64 / 65
第1章
第64話 復讐の連鎖
しおりを挟む
(誰だ……お前は……?)
ムネタカは喋れないので心の中でそう思った。
ユメル侯爵を襲おうとした時、自分の名前を呼んだのは、確かにこの女の子だ。
しっかりと見たのは今が初めてだ。
美しい腰まである黒髪、真っ黒で大きな瞳、桜の様な唇。
小さな顔に、まだ少年の様な身体は少し丸みを帯びて来ている。
白いフリルの着いた薄青色のドレスは彼女に良く似合っていた。
(可愛い)
そう思った。
だが、自分には好きな人がいる。
……思わず場違いなことを考え、首を振るムネタカ。
この女の子が自分の名前を呼ばなければ、自分は立ち止まることはなかった。
こんな異世界で自分のことを知っている者がいる?
もしかして、目の前のこいつも、よくある転生者というわけか?
「ムネタカ……、私……」
その女の子は、忙しそうにムネタカの口にはめられた布を取った。
新鮮とは言えないが、空気が大量に口から吸い込めると、少しは生き返った気分だ。
「いて!」
生き返ると同時に、体中に痛みが走る。
ずっと拷問を受けていた身体は、傷だらけだった。
さっきは、マリメッコから鞭で沢山叩かれた。
「今、自由にしてあげる」
「誰だ、お前は……?」
「私はペル」
「……」
思い当たらない。
現世にそんな知り合いがいただろうか。
そう思っている間にも、ペルは一生懸命、ムネタカに付けられた枷を外している。
「……」
自由になったムネタカは自分の身体を見渡した。
そして、ペル、ローランを見る。
「お前……」
ムネタカはローランに声を掛けた。
「ああ! よく覚えていたな! 俺は、ペル様のために……お前を」
「ふん。知るか」
「何!?」
ムネタカは部屋の中を見渡した。
(さて、どこから逃げれるか。そして、やることは他にある)
ある意味、捕らわれてユメル侯爵の邸宅に入れたのは幸運だったと思った。
ムネタカにはある確信がある。
その確信がこの邸宅の中にある。
そうすれば、10年前の事件がユメル侯爵のせいだと証明できる。
「ムネタカとか言ったな、お前。何で、僕を殺さなかった?」
ローランは精一杯汗をかきながら、震えながら問いかける。
まるでペルにいいところを見せようとする様に。
だが、ムネタカは気にしていない様だ。
「おい、聞いているのか!?」
「ああ、聞いている」
「だったら……」
「俺は、お前の親父に殺されそうになったが生き延びた」
ムネタカの声が響く。
「え? そうなの、ムネタカ」
ペルが心配そうな顔でムネタカをじっと見る。
「ああ。だから、こうして復讐の機会が与えられた。ローランとか言ったな。お前は自分の親父が殺されたらどうする?」
ムネタカの問いに、ローランは即答した。
「殺すさ」
「だろう。だから、僕はお前にチャンスを与えるために殺さなかった。強くなったら俺を殺しに来い」
ムネタカは喋れないので心の中でそう思った。
ユメル侯爵を襲おうとした時、自分の名前を呼んだのは、確かにこの女の子だ。
しっかりと見たのは今が初めてだ。
美しい腰まである黒髪、真っ黒で大きな瞳、桜の様な唇。
小さな顔に、まだ少年の様な身体は少し丸みを帯びて来ている。
白いフリルの着いた薄青色のドレスは彼女に良く似合っていた。
(可愛い)
そう思った。
だが、自分には好きな人がいる。
……思わず場違いなことを考え、首を振るムネタカ。
この女の子が自分の名前を呼ばなければ、自分は立ち止まることはなかった。
こんな異世界で自分のことを知っている者がいる?
もしかして、目の前のこいつも、よくある転生者というわけか?
「ムネタカ……、私……」
その女の子は、忙しそうにムネタカの口にはめられた布を取った。
新鮮とは言えないが、空気が大量に口から吸い込めると、少しは生き返った気分だ。
「いて!」
生き返ると同時に、体中に痛みが走る。
ずっと拷問を受けていた身体は、傷だらけだった。
さっきは、マリメッコから鞭で沢山叩かれた。
「今、自由にしてあげる」
「誰だ、お前は……?」
「私はペル」
「……」
思い当たらない。
現世にそんな知り合いがいただろうか。
そう思っている間にも、ペルは一生懸命、ムネタカに付けられた枷を外している。
「……」
自由になったムネタカは自分の身体を見渡した。
そして、ペル、ローランを見る。
「お前……」
ムネタカはローランに声を掛けた。
「ああ! よく覚えていたな! 俺は、ペル様のために……お前を」
「ふん。知るか」
「何!?」
ムネタカは部屋の中を見渡した。
(さて、どこから逃げれるか。そして、やることは他にある)
ある意味、捕らわれてユメル侯爵の邸宅に入れたのは幸運だったと思った。
ムネタカにはある確信がある。
その確信がこの邸宅の中にある。
そうすれば、10年前の事件がユメル侯爵のせいだと証明できる。
「ムネタカとか言ったな、お前。何で、僕を殺さなかった?」
ローランは精一杯汗をかきながら、震えながら問いかける。
まるでペルにいいところを見せようとする様に。
だが、ムネタカは気にしていない様だ。
「おい、聞いているのか!?」
「ああ、聞いている」
「だったら……」
「俺は、お前の親父に殺されそうになったが生き延びた」
ムネタカの声が響く。
「え? そうなの、ムネタカ」
ペルが心配そうな顔でムネタカをじっと見る。
「ああ。だから、こうして復讐の機会が与えられた。ローランとか言ったな。お前は自分の親父が殺されたらどうする?」
ムネタカの問いに、ローランは即答した。
「殺すさ」
「だろう。だから、僕はお前にチャンスを与えるために殺さなかった。強くなったら俺を殺しに来い」
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~
十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる