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第32話 ベータテスト版からプレイしてきた廃人プレイヤーは、ゲームの世界から抜け出せない!

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 和風のギルドホールは1階から5階まであり、全て地球アース関連のギルドが入居していた。
 そのギルドホールの最上階。
 その一室にガイアが敬っている大祖先とやらがいる。

「大祖先様」

 ガイアが障子の前で呼び掛ける。

「入れ」
「はい」

 しわがれた声を受けて、ガイアが障子を開ける。
 板敷の大広間の奥、一段上がったところに小柄な人影がある。
 ガイアの後に続く。
 近づくと、それが袈裟を着た白髭の老人だと分かる。

「大祖先様、リンネを連れてきました」
「ふむ」

 ガイアが膝まづいて私を紹介する。
 私は一礼した。

「そなたが守護者か」
「そうなんだろうな」

 私は口調を変えずに言った。
 失礼とかそういうのは、気にしないことにしている。
 暗殺者として声を覚えられたくない。
 長く喋って唇の動きを覚えられたくない。
 それでも、ガイアの前では緊張して丁寧語を使ってしまった。
 だが、この老人は笑顔だった。
 だから、ガイアの時ほどの緊張が無く、私はいつも通りだった。

地球アースのことは知っているかの?」
「ギルドの地球アースのことか? それとも、ガイアが戻りたがっている地球アースのことか?」
「ふむ。我が孫にそこまで聞いているか」

 大祖先はガイアの方を向いてそう言った。
 ガイアは小さく頷いた。

「同じ呼び方だと紛らわしい。ガイアが戻りたがっている地球アースのことを、今後は地球ちきゅうと呼ぼう」

 地球ちきゅう
 耳慣れない言葉だ。

「わしの名前は、ミヤナガ・タダオミ。この世界での名前はレゴラス」

 聞き慣れない響きの名前だ。
 地球ちきゅうでの名前か。
 (私は地球ちきゅうの存在もまだ半信半疑だ)
 この世界での名前と、地球ちきゅうでの名前と使い分けている意味が分からないが。

狙撃手スナイパー職業はじゃ」

 職業は狙撃手スナイパー
 様々な弓と矢を使いこなす職業。
 魔法が効かない敵でも遠隔攻撃で射止める、ここ一番で強い職業だった。
 それを表すように、老人の背後の壁には弓と矢が掛けられている。
 私は暗殺者だ。
 だから、優れた狙撃手スナイパーを尊敬している。
 私の眼差しから何か感じ取ったのか、老人は目を細めこう言った。

「わしは、ベータテスト版から、この世界で狙撃手スナイパーとして活躍しておった。魔法使いや戦士などのメインを選んだ友達からは、お前の職業選択は渋いと言われたが、わしは魔法にも頼らず力にも頼らないこの職業が好きなのじゃ」

 老人は昔を思い出すように話す。
 意味不明な単語は置いといて、楽しそうに話す老人を見た。
 顔が子供の様にほころんでいる。
 まるでこの世界を楽しんで来たかのようだ。
 私も暗殺者という職業を気に入っている。
 老人とは気が合いそうだ。

「だが、ある日、この世界に異変が起きた。わしが13歳の時。この世界で遊び始めて1年が経ったころじゃ」

 老人は顎髭に手を当てた。
 顔が険しくなっている。

つづく
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