59 / 65
第1章
第59話 囚われの身
しおりを挟む
「うっ……うう……」
(どこだ、ここは?)
ムネタカは目を覚ました。
身体の自由が効かない。
腕を動かそうとしても動かない。
それもそのはず、両腕は鎖でつながれていた。
足も動かない。
足も鎖でつながれている。
ムネタカは自分が立たされた状態で鎖につながれているのを把握した。
かなり頑丈らしく、思いっきり引っ張っても切れることは無さそうだ。
「捕まったか……」
ひとり呟く。
辺りを見回した。
石造りの壁。
真四角の部屋だ。
壁には何やら、斧、剣、鞭が立てかけられている。
火を起こした炉の中には、鉄の棒が差さっている。
何たる不覚。
しかも、こんな時のために命を絶つために持っていたレイピアは奪われてしまっている。
舌をかみ切って死のうにも、口には布切れをまかれていてそれも難しい。
(これから拷問が始まるのか……)
そう思うとぞっとした。
身体の自由が効かず、一方的にいたぶられる。
◆
「ね、あなた、私のこと好きなんでしょ?」
「え? いきなり何を言い出すんですか? ペル様」
応接室に案内されて入るなり、ペルはいきなりローランをじっと見た。
ローランの顔は真っ赤だった。
「あ、図星だ! その表情!」
「う、そ、そんなことは」
「だって、儀式の間、ずっと私のこと見てたもんね」
「……」
ペルはニコニコ笑った。
ローランは困り顔だった。
「では、そろそろ、僕は戻ります。父上が呼んでいるので……」
丸顔のローランは、ハンカチで汗を拭きながら退室しようとする。
「ね、私の言うこと聞いてくれたら、付き合って上げてもいいんだけどなあ~」
ペルは去って行くローランの背中に、甘ったるい声を掛けた。
「え?」
思わず立ち止まるローラン。
振り返ったその顔には、笑顔を我慢するような引きつった顔がある。
「ね、お願いがあるの」
ペルはローランの鼻先まで自分の顔を近づけた。
◆
(それにしても、ムネタカという名前、どこかで聴いたことがある……)
ユメル侯爵はそう思った。
そう思いだすと、誰だったかか記憶を探り始める。
だが、思い当たらない。
かなり昔の様な気がするが……
やられた方は覚えているが、やった方は覚えていない。
そんなものだ。
「どうした? ユメル殿」
オズモンド国王が問い掛ける。
「あ、いや、すいません」
一行はカドレア領行きが取りやめになり、一旦、ユメル領に引き返すことになった。
一行と言っても、ほとんどの護衛は殺され、ユメル侯爵は大きな損害を受けた。
ここはユメル侯爵の執務室。
オズモンド国王、セリシア王妃、ペルはユメル邸でしばらく滞在することになった。
あのムネタカとかいう、小僧からこれから訊き出さなければならないことが沢山ある。
ユメル侯爵はそう思った。
(どこだ、ここは?)
ムネタカは目を覚ました。
身体の自由が効かない。
腕を動かそうとしても動かない。
それもそのはず、両腕は鎖でつながれていた。
足も動かない。
足も鎖でつながれている。
ムネタカは自分が立たされた状態で鎖につながれているのを把握した。
かなり頑丈らしく、思いっきり引っ張っても切れることは無さそうだ。
「捕まったか……」
ひとり呟く。
辺りを見回した。
石造りの壁。
真四角の部屋だ。
壁には何やら、斧、剣、鞭が立てかけられている。
火を起こした炉の中には、鉄の棒が差さっている。
何たる不覚。
しかも、こんな時のために命を絶つために持っていたレイピアは奪われてしまっている。
舌をかみ切って死のうにも、口には布切れをまかれていてそれも難しい。
(これから拷問が始まるのか……)
そう思うとぞっとした。
身体の自由が効かず、一方的にいたぶられる。
◆
「ね、あなた、私のこと好きなんでしょ?」
「え? いきなり何を言い出すんですか? ペル様」
応接室に案内されて入るなり、ペルはいきなりローランをじっと見た。
ローランの顔は真っ赤だった。
「あ、図星だ! その表情!」
「う、そ、そんなことは」
「だって、儀式の間、ずっと私のこと見てたもんね」
「……」
ペルはニコニコ笑った。
ローランは困り顔だった。
「では、そろそろ、僕は戻ります。父上が呼んでいるので……」
丸顔のローランは、ハンカチで汗を拭きながら退室しようとする。
「ね、私の言うこと聞いてくれたら、付き合って上げてもいいんだけどなあ~」
ペルは去って行くローランの背中に、甘ったるい声を掛けた。
「え?」
思わず立ち止まるローラン。
振り返ったその顔には、笑顔を我慢するような引きつった顔がある。
「ね、お願いがあるの」
ペルはローランの鼻先まで自分の顔を近づけた。
◆
(それにしても、ムネタカという名前、どこかで聴いたことがある……)
ユメル侯爵はそう思った。
そう思いだすと、誰だったかか記憶を探り始める。
だが、思い当たらない。
かなり昔の様な気がするが……
やられた方は覚えているが、やった方は覚えていない。
そんなものだ。
「どうした? ユメル殿」
オズモンド国王が問い掛ける。
「あ、いや、すいません」
一行はカドレア領行きが取りやめになり、一旦、ユメル領に引き返すことになった。
一行と言っても、ほとんどの護衛は殺され、ユメル侯爵は大きな損害を受けた。
ここはユメル侯爵の執務室。
オズモンド国王、セリシア王妃、ペルはユメル邸でしばらく滞在することになった。
あのムネタカとかいう、小僧からこれから訊き出さなければならないことが沢山ある。
ユメル侯爵はそう思った。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。
それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。
これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。
更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。
ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。
しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い……
これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
女を肉便器にするのに飽きた男、若返って生意気な女達を落とす悦びを求める【R18】
m t
ファンタジー
どんなに良い女でも肉便器にするとオナホと変わらない。
その真実に気付いた俺は若返って、生意気な女達を食い散らす事にする
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる