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第15話 魔王討伐の旅に出よう!
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「黒く長めの前髪、細く切れ長な目、小さな口、逆三角形の顔形。そして、細身の身体……噂どおりの特徴だな」
ガイアナ姫は、クルスの頭のてっぺんから爪先まで舐める様に見た。
クルスは馬上から向けられる射る様な視線に、背筋が凍った。
「お主、クルスだな!」
ガイアナ姫は断言した。
それに対し、クルスは……
「クルス!? 私はクルスではありません。しがない村人、ヒポポタマスでございます! すんません!」
と叫ぶと、ジャンピング土下座をかまし、その場を凌ごうとした。
「うぬっ!」
ガイアナ姫は眉根を寄せた。
そして、懐から羊皮紙を取り出した。
それをクルスに突き付けた。
「嘘を付くな! この似顔絵にそっくりだぞ!」
そこにはクルスの顔が描かれていた。
「さ、さぁ~他人の空似では? らんらんらん♪」
クルスはヘラヘラ笑いながら、踊り出した。
つまり、アホの振りをした。
「クルス。お前、何嘘付いてんだよ。姫様、こいつがクルスです!」
デルマンの息子のキッシーが、クルスを指差した。
周りの村人も、うんうんと頷く。
(くっ……このバカ! 余計なことをっ)
デルマンの見ていないところで、ボコボコにしてやろうと誓った。
もちろん、口止めはしっかりとする。
「クルスよ。何故、嘘を付いた?」
「いや……その……それは……」
ゲームではクルスの武勇を聴きつけたガイアナ姫が、パルテノ村を訪れる。
クルスはそれを避けようとしていた。
だが、運命は変えられなかった。
ゲームのシナリオ通り、クルスの前にガイアナ姫は現れた。
「恥ずかしかったのか? 人前に出るのが」
ガイアナ姫は目を細めた。
オタオタするクルスを微笑ましく思っている様だ。
これが貴族の余裕というものか。
「えっ、ええ……」
ガイアナ姫が勝手に出してくれた助け舟に、クルスはとりあえず乗った。
「良いぞ。良いぞ。最強のくせして恥ずかしがり屋。そのギャップ……嫌いではない。Sクラスのサイクロプスを鼻歌まじりに片手で倒し、それをパンの具材に詰め込んで売ると評判の男、クルスよ」
ガイアナ姫は白い頬を赤らめた。
ピンク色でぷっくりした唇。
その両端が小さく上がる。
「は、はぁ……」
一体、自分についてどういうデマが流れているのか……
クルスは頭が痛くなった。
「私はまどろっこしいのが嫌いだ。単刀直入に言おう。クルスよ。私と共に魔王討伐の旅に出よう!」
(うわぁ……。この人ゲームと同じセリフ言ってるよぉ……)
クルスの頭は更に痛くなった。
はい or いいえ
ゲームではこの誘いに対して、『はい』か『いいえ』の選択肢で応える。
「……すいません。僕、パン屋が忙しいので」
クルスは頭を掻きながら、ペコペコ頭を下げた。
「パン屋など、魔王を倒してからでも出来る。それこそ魔王討伐すれば、こんな辺鄙な田舎でなくラインハルホ城で大きな店を開くことも出来る」
眉根を寄せた。
ガイアナ姫は腕を組んでいる。
手綱を握らず馬上で背筋を伸ばしクルスを見下ろす。
「……すいません」
しかし、ガイアナ姫は一歩も引かなかった。
「分かった。では、私と決闘しよう。クルスよ。勝てば、お主のことは諦めよう。だが、私が勝てば、分かっているな?」
つづく
ガイアナ姫は、クルスの頭のてっぺんから爪先まで舐める様に見た。
クルスは馬上から向けられる射る様な視線に、背筋が凍った。
「お主、クルスだな!」
ガイアナ姫は断言した。
それに対し、クルスは……
「クルス!? 私はクルスではありません。しがない村人、ヒポポタマスでございます! すんません!」
と叫ぶと、ジャンピング土下座をかまし、その場を凌ごうとした。
「うぬっ!」
ガイアナ姫は眉根を寄せた。
そして、懐から羊皮紙を取り出した。
それをクルスに突き付けた。
「嘘を付くな! この似顔絵にそっくりだぞ!」
そこにはクルスの顔が描かれていた。
「さ、さぁ~他人の空似では? らんらんらん♪」
クルスはヘラヘラ笑いながら、踊り出した。
つまり、アホの振りをした。
「クルス。お前、何嘘付いてんだよ。姫様、こいつがクルスです!」
デルマンの息子のキッシーが、クルスを指差した。
周りの村人も、うんうんと頷く。
(くっ……このバカ! 余計なことをっ)
デルマンの見ていないところで、ボコボコにしてやろうと誓った。
もちろん、口止めはしっかりとする。
「クルスよ。何故、嘘を付いた?」
「いや……その……それは……」
ゲームではクルスの武勇を聴きつけたガイアナ姫が、パルテノ村を訪れる。
クルスはそれを避けようとしていた。
だが、運命は変えられなかった。
ゲームのシナリオ通り、クルスの前にガイアナ姫は現れた。
「恥ずかしかったのか? 人前に出るのが」
ガイアナ姫は目を細めた。
オタオタするクルスを微笑ましく思っている様だ。
これが貴族の余裕というものか。
「えっ、ええ……」
ガイアナ姫が勝手に出してくれた助け舟に、クルスはとりあえず乗った。
「良いぞ。良いぞ。最強のくせして恥ずかしがり屋。そのギャップ……嫌いではない。Sクラスのサイクロプスを鼻歌まじりに片手で倒し、それをパンの具材に詰め込んで売ると評判の男、クルスよ」
ガイアナ姫は白い頬を赤らめた。
ピンク色でぷっくりした唇。
その両端が小さく上がる。
「は、はぁ……」
一体、自分についてどういうデマが流れているのか……
クルスは頭が痛くなった。
「私はまどろっこしいのが嫌いだ。単刀直入に言おう。クルスよ。私と共に魔王討伐の旅に出よう!」
(うわぁ……。この人ゲームと同じセリフ言ってるよぉ……)
クルスの頭は更に痛くなった。
はい or いいえ
ゲームではこの誘いに対して、『はい』か『いいえ』の選択肢で応える。
「……すいません。僕、パン屋が忙しいので」
クルスは頭を掻きながら、ペコペコ頭を下げた。
「パン屋など、魔王を倒してからでも出来る。それこそ魔王討伐すれば、こんな辺鄙な田舎でなくラインハルホ城で大きな店を開くことも出来る」
眉根を寄せた。
ガイアナ姫は腕を組んでいる。
手綱を握らず馬上で背筋を伸ばしクルスを見下ろす。
「……すいません」
しかし、ガイアナ姫は一歩も引かなかった。
「分かった。では、私と決闘しよう。クルスよ。勝てば、お主のことは諦めよう。だが、私が勝てば、分かっているな?」
つづく
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