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第29話 旅立ちの前に
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「ラインハルホ王国へ行こうと思う」
良く晴れた朝。
宿屋を後にしたバルクは唐突に言い出す。
「え?」
ラインハルホ王国へ行くと言ったのか?
「えっと……」
聞き間違いかと思ったが……。
「どうした? ハルト君」
首を傾げるバルク。
「いえ、急だなと思って」
「ははは。確かに。ただいつまでもダルムンクの街に留まるのは良くない。ここはガーレット王国の支配下。私とフィリアが見付かるのは時間の問題だ。だとするならば、ここを早く出てラインハルホ王国に行く」
「ラインハルホ王国はガーレット王国と同盟関係なの。今度の父上の暴走をまずラインハルホ国王に伝えるんです。そして力を貸してもらうべき」
フィリアも説明に加わる。
ハルトは頷いた。
バルクが満足そうに先頭に立つ。
「よし。出発しよう」
「はい」
バルク、ハルト、フィリアはダルムンクの街を出る。
街を出た直後。
「ハルト!」
と、呼び止められた。
振り返ると、そこには美しい少女が立っていた。
尖った耳がチャーミングだ。
「ルミナス……」
ルミナスは泣きそうな顔でこちらを見つめていた。
「……やっと会えた」
「久しぶりだね」
ハルトは優しく微笑む。
「何で?何で何も言わずにいなくなったの?」
「それは……」
「答えて!」
「ごめん」
「謝ってほしいんじゃない。私に一言あってもいいじゃない」
「……」
二人のやり取りをバルクがニコニコと見ている。
「ハルト君。彼女の気持ち分かってやんなさいよ」
まるで子供を諭す様にバルクが言う。
「はい?」
意味が分からないハルトは困惑気味。
「ルミナスちゃん。ちょっと、こっちに来ようか?」
と、言ってバルクはルミナスの手を引く。
そして、そのままどこかに連れて行ってしまった。
「え?」
何が起こったのか分からず、ハルトはポカンとする。
すると、しばらくして二人が戻って来た。
「もういいわ。ハルトなんか大っ嫌い!」
ルミナスが言う。
「あの……ルミナス」
「じゃあね」
ハルトの言葉を遮り、ルミナスは立ち去ろうとする。
「ははは。ハルト君。僕達はルミナスと旅をするよ。君とはここでお別れだ」
バルクが言う。
「は? え?」
「さようなら」
「ちょ、ちょっと!」
ハルトの声を無視して二人は去って行った。
「なんなんだよ!」
ハルトは叫ぶ。
「ハルトさん」
フィリアが戻って来てハルトに声をかける。
「もう。この色男。モテモテですね。ルミナスさんとどういう関係か知らないけど、ルミナスさんはハルトの事好きなんですよ。だから追い掛けて来た」
「え?」
「でも、私は知ってますから。ハルトさんの本命は誰なのか」
「そ、そんなことより!何なの!?」
フィリアの発言はスルーして、ハルトは声を上げる。
「何って言われても、見ての通りですよ」
フィリアは苦笑する。
「置き去りにされて、ルミナスさんお気持ちが少しわかったでしょ。ハルトさん」
良く晴れた朝。
宿屋を後にしたバルクは唐突に言い出す。
「え?」
ラインハルホ王国へ行くと言ったのか?
「えっと……」
聞き間違いかと思ったが……。
「どうした? ハルト君」
首を傾げるバルク。
「いえ、急だなと思って」
「ははは。確かに。ただいつまでもダルムンクの街に留まるのは良くない。ここはガーレット王国の支配下。私とフィリアが見付かるのは時間の問題だ。だとするならば、ここを早く出てラインハルホ王国に行く」
「ラインハルホ王国はガーレット王国と同盟関係なの。今度の父上の暴走をまずラインハルホ国王に伝えるんです。そして力を貸してもらうべき」
フィリアも説明に加わる。
ハルトは頷いた。
バルクが満足そうに先頭に立つ。
「よし。出発しよう」
「はい」
バルク、ハルト、フィリアはダルムンクの街を出る。
街を出た直後。
「ハルト!」
と、呼び止められた。
振り返ると、そこには美しい少女が立っていた。
尖った耳がチャーミングだ。
「ルミナス……」
ルミナスは泣きそうな顔でこちらを見つめていた。
「……やっと会えた」
「久しぶりだね」
ハルトは優しく微笑む。
「何で?何で何も言わずにいなくなったの?」
「それは……」
「答えて!」
「ごめん」
「謝ってほしいんじゃない。私に一言あってもいいじゃない」
「……」
二人のやり取りをバルクがニコニコと見ている。
「ハルト君。彼女の気持ち分かってやんなさいよ」
まるで子供を諭す様にバルクが言う。
「はい?」
意味が分からないハルトは困惑気味。
「ルミナスちゃん。ちょっと、こっちに来ようか?」
と、言ってバルクはルミナスの手を引く。
そして、そのままどこかに連れて行ってしまった。
「え?」
何が起こったのか分からず、ハルトはポカンとする。
すると、しばらくして二人が戻って来た。
「もういいわ。ハルトなんか大っ嫌い!」
ルミナスが言う。
「あの……ルミナス」
「じゃあね」
ハルトの言葉を遮り、ルミナスは立ち去ろうとする。
「ははは。ハルト君。僕達はルミナスと旅をするよ。君とはここでお別れだ」
バルクが言う。
「は? え?」
「さようなら」
「ちょ、ちょっと!」
ハルトの声を無視して二人は去って行った。
「なんなんだよ!」
ハルトは叫ぶ。
「ハルトさん」
フィリアが戻って来てハルトに声をかける。
「もう。この色男。モテモテですね。ルミナスさんとどういう関係か知らないけど、ルミナスさんはハルトの事好きなんですよ。だから追い掛けて来た」
「え?」
「でも、私は知ってますから。ハルトさんの本命は誰なのか」
「そ、そんなことより!何なの!?」
フィリアの発言はスルーして、ハルトは声を上げる。
「何って言われても、見ての通りですよ」
フィリアは苦笑する。
「置き去りにされて、ルミナスさんお気持ちが少しわかったでしょ。ハルトさん」
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