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第88話 あざの理由

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中立国家『エミリオ』にて、王族会議を終えたハルトたちは、あてがわれた一室で休憩していた。

「ハルト。これから、どうなるんだろうね」

ソファに座っていたルミナスがハルトに話しかける。

「そうだね……。僕には分からないよ」
「でも、ハルトは救世主として認められたんだ。それは嬉しいことだね」

ルミナスの言葉。
それとは裏腹に彼女の顔は浮かない。

ハルトは左胸がまだヒリヒリしていた。

「ルミナス……。大丈夫かい?」

ハルトは心配になって聞く。

「うん……。ごめん……。やっぱりまだダメみたい」

ルミナスは力なく笑う。

「いいんだよ。無理しないで」
「ありがとう」

ルミナスの顔はどこか弱々しい。
いつものような元気さが感じられない。

「ハルトはすごいよね……。みんなから認められて、私なんてただのお飾りなんだもん」
「そんなことないよ! ルミナスがいてくれたから僕はここにいる。ルミナスがいたからここまで来れた。だから、自分を卑下するようなことを言わないで」

ハルトは真剣に言った。
ルミナスと出会わなければ、ハルトは今頃死んでいたかもしれない。
彼女のおかげでハルトは生きていくことが出来たのだ。

「ハルト……」
「それに、僕はまだ何も成し遂げていない。救世主だと言われても実感がないんだ」
「……そうなの?」
「うん。魔王を倒しただけじゃダメだと思う。世界を救うにはまだまだやるべきことがあるはずだ」

ハルトは、自分が救世主だと言われたとき、正直、困惑してしまった。

「みんなが幸せな世界を作らなきゃ。今みたいに、人間同士で争いが起きる」
「……そうね。争いのない平和な世の中にしなきゃいけないものね」
「そのためにも、まずはこの世界をもっとよくしていこうと思う」

ルミナスは少し元気を出した。

「私、ハルトが遠くに行ってしまうような気がして心配だった」
「え?」
「だって、本当の救世主になったんだもの」

ルミナスがハルトの手を握る。

「それにしてもハルト君。胸はまだ痛むかい?」

バルクがニヤリと問い掛ける。

「あ、ああ」

ハルトは左胸を見た。
大分あざが消えて来ている。

「それは良かった。フィリア、もっと強く噛んでもよかったかもね。消えないほどのキスを……」
「え!?」

ルミナスは驚愕した。

「ごめん、ルミナス、あのあざは、フィリアが……」

ハルトは顔を赤らめた。
そう。
あのあざは、咄嗟に機転を利かせたフィリアが付けたもの。
ハルトのあざを確認する振りをして、咄嗟に彼の胸に口をつけ、あざがつくほどキスをした。

「うふふふ」

蠱惑的に笑うフィリア。

「もう!ふぃりあ!」

ルミナスが叫ぶ。

「お、ルミナスちゃんが元気になった」

と、バルク。
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