想像した。
彼女が回転する度に、スカートの裾が大輪の花の様に回転する。
その美しさに僕はうっとりした。
「ユウタさん!」
「はっ……はいっ!」
ガイアの声で僕は我に返った。
「ここは敵地ですよ! 気を抜かないでください!」
「は……はい」
ガイアは真面目だなあ。
そういえばフィナは何処だ?
「ねーねー! ユウタ! この下、すごいよ」
僕は驚いた。
フィナは勝手に下へと続く階段を降りて戻って来た様だ。
階段付近で興奮気味に僕を呼んでいる。
「ダメじゃないか、勝手に!」
「だって、どうなってるか知りたかったんだもん」
何にでも興味を持つのはいいことだが、安全を顧みないのでひやひやする。
「フィナさん、下には何がありましたか?」
ガイアが問い掛ける。
少しでも情報を仕入れておきたいということか。
「う~ん、何か泡だらけで先に進もうとしたら押し戻された」
「泡……」
僕とガイアは同時に首を傾げた。
確かこの下は蟹の段だ。
蟹や蟹型のモンスターは泡を吹く。
なるほど。
つづく
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