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第13話 昔のギルドの仲間が泣きついて来たけど、もう遅い

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 ゴブリンの集団が曲がり角で僕を待ち伏せしていた。
 その数……50体はいる。
 だが、通路が狭いので、一度に襲い掛かって来れるのは5体ずつだろう。

「くっ!」

 そう思っていたが、ゴブリンは器用に壁や天井を伝って僕に襲い掛かって来る。
 正面、上、右、左方向から、それぞれいっぺんに5体ずつ襲い掛かって来た。
 正面の最初の5体を手槍で串刺しにして行く。
 その間に、上、右、左から、それぞれの手に得物を持ったゴブリンが襲い掛かる。

聖攻氣ホーリーアタック

 放置してたら覚えてた魔法。
 この魔法は詠唱時間が短い。
 僕は手槍で正面のゴブリンを相手しながら、唱えていたのだ。
 白い光のつぶてが、上、右、左のゴブリンを消し去る。



「やるじゃん! ユウタ。カッコいいよ!」

 フィナが柔らかい手の平を僕の肩に乗せて労ってくれた。

「あ、ありがと」
「流石に私が見込んだだけの男だけあるわ。初めて見た時からピンと来てたんだから」
「え?」

 面接のとき、フィナは居なかったはずだが……
 フィナは薄明りの中でも分かるくらいに、ブラウンの瞳をキラキラ輝かせている。

「さぁ、本陣に攻め込むぞ」

 ネスコが促す。



 ダンジョンの奥深くには、財宝や強力なアイテムが隠されているのが一般的だ。
 それを目指して人々は足を踏み入れる。
 一見、このクエストは簡単なゴブリン討伐だと思われた。
 実は、難易度が高く強力なアイテムが手に入るクエストだった。

 地下二階に足を踏み入れた。
 そこは、地下一階の様に通路が縦横無尽にめぐらされた迷宮とは違った。
 ワンフロア丸ごと大広間だった。
 大広間の真ん中には祭壇があった。
 その周りをゴブリンが囲んでいる。
 階段の脇に身を潜め、ネスコが僕らに言う。

「ゴブリンをすべて倒し、真ん中の祭壇にある『火竜の牙』これを手に入れればクエストは完了だ」
「火竜の牙……」
「『火竜の剣』の素材になるアイテムだ」

 ネスコが何故、その武器が欲しいのか訊きたかった。
 だが、今は説明は後と言わんばかりに、彼は前を向いた。

「ユウタ、行くぞ」
「待って」

 僕の脳内にリンネの声が響いた。

<ギルドがやばい……>
「僕にはどうすることも出来ない」

 僕と鉄騎同盟はもう関係ない。

<ユウタの力が必要だ>
「僕は役に立たないと言われてクビにされた」

 向こうでリンネの悩む顔が脳裏に浮かんだ。

<私は知っていた。ユウタが陰ながら私達を支えていたことを>
「……そっか」
<だけど、私は兄者に従うしかなかった>
「兄妹だからか?」
<……>

 リンネは兄であるタイチを慕っていた。
 
「行くぞ! ユウタ!」
「はい!」

 どちらにしても、もう遅い。
 僕リンネとの通信を切った。

つづく
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