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第39話 騎士団長登場

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みすぼらしい服を着ているフィリア姫。
用心しての変装だ。
だが、
実際に王族の顔を拝んだことがある庶民派ほとんどいない。
受付の男は、彼女がフィリア姫だと分からなかった。

船室に向かって階段を昇っている時、

「ややっ……バルク様、そしてフィリア姫。こんなところで何を……」

階段の踊り場に立つ、鉄の鎧にマントの男。
胸にはガーレット家の徽章が輝く。

「おお、バレたら仕方ない。エンジュ」

エンジュと呼ばれた男はバルクに会釈した。

「お久しぶりです。バルク様。追放されてからどうしているのかとずっと……」
「元気か?」
「はい」
「それはよかった」

エンジュとバルクは世間話をし始めた。
彼らは知り合いの様だ。
エンジュはフィリアの方にも目を向け、小さく頭を下げたりしている。

「それで、バルク様。どうしてこの船に?」
「ああ、実はな……」

バルクは事情を話す。

「なるほど、そういうことでしたか……。しかし通す訳には行きません」

エンジュは真顔になる。
ギョロ目で彫の深い顔だとハルトは思った。

「フィリア姫。王様が待っています。帰りましょう」
「嫌よ! 私はもう国に戻るつもりはないわ!」

フィリアが叫ぶ。

「私だって、あなたの命令を聞く筋合いは無いわ!」

フィリアは言い返す。

「そうですか……。では力づくで連れて帰るしかありませんね」
「やってみなさい」

フィリアは構えた。

「ちょっと、待った」

ハルトは割って入る。

「あなたは?」

エンジュはハルトを見る。

「僕はハルトと言います」

ハルトは答える。

「ほう、ハルト殿ですか。私は、ガーレット王国騎士団長のエンジュと申します。以後、お見知りおきを」
「ご丁寧にありがとうございます」

ハルトも挨拶をする。

「それで、ハルト殿はどちら側の人間なのですか?」

エンジュがハルトに問う。

「えっと、今はバルクさんの味方です」

ハルトは言う。

「そうですか……」

エンジュは少し考える。

「では、甲板に出てください。ハルトさん、そしてフィリア姫、二人で私と戦って勝てば自由にしてください」
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