上 下
17 / 75

第17話 チート級のスキルを駆使してみた

しおりを挟む
 村は静寂に包まれていた。

 驚きの余り、誰も言葉を発することが出来ない。

 天を仰いだまま、気を失っている熊の様な男。
 それを、あっさりと一撃で倒した細身の男。

 まさかのクルスが勝つなんて……

 誰もが目の前の光景を信じられなかった。

 ただ、一人を除いては……

「戦意喪失……か……。情けないぞ。クラークソン。これでは兵隊長の地位も危ういな……」

 小さな鼻から息をついたのはガイアナ姫。
 眉を八の字にし、呆れ顔だ。
 部下の不甲斐ない姿を、馬上から見下ろしていた。

「さすがだな。クルスよ。救世主候補だけのことはある」

 クルスを見るガイアナ姫の瞳は、心なしか潤んでいた。

 そう。
 このガイアナ姫だけは、この結果を予測出来た。
 彼女は口元をほころばせた。
 まるでクルスが噂通りの実力者だと--
 それを確信出来たことを、喜んでいるかの様だ。

 そして、クルス。
 彼はガイアナ姫のこの微笑みに、心の中で絶望した。

(クラークソン兵隊長を一撃で倒せば、ガイアナ姫が僕に恐れをなすかと思ったが……甘かったか!)

 クルスはクラークソンを一撃で倒すため、あるスキルを発動させた。
 
『先手斬り』

 それはクルスが、レベル20の時に会得したスキルだった。
 これは、その名の通り、

"必ず対戦相手よりも早く攻撃することが出来る"

 ただ、先手を取るというメリットを得られる代わりに、通常の攻撃力が落ちるというデメリットがある。
 身体を風の様に軽くし、素早い攻撃を叩きこむ。
 身体が軽くなった分、物理的な攻撃力が一時的に落ちるのだ。

 つまり、攻撃力を犠牲にし素早さを優先する、というスキルだ。

 だが、先手を取っただけではHPが600を超えるクラークソンを一撃で仕留めるのは難しい。

 そこでクルスは、多少のMPを消費してでも、もう一つのスキルを同時に発動させた。

『正拳柄』
 
 これは剣の柄を高速で相手に叩きこむスキルだ。

"ヒットすれば通常の2倍の攻撃力を得られる。場合によっては、相手を気絶させることも出来る。"

 このダブルスキルで立ち向かった。
 スキルの二重発動はクルスがレベル23の時、出来る様になった。 

 序盤のパルテノ村にいながら、これだけ強くなるのはゲームでは無理だ。
 ゲームではモンスターを一定数倒せば、ガイアナ姫が現れるからだ。
 その時のクルスのレベルはせいぜい5~10。
 今、レベル25のクルスは身に付けたスキルを駆使し、鮮やかにクラークソンを倒した。

(やはり決闘は避けられないのか……)

 その証拠に、ガイアナ姫は馬上からクルスにある物を投げて来た。

「使いなさい」

 ピンク色の唇から、凛とした声が発せられた。
 クルスの手には、魔法水が入った小瓶がある。

(なるほど、これを飲んでMPを全回復させろと言うことか……)

 ゲームと同じ展開……

 やはり運命は変えられないのか。

 だが、クルスには秘策があった。

つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ゲームのモブに転生したと思ったら、チートスキルガン積みのバグキャラに!? 最強の勇者? 最凶の魔王? こっちは最驚の裸族だ、道を開けろ

阿弥陀乃トンマージ
ファンタジー
 どこにでもいる平凡なサラリーマン「俺」は、長年勤めていたブラック企業をある日突然辞めた。  心は晴れやかだ。なんといってもその日は、昔から遊んでいる本格的ファンタジーRPGシリーズの新作、『レジェンドオブインフィニティ』の発売日であるからだ。  「俺」はゲームをプレイしようとするが、急に頭がふらついてゲーミングチェアから転げ落ちてしまう。目覚めた「俺」は驚く。自室の床ではなく、ゲームの世界の砂浜に倒れ込んでいたからである、全裸で。  「俺」のゲームの世界での快進撃が始まる……のだろうか⁉

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...