上 下
110 / 136

第110話 サキュバス

しおりを挟む
ラージェがモンスターを使役しているのだろうか。
だとしたら、危険だ。
ハルトはラージェに視線を送る。
ラージェもこちらに気付いたようだ。

ラージェはニヤッとした笑みを浮かべる。

「ようこそ、勇者殿。わしはこの国の王であるマテリアライズドじゃ」
「ハルトです」
「ルミナスです」
「バルクです」
「フィリアと申します」

ハルト達は自己紹介をした。

「堅苦しい挨拶は抜きにしよう。王族会議で一度懇談した仲ではないか」

マテリアライズド王は言う。

「はい」

ハルトは答える。

「それにしても、突然、教皇を通して面会したいと救世主殿から話が来たのには驚いた」

嘘だ。
これは教皇の嘘だ。
ハルトたちを調査隊としてマテリアライズド王国に送り込むための嘘だ。

「いえ、困っている時はお互い様ですよ」

ハルトは笑顔で言う。

「そうか。では早速だが本題に入ろう。ハルト君、君は我々がモンスターと手を結び、世界征服を目指しているという噂を聞いたことはないかね?」

やはり、そういうことか。
ハルトは思った。
そして、向こうから隠すことなく、「その」話題を振って来たのは意外だった。
意図が分からない。
ハルトは思考する。

「はい。噂は聞きました」

ハルトは正直に答えた。

「そうか!ならば話は早い。モンスターは素晴らしいぞ。仲良くなればこれ程強い味方はおらん。全世界の王がモンスターと手を取れば平和が訪れようぞ」

マテリアライズド王が言った。

「……そうですね」

ハルトはそう言いながら、フィリアを見た。
フィリアは複雑そうな表情をしている。

「ところで、そちらの女性は?」

マテリアライズド王はフィリアを見て言った。
どうやら、王はハルトとバルク以外、王族会議で出会ったことを覚えていない様だ。

「彼女は私の従者です」
「ほう、そうか。美しい女性だ。どうだろう?我が国に来る気はないかな?」

マテリアライズド王は勧誘してきた。

「すみません。私達、冒険者なので」

ハルトは断った。
すると、ラージェの目が光った。

その目は明らかにフィリアを狙っている目だった。

こいつが黒幕か。
ハルトは確信した。
しかし、ここで下手に動くと、ラージェがフィリアに手を出すかもしれない。
ハルトは慎重に言葉を選ぶことにした。
まずは、ルミナスに話をさせるか。
ハルトはルミナスにアイコンタクトをする。
ルミナスは小さくうなずいた。
そして、ルミナスは口を開く。
ハルトはルミナスが何を言おうとしているのか分かった。
ルミナスは演技を始めた。

「妾はサキュバス・ルミナス=ルシファーという」

ルミナスは源氏名を名乗った。

「?」

マテリアライズド王が困り顔だ。
ルミナスは続ける。

「ああ、お主らが言うところのサキュバスじゃ。お主に頼みがあるのじゃ」
「ほぉ、どんなことでしょう?」
「実は最近、この国に邪悪な気配を感じてのう。この国を調べさせて貰っても良いか?」
「ふむ、構わんが」
「助かるのじゃ。して、そこのニキビ面、手伝ってほしいのじゃ」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...