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第35話 ヒロイン再び来る
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噴水広場では、村人達がガイアナ姫を出迎えるための準備をしていた。
デルマン男爵が従者を連れながら、村人達に声を掛ける。
「お前達、ガイアナ姫に粗相のないようにな!」
(遂に来るか……)
クルスはパン屋の店先に立ち、そう思った。
パルテノ村はラインハルホ王国の領土である。
領主である国王の娘が滞在するにあたり、様々な用意をする必要があった。
姫の護衛を勤める兵士達をもてなすため、宿屋のベッドは高級なものを用意した。
もてなしのための豪華な食事の用意は、村の女達が総出で行っている。
旅の吟遊詩人や大道芸人を呼び、夜の娯楽まで用意した。
通りには露店が立ち、さながら村は祭りの様な状態になっていた。
「デカいなあ……」
クルスは、パン屋の向かいにある立派な二階建ての四角い建物を見た。
ガイアナ姫の宿舎。
白いレンガで出来たそれは、まるで小さな城塞の様だ。
「わーい、わーい!」
デメルが村の小さな子供達と、走り回っている。
祭りの様な雰囲気が楽しくて仕方がないのだろう。
無邪気な子供はこれから何が起きるのか、まだ知らない。
「お見えになりました!」
村の入り口の見張り台にいるデルマンの部下が叫んだ。
「よぉし! 皆、出迎えろ!」
デルマンが村人を指揮する。
クルスは渋々それに付き従った。
「デルマン、村長、ご苦労だな」
白馬から降りたガイアナ姫は、膝まづく二人に声を掛けた。
「ははっ、姫が民を思いやる気持ちに比べたら、これくらいのこと……」
「いや、民あっての王国。面を上げい」
ガイアナ姫の凛とした声が周囲に響く。
「お兄ちゃん、お姫様、かっこいいねぇ~」
デメルが憧れの眼差しでガイアナ姫を見ている。
デメルの瞳には、白いブーツ、純白の鎧、白銀の髪をサラリとたらし、村人の前に立つガイアナ姫の姿があった。
クルスは思った。
(妹よ……。憧れるならアティナの様なお淑やかな女性にしてくれ……)
ガイアナ姫がクルスの前を通る。
ふと、クルスは視線を感じた。
クルスは目を伏せた。
噴水広場に作られた舞台の上にデルマンと村長が立っている。
デルマンが声を張り上げる。
ガイアナ姫が今回訪れた理由を説明し始めた。
「ガイアナ姫様達は、パルテノ村周辺に現れるモンスターのことを調査するために来て下さった。パルテノ村の平和を守るために力を割いて下さるのだ。お前達は姫様達を全力で支援するのだぞ!」
Aクラスのモンスターについては伏せられていた。
調査段階で、村人達の混乱を招きたくないせいだろう。
それでも、村人達はどよめいていた。
王家がわざわざ大公を派遣してまで調査するとは……
それだけモンスターの脅威が近づいているということを、皆、感じたのだろう。
そんな動揺をガイアナ姫は感じ取ったのか、壇上に立ち、凛とした声でこう告げた。
「我々が来たからには大丈夫だ。皆には安心して生活してもらう!」
(おおおっ……! かっこいい!)
先程のデメルみたいな憧れの眼差しで、クルスはガイアナ姫を見ていた。
「おおおお!」
「姫様ー!」
「ありがとうございます!」
大きな拍手が起きる。
ガイアナ姫は紫紺の瞳を村人達に向け、小さく頷くと壇上から下りた。
つづく
デルマン男爵が従者を連れながら、村人達に声を掛ける。
「お前達、ガイアナ姫に粗相のないようにな!」
(遂に来るか……)
クルスはパン屋の店先に立ち、そう思った。
パルテノ村はラインハルホ王国の領土である。
領主である国王の娘が滞在するにあたり、様々な用意をする必要があった。
姫の護衛を勤める兵士達をもてなすため、宿屋のベッドは高級なものを用意した。
もてなしのための豪華な食事の用意は、村の女達が総出で行っている。
旅の吟遊詩人や大道芸人を呼び、夜の娯楽まで用意した。
通りには露店が立ち、さながら村は祭りの様な状態になっていた。
「デカいなあ……」
クルスは、パン屋の向かいにある立派な二階建ての四角い建物を見た。
ガイアナ姫の宿舎。
白いレンガで出来たそれは、まるで小さな城塞の様だ。
「わーい、わーい!」
デメルが村の小さな子供達と、走り回っている。
祭りの様な雰囲気が楽しくて仕方がないのだろう。
無邪気な子供はこれから何が起きるのか、まだ知らない。
「お見えになりました!」
村の入り口の見張り台にいるデルマンの部下が叫んだ。
「よぉし! 皆、出迎えろ!」
デルマンが村人を指揮する。
クルスは渋々それに付き従った。
「デルマン、村長、ご苦労だな」
白馬から降りたガイアナ姫は、膝まづく二人に声を掛けた。
「ははっ、姫が民を思いやる気持ちに比べたら、これくらいのこと……」
「いや、民あっての王国。面を上げい」
ガイアナ姫の凛とした声が周囲に響く。
「お兄ちゃん、お姫様、かっこいいねぇ~」
デメルが憧れの眼差しでガイアナ姫を見ている。
デメルの瞳には、白いブーツ、純白の鎧、白銀の髪をサラリとたらし、村人の前に立つガイアナ姫の姿があった。
クルスは思った。
(妹よ……。憧れるならアティナの様なお淑やかな女性にしてくれ……)
ガイアナ姫がクルスの前を通る。
ふと、クルスは視線を感じた。
クルスは目を伏せた。
噴水広場に作られた舞台の上にデルマンと村長が立っている。
デルマンが声を張り上げる。
ガイアナ姫が今回訪れた理由を説明し始めた。
「ガイアナ姫様達は、パルテノ村周辺に現れるモンスターのことを調査するために来て下さった。パルテノ村の平和を守るために力を割いて下さるのだ。お前達は姫様達を全力で支援するのだぞ!」
Aクラスのモンスターについては伏せられていた。
調査段階で、村人達の混乱を招きたくないせいだろう。
それでも、村人達はどよめいていた。
王家がわざわざ大公を派遣してまで調査するとは……
それだけモンスターの脅威が近づいているということを、皆、感じたのだろう。
そんな動揺をガイアナ姫は感じ取ったのか、壇上に立ち、凛とした声でこう告げた。
「我々が来たからには大丈夫だ。皆には安心して生活してもらう!」
(おおおっ……! かっこいい!)
先程のデメルみたいな憧れの眼差しで、クルスはガイアナ姫を見ていた。
「おおおお!」
「姫様ー!」
「ありがとうございます!」
大きな拍手が起きる。
ガイアナ姫は紫紺の瞳を村人達に向け、小さく頷くと壇上から下りた。
つづく
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