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雑用係と姫のリベンジ編
第99話 再現プレイ
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窓から差す朝日で、目が覚めた。
胸の辺りが重い。
「左巻き......」
僕は、僕の胸に頭を乗せ、すやすやと寝息を立てるジェニ姫のつむじを見て、そう呟いた。
僕と彼女が一緒に住むようになって一週間が経った。
彼女に強引に押し切られてこの生活を始める形になった。
今、こんなことになっている(一晩添い寝しただけだが)のも彼女が夜這い(この言葉は彼女の名誉のために今後は使わないでおこう)して来たからだ。
ジェニ姫が僕のことを好きなのは良く分かった。
それだけに、今も僕の心の中にマリナがいるのは申し訳ない気がした。
「ん......」
ジェニ姫が気だるそうに声を上げた。
「おはようございます」
僕の挨拶にジェニ姫は応えない。
その代わり、僕の胸に頬を押し当てたままサファイアブルーの瞳でじっと見つめてくる。
「二重顎」
何を言うかと思えば......
「そこから見ると、そうなります」
そして、僕はこう続ける。
「姫のつむじ、左巻きだ」
「うるさい」
ジェニ姫は形の良い頭を、僕の胸からひょいと上げた。
ベッドから床に足を着くと、ペタペタと歩き、食卓の椅子にこっちを向いてチョコンと座った。
「ここからのスタートもとうとう24回ね」
「はあ?」
何を言ってるんだこの人は?
僕は身体を起こした。
「ちょっと待って!」
ベッドから床に足を着こうとする僕を、ジェニ姫が右手の平で制す。
「右足から!」
「え?」
「ベッドから降りる時は右足から!」
「はっ、はい」
僕は右足を床に着けジェニ姫に向かい合う様に座った。
「ま、そこまで再現する必要はないけど、復讐を達成したかったら私の言う通り動いてね」
「......はぁ」
さっきから言っていることの、意味が分からない。
「あの......」
「何?」
「僕、混乱してます」
「ま、無理もないわね」
ジェニ姫はコホンと一つ咳払いすると、僕の目をじっと見据えた。
「あるべき未来を一緒に作りましょう」
「え?」
「私は未来から来たの」
「は?」
「信じ難い話かもしれないけど、こういうことなの」
ジェニ姫の話では、彼女は死ぬ度にこの日の朝に戻るらしいのだ。
「ゲームのセーブポイントと思ってくれたら分かり易いと思う」
その例えのお陰で、僕も何となく彼女の話が理解出来た。
でも、まだ半信半疑だった。
「10秒後に地震が来る」
「え?」
食卓の上の陶器製のカップが揺れだした。
「ほんとだ......」
「信じてくれる?」
「......魔法、使ったんじゃないですか?」
「このやり取りも何回目なんだろう。仕方ないんだろうけど、君はいつも真っさらになるんだよね」
ジェニ姫はため息をついた。
僕は彼女の目に哀しい色を見た。
「窓を見て」
「はい」
窓から丁度見える木。
その枝に巣を作っている鳥がいる。
「5個産むわ」
「え?」
鳥は巣にゆっくりと卵を産み始めた。
1、2、3、4......
僕はジェニ姫の方を向いた。
彼女は頷いた。
そして、5個目。
「おおっ!」
僕は驚いた。
「鷲に一個獲られる」
ジェニ姫の予言通り、鷲が飛んで来て巣から卵を一個盗んで行った。
「あ、助けなきゃ」
「ダメ!」
鋭い声でジェニ姫の声に、僕はビクリとなる。
「......再現、ですか?」
「うん。言ったでしょ。私はある程度先の未来について知識がある。だから、あるべき未来を作りだすために、今をなるべくいじりたくない。それだけなの」
つづく
胸の辺りが重い。
「左巻き......」
僕は、僕の胸に頭を乗せ、すやすやと寝息を立てるジェニ姫のつむじを見て、そう呟いた。
僕と彼女が一緒に住むようになって一週間が経った。
彼女に強引に押し切られてこの生活を始める形になった。
今、こんなことになっている(一晩添い寝しただけだが)のも彼女が夜這い(この言葉は彼女の名誉のために今後は使わないでおこう)して来たからだ。
ジェニ姫が僕のことを好きなのは良く分かった。
それだけに、今も僕の心の中にマリナがいるのは申し訳ない気がした。
「ん......」
ジェニ姫が気だるそうに声を上げた。
「おはようございます」
僕の挨拶にジェニ姫は応えない。
その代わり、僕の胸に頬を押し当てたままサファイアブルーの瞳でじっと見つめてくる。
「二重顎」
何を言うかと思えば......
「そこから見ると、そうなります」
そして、僕はこう続ける。
「姫のつむじ、左巻きだ」
「うるさい」
ジェニ姫は形の良い頭を、僕の胸からひょいと上げた。
ベッドから床に足を着くと、ペタペタと歩き、食卓の椅子にこっちを向いてチョコンと座った。
「ここからのスタートもとうとう24回ね」
「はあ?」
何を言ってるんだこの人は?
僕は身体を起こした。
「ちょっと待って!」
ベッドから床に足を着こうとする僕を、ジェニ姫が右手の平で制す。
「右足から!」
「え?」
「ベッドから降りる時は右足から!」
「はっ、はい」
僕は右足を床に着けジェニ姫に向かい合う様に座った。
「ま、そこまで再現する必要はないけど、復讐を達成したかったら私の言う通り動いてね」
「......はぁ」
さっきから言っていることの、意味が分からない。
「あの......」
「何?」
「僕、混乱してます」
「ま、無理もないわね」
ジェニ姫はコホンと一つ咳払いすると、僕の目をじっと見据えた。
「あるべき未来を一緒に作りましょう」
「え?」
「私は未来から来たの」
「は?」
「信じ難い話かもしれないけど、こういうことなの」
ジェニ姫の話では、彼女は死ぬ度にこの日の朝に戻るらしいのだ。
「ゲームのセーブポイントと思ってくれたら分かり易いと思う」
その例えのお陰で、僕も何となく彼女の話が理解出来た。
でも、まだ半信半疑だった。
「10秒後に地震が来る」
「え?」
食卓の上の陶器製のカップが揺れだした。
「ほんとだ......」
「信じてくれる?」
「......魔法、使ったんじゃないですか?」
「このやり取りも何回目なんだろう。仕方ないんだろうけど、君はいつも真っさらになるんだよね」
ジェニ姫はため息をついた。
僕は彼女の目に哀しい色を見た。
「窓を見て」
「はい」
窓から丁度見える木。
その枝に巣を作っている鳥がいる。
「5個産むわ」
「え?」
鳥は巣にゆっくりと卵を産み始めた。
1、2、3、4......
僕はジェニ姫の方を向いた。
彼女は頷いた。
そして、5個目。
「おおっ!」
僕は驚いた。
「鷲に一個獲られる」
ジェニ姫の予言通り、鷲が飛んで来て巣から卵を一個盗んで行った。
「あ、助けなきゃ」
「ダメ!」
鋭い声でジェニ姫の声に、僕はビクリとなる。
「......再現、ですか?」
「うん。言ったでしょ。私はある程度先の未来について知識がある。だから、あるべき未来を作りだすために、今をなるべくいじりたくない。それだけなの」
つづく
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