パーティから追放されたのは神に選ばれし救世主だった。～チートスキルで元のパーティを見返し、全知全能の冒険者になってやる！～

第57話 山田太郎

バルクは微笑む。
その瞳には涙が溢れているように見えた。
そして、彼は言った。
自分の想いを告白するかのように。
真っ直ぐな目で。
力強く。
そして、優しい声で。
バルクは言う。
はっきりとした口調で言う。

「君が転生者だとしたら、私と同じだ」

(え？)

そして、ハルトの手を握る。
その手はとても暖かかった。

バルクの言葉に驚くハルト。

（バルクさんも俺と同じ？ どういうことだ？）

ハルトは混乱して言葉が出なかった。
バルクは語る。
転生前のことを。

◆

バルクの前世の名前は、山田太郎という。
どこにでもいるような普通のサラリーマンだった。
毎日仕事に追われる日々。
そんな彼に転機が訪れたのは、彼が38歳の時だった。

「ゾディアック・アクス・オンライン」

そのゲームに触れた。
全世界を魅了したMMORPG。
山田太郎は寝食を忘れその世界にダイヴし没入した。
レベルを上げ、装備を整えた。
そして、世界最強と言われるパーティに入った。
仲間と共に冒険の旅を続けた。
しかし、ある日、パーティは解散となった。
理由はメンバーの結婚だった。
メンバー達は現実世界に戻り家庭を持つことになったのだ。
パーティは解散し、山田太郎はソロになった。
そして、再び、彼の人生に大きな変化が起きた。
ゲームの世界で、伝説のアイテムを見つけた。
それを使えば、何でも願いが叶う。
そして、彼は願った。

（異世界に行きたい）

それは無理難題だった。
ゲームの世界ですら不可能。
しかし、諦めきれなかった。
何度もトライし、何度も失敗した。
そして、遂に彼は奇跡を起こした。
それは偶然だった。
偶然、ネットで見つけた方法。
それはあるサイトのブログ記事だった。
そこにはこう書かれていた。

《神との対話》

それは神様と直接話せるというものだ。
最初は半信半疑だったが、試す価値はあった。
山田太郎は祈った。
そして、ついにコンタクトに成功した。
現れたのが、女神アマチカだった。
彼女は優しく語りかけてきた。
山田太郎は思った。
本当に異世界に連れて行ってくれるのかと。
すると、彼女の口から驚くべき事実を聞かされた。