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第28話 パーティの目的
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「ジークフリート。どうしたんだお前。急にパーティの方針を変えるなんて。俺に相談も無く」
瘦身の剣士、ギルバルトが窓辺に立つパーティリーダーに問い掛ける。
「もう決めたことだ」
ジークフリートは振り向かずに答える。
「そうかい。なら、仕方ねえな」
ギルバルトは納得したように、自分の部屋に戻って行った。
「ギルバルトさん。良いんですか?」
メンバーの一人である魔導士、ラフィーナが不安げに問い掛ける。
黒いローブに赤い髪が印象的な美女だ。
「……って、やっぱ良くねえよなあ」
面長でしゃくれのひょうきん顔のギルバルトは両手を上げ、おどけて見せた。
ラフィーナには彼は頭が上がらない。
「なぁ、ジークフリート。俺達は今までうまくやって来ただろ?」
「それはお前だけが感じていることだ」
「おい、そりゃどういう意味だよ!」
「そのままの意味だ」
ジークフリートは冷淡に答えた。
ギルバルトは腹が立った。
「じゃあ、何でだ?理由を教えてくれよ」
「パーティの運営は借金をしていて赤字なんだよ」
「だからと言って、人間を殺すことはないだろう」
「うるさい。俺達が生き残るためには、これしかないんだ」
ジークフリートはギルバルトの言葉を遮り、そう言った。
「お前……本気で言っているのか?」
ギルバルトの表情は歪む。
怒りで。
「本気だ」
と、ジークフリートは無表情。
「いいか、ギルバルト。お前とは長い付き合いだから、この方針に賛成してくれたことが嬉しい。世界平和をかかげてパーティを立ち上げたが、理想だけでは食っていけない。今、パーティの運営は危機に瀕している」
ジークフリートは諭す様に言う。
「ガーレット家、ガーレット王国を俺は信じている。ガーレット国王こそ世界を平和に出来る。そのために俺はこの密約を受けた。他の国に犠牲が出るのは仕方がない。犠牲が無ければ真の平和は勝ち取れない。それが、俺がこの数年で学んだことだ」
ジークフリートは静かに語る。
この役目を果たせば、ガーレット王国から沢山の報酬がもらえる。
パーティの借金も返せる。
「ふざけんな!」
ギルバルトはジークフリートに掴みかかる。
「お前はルミナスの兄貴なんだぞ!なのに、何でそんなことができる!?」
「ルミナス?ああ、あいつとは縁を切った。関係ない」
ジークフリートの目に憂いが少し浮かぶ。
「お前は聖女の兄なんだぞ!」
「そうだ」
「だったら、妹を守るべきだろう!? 世界を平和にすべきだろう!?」
「……守るさ」
ジークフリートは顔を伏せる。
「お前のどこが守っているんだ!?」
ギルバルトは激高し、拳を振り上げる。
「待ってください。ギルバルトさん」
ラフィーナが声を上げる。
「リーダーは妹想いです」
彼女は冷静に口を開いた。
「この方針に巻き込まれる前に、ルミナスを自らの判断で脱退させた。嫌われ役を演じてまで」
「ラフィーナ。確かにその通りだ。だが、ハルトを追放したのは奴が本当に無能だからだ」
だが、ハルトの追放に怒りを覚えたルミナス。
彼女を人間殺しに巻き込みたくないため、ハルトの追放を利用したのはジークフリートだった。
瘦身の剣士、ギルバルトが窓辺に立つパーティリーダーに問い掛ける。
「もう決めたことだ」
ジークフリートは振り向かずに答える。
「そうかい。なら、仕方ねえな」
ギルバルトは納得したように、自分の部屋に戻って行った。
「ギルバルトさん。良いんですか?」
メンバーの一人である魔導士、ラフィーナが不安げに問い掛ける。
黒いローブに赤い髪が印象的な美女だ。
「……って、やっぱ良くねえよなあ」
面長でしゃくれのひょうきん顔のギルバルトは両手を上げ、おどけて見せた。
ラフィーナには彼は頭が上がらない。
「なぁ、ジークフリート。俺達は今までうまくやって来ただろ?」
「それはお前だけが感じていることだ」
「おい、そりゃどういう意味だよ!」
「そのままの意味だ」
ジークフリートは冷淡に答えた。
ギルバルトは腹が立った。
「じゃあ、何でだ?理由を教えてくれよ」
「パーティの運営は借金をしていて赤字なんだよ」
「だからと言って、人間を殺すことはないだろう」
「うるさい。俺達が生き残るためには、これしかないんだ」
ジークフリートはギルバルトの言葉を遮り、そう言った。
「お前……本気で言っているのか?」
ギルバルトの表情は歪む。
怒りで。
「本気だ」
と、ジークフリートは無表情。
「いいか、ギルバルト。お前とは長い付き合いだから、この方針に賛成してくれたことが嬉しい。世界平和をかかげてパーティを立ち上げたが、理想だけでは食っていけない。今、パーティの運営は危機に瀕している」
ジークフリートは諭す様に言う。
「ガーレット家、ガーレット王国を俺は信じている。ガーレット国王こそ世界を平和に出来る。そのために俺はこの密約を受けた。他の国に犠牲が出るのは仕方がない。犠牲が無ければ真の平和は勝ち取れない。それが、俺がこの数年で学んだことだ」
ジークフリートは静かに語る。
この役目を果たせば、ガーレット王国から沢山の報酬がもらえる。
パーティの借金も返せる。
「ふざけんな!」
ギルバルトはジークフリートに掴みかかる。
「お前はルミナスの兄貴なんだぞ!なのに、何でそんなことができる!?」
「ルミナス?ああ、あいつとは縁を切った。関係ない」
ジークフリートの目に憂いが少し浮かぶ。
「お前は聖女の兄なんだぞ!」
「そうだ」
「だったら、妹を守るべきだろう!? 世界を平和にすべきだろう!?」
「……守るさ」
ジークフリートは顔を伏せる。
「お前のどこが守っているんだ!?」
ギルバルトは激高し、拳を振り上げる。
「待ってください。ギルバルトさん」
ラフィーナが声を上げる。
「リーダーは妹想いです」
彼女は冷静に口を開いた。
「この方針に巻き込まれる前に、ルミナスを自らの判断で脱退させた。嫌われ役を演じてまで」
「ラフィーナ。確かにその通りだ。だが、ハルトを追放したのは奴が本当に無能だからだ」
だが、ハルトの追放に怒りを覚えたルミナス。
彼女を人間殺しに巻き込みたくないため、ハルトの追放を利用したのはジークフリートだった。
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