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第76話 孤独で寂しきギルドマスター。本当は皆と遊びたい!
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本日、20個目のホブゴブリンの群れを殲滅させた時、僕の脳内に機械的な女性の声が響いた。
「ユウタはレベルが60になりました。1000パラメータを与えます。各種ステータスに好きなように割り振りなさい」
おなじみのレベルアップを告げる声。
リンネの言った通りだ。
レベル60になった僕は各種ステータスに好きなようにパラメータを割り振ることが出来る。
ステ振りは良く考えてやれ。
それがリンネの教えだった。
治癒魔法使いだからMPに多く割くのが妥当だろう。
だが、攻撃力も強化しておきたい。
「う~ん」
悩む僕に、ガイアがこうアドバイスしてくれた。
「ユウタさん。MPと防御力に特化すべきです」
「何故です?」
「私達は治癒魔法を行使するだけに、モンスターからの敵愾心《ヘイト》を煽りがちです。盾役に守られ援護に回るのもパーティの一員としての在り方です。……が、盾役でも防ぎきれないほどのモンスターの群れと戦うこともあります。そんな時、自分の身は自分で守るしかないのです」
「なるほど」
レベルが90のガイアは、僕なんかより沢山の戦いを経験して来たのだろう。
その中で、何度もピンチに陥ったはずだ。
自分の身は自分で守る。
その言葉には実感がこもっていた。
「こんなもんでどうでしょうか?」
「よろしい」
ガイアは僕のステータスを見て、小さな顎を上下させた。
◇
その日だけで僕のレベルは70にまで達した。
自分でも驚きだ。
ガイアとパワーレベリングに励んだおかげだった。
だけど、もうクタクタだ。
HPと疲労は別物だ。
HPは治癒魔法で回復するが、疲労は休む、寝る、食事をしないと癒えない。(疲労が取れないと、レベル相応の実力を発揮出来ない)
ガイアは休むことを許さなかった。
もちろん、食事も抜きだ。
彼女はまるで何かにとりつかれたようにモンスターを見つけては先制攻撃を仕掛けて行った。
そのことを、遠く離れたネスコに報告をすると……
<すごいじゃないか、ユウタ>
「だけど、ガイアさんが厳しいんだ」
<耐えるんだ。ユウタ。早く強くなって魔王を倒さなければならない>
「ねー、ねー、ユウタ。ネスコ何て言ってた?」
フィナが布団の上で寝転がって、僕に訊ねて来る。
ここはフィナの家だ。
外はすっかり真っ暗で、ガイアは自分の掘立小屋に帰っていた。
セレスとウエンディはとっくに眠っていた。
「ガイアさんの言うとおりにしろって」
「やだ~! あんなやつの言う通りとか! もう、しんどい!」
フィナは布団の上で足をばたつかせた。
ワンピのスカートがめくりあがりそうになり、目のやり場に困る。
「仕方ないだろ」
「仕方なくない! 私達、いても居なくても一緒みたいな扱いだし」
フィナは自分が相手にされないことに腹を立てているのだろう。
確かにガイアはどこか冷たい。
そして、何か生き急いでる感じがする。
だけど、うんこ騒動で、フィナとのやり取りの時に見せた表情は柔らかだった。
あの時のあの表情が本当の彼女の表情で、彼女もそんな表情でいられることを望んでいるじゃないだろうか。
「フィナ」
「何?」
「確かにそうだな。よし。明日は皆でピクニックだ」
つづく
「ユウタはレベルが60になりました。1000パラメータを与えます。各種ステータスに好きなように割り振りなさい」
おなじみのレベルアップを告げる声。
リンネの言った通りだ。
レベル60になった僕は各種ステータスに好きなようにパラメータを割り振ることが出来る。
ステ振りは良く考えてやれ。
それがリンネの教えだった。
治癒魔法使いだからMPに多く割くのが妥当だろう。
だが、攻撃力も強化しておきたい。
「う~ん」
悩む僕に、ガイアがこうアドバイスしてくれた。
「ユウタさん。MPと防御力に特化すべきです」
「何故です?」
「私達は治癒魔法を行使するだけに、モンスターからの敵愾心《ヘイト》を煽りがちです。盾役に守られ援護に回るのもパーティの一員としての在り方です。……が、盾役でも防ぎきれないほどのモンスターの群れと戦うこともあります。そんな時、自分の身は自分で守るしかないのです」
「なるほど」
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その中で、何度もピンチに陥ったはずだ。
自分の身は自分で守る。
その言葉には実感がこもっていた。
「こんなもんでどうでしょうか?」
「よろしい」
ガイアは僕のステータスを見て、小さな顎を上下させた。
◇
その日だけで僕のレベルは70にまで達した。
自分でも驚きだ。
ガイアとパワーレベリングに励んだおかげだった。
だけど、もうクタクタだ。
HPと疲労は別物だ。
HPは治癒魔法で回復するが、疲労は休む、寝る、食事をしないと癒えない。(疲労が取れないと、レベル相応の実力を発揮出来ない)
ガイアは休むことを許さなかった。
もちろん、食事も抜きだ。
彼女はまるで何かにとりつかれたようにモンスターを見つけては先制攻撃を仕掛けて行った。
そのことを、遠く離れたネスコに報告をすると……
<すごいじゃないか、ユウタ>
「だけど、ガイアさんが厳しいんだ」
<耐えるんだ。ユウタ。早く強くなって魔王を倒さなければならない>
「ねー、ねー、ユウタ。ネスコ何て言ってた?」
フィナが布団の上で寝転がって、僕に訊ねて来る。
ここはフィナの家だ。
外はすっかり真っ暗で、ガイアは自分の掘立小屋に帰っていた。
セレスとウエンディはとっくに眠っていた。
「ガイアさんの言うとおりにしろって」
「やだ~! あんなやつの言う通りとか! もう、しんどい!」
フィナは布団の上で足をばたつかせた。
ワンピのスカートがめくりあがりそうになり、目のやり場に困る。
「仕方ないだろ」
「仕方なくない! 私達、いても居なくても一緒みたいな扱いだし」
フィナは自分が相手にされないことに腹を立てているのだろう。
確かにガイアはどこか冷たい。
そして、何か生き急いでる感じがする。
だけど、うんこ騒動で、フィナとのやり取りの時に見せた表情は柔らかだった。
あの時のあの表情が本当の彼女の表情で、彼女もそんな表情でいられることを望んでいるじゃないだろうか。
「フィナ」
「何?」
「確かにそうだな。よし。明日は皆でピクニックだ」
つづく
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