パーティから追放されたのは神に選ばれし救世主だった。～チートスキルで元のパーティを見返し、全知全能の冒険者になってやる！～

第67話 戦いの序曲

ハルトの前には、黒いフードを被った者が立っている。
フードを深く被っていて顔は見えない。
しかし、ハルトは気付いた。
こいつは……
ハルトは剣を抜く。
同時に、ラフィーナも剣を抜き、ハルトの隣に立つ。
他の者達も戦闘態勢に入る。
すると、後ろから更に数十人の影が見えた。
どうやら、敵は複数いたようだ。
そして、先頭にいた黒いフードを被った者が口を開く。

「我はガーレット国王に従う者なり！　ガーレット国王の世直しに反対する者は誰であろうと殺さねばならぬ！」

やはりそうか。
そうハルトは思う。
ガーレット国王がハルトたちを殺しに来たのだ。

「お互いの国に、兵を送り合ったり、民を送り合ったりしているの。ま、お互いが持たない部分を人的、物的であったり補い合っている。もちろん送ったこちら側の人間を、ま、諜報員として動かしたって訳」

ラフィーナの言葉。
その言葉を逆に判断すると、ガーレット国王がラインハルホ王国に送った人間を諜報員として動かしているということになる。

そして、ハルトの予感。

当たる。

ガーレット国王は先手を取って来たのだ。
相手はガーレット王国の密約を結んだ者たち。
つまり魔王軍。
だが、あくまで目の前の彼らは魔王に操られているなど思いもしないだろう。
ただ、ガーレット国王に従うパーティ。

「エクスファイア！」

ガーレット王国の密約を組んだパーティの一人が魔法を唱える。
それは炎の上級魔法。
中級魔法であるベタファイアの上位互換であり、威力も高い。

「コールドアクエリアス！」

ラフィーナの手から氷のつぶてが飛び出す。
それは、魔法を唱えようとした男に当たる。
男は魔法を唱えることが出来ず、そのまま倒れた。
魔法には詠唱が必要だ。
しかし、それを行う暇を与えないラフィーナの魔法。
さすがは五大王族の一角。
その実力は本物だった。
ラフィーナは次々と襲ってくる魔法を避け、もしくは相殺していく。
そして、ルミナスの弓が飛び、ルミナスは弓の名手。
放たれた矢は正確に相手の急所を狙っている。
ルミナスは、矢を放ちながら精神統一を行い、弓に魔力
を込めていく。
そして、矢を放つ。
その一撃はまるで光のような速さで飛ぶ。
ハルトはその光景を見て、ルミナスがどれだけ弓に力を込めたのか分かる。
そして、矢は次々に命中する。
一人、また一人と倒れていく。
ハルトは、自分の出番が無いなと思った。
だが、そんな余裕はない。
敵は、ハルトたちの方にも向かって来ているからだ。