パーティから追放された雑用係、ガチャで『商才』に目覚め、金の力で『カンストメンバー』を雇って元パーティに復讐します!

yonechanish

文字の大きさ
上 下
95 / 112
賢者の人生編

第95話 now loading……③

しおりを挟む
 ジェス姫は私の教えを、真綿が水を吸う様にその頭と身体に染み込ませて行った。
 彼女の成長に比例して、私の彼女への思いも膨らんで行った。
 その頃の私は、ゲームもせず、人生に退屈も感じていなかった。
 いかにして、彼女と一緒に居られるか、そればかり考える様になっていた。

「演習じゃ。コヒード山の頂上にいるグリーンドラゴンを倒して来い」

 ディオ王がある日、私達に命じた。
 グリーンドラゴンは村を襲い国民をを連れ去ることで恐れられている怪物だ。
 ディオ王は、私とジェス姫の魔法の上達具合を判断するために、この怪物の討伐を命じたのだ。
 パーティ戦に慣れさせるという目的もあったため、私達には兵士の中から、肉弾戦が得意な戦士タイプと魔法も剣技も万能な勇者タイプのメンバーが付けられた。

 4人パーティでコヒード山を目指す。
 山に近づくにつれ、風が強くなる。
 まるでこちらが近づくのを拒んでいるかの様だ。
 重量のある戦士を風よけのため、先頭にする。
 皆、身体を前傾にし足を踏ん張って、飛ばされない様にして頂上を目指す。

 突如、突風の中から、鋭い風圧が生まれた。
 風が刃物の様に、戦士の身体を真一文字に切り裂いた。
 鋼鉄の鎧がパックリと割れる程の鋭さと威力だった。

「うわぁああ!」

 恐れをなした勇者がつまずきながら逃げ出そうとする。
 その無防備な背中に、再度、風の刃物が襲い掛かる。

「グリーンドラゴンか」

 まだ姿が見えない。
 どこから来る?
 私は身構えた。
 ジェス姫が倒れた二人に治癒魔法をかけている。

「姫、ここは私に任せてお逃げください。あなたも餌食になります」

 だが、ジェス姫はキッと私を睨みつけた。
 それは、今まで見せたことも無い憎しみを込めた視線だった。

「この者達から『生きたい』という意思を感じます! それを見捨てて逃げるなど治癒魔法使いの恥です!」

 その目に涙が浮かんでいた。
 私は、彼女の慈愛に触れたことで、彼女のことがますます好きになった。
 風が強くなる。
 ビリジアン色の羽を広げたグリーンドラゴンが、咆哮と共に姿を現した。
 目指すはジェス姫か。
 グリーンドラゴンの攻撃アルゴリズムは、パーティ内で攻撃の術を持た無い者を狙う様に設定されているのだろう。
 風を操る怪物に対抗するには……
 火は突風で消されるし、水も突風で吹き飛ばされる。
 更に強い風で対抗すべき、そう判断した私は、グリーンドラゴンが次の攻撃を発動するまでの時間と、私の詠唱が終わり魔法が発動されるまでの時間を比較した。
 『風力《ウインドウ》』で行く。
 そう決めた私は詠唱を始めた。
 だが、そんな私を嘲笑うかの様にグリーンドラゴンは急角度に変えた。

「こっちに来る!」

 突風の刃物が私の魔法の発動よりもコンマ数秒単位、早かった。
 私は、自分が死んだと思った。
 目の前で『超風力《エルウインドウ》』を喰らったグリーンドラゴンが真っ赤な内蔵をまき散らし粉々になっている。
 ジェス姫を守れて良かった。
 そう思い、安心して死ねると思った。
 だが、私は生きていた。
 HPは1といったところか……。

「間に合った」

 鈴の音の様な声が聞こえる。
 声の主はこちらに右手の平を広げ、直立していた。

「ジェス姫……」
「マリク……」

 私がグリーンドラゴンの攻撃を受けた瞬間に、ジェス姫が治癒魔法をかけてくれた。
 彼女は私の命の恩人だ。

「風のオーブだ」

 元気になった勇者と戦士が、グリーンドラゴンがドロップしたアイテムを手にして喜んでいた。

 城に戻ると、別の戦いで傷ついた兵士達で溢れかえっていた。
 治癒魔法使いが足りないらしく、普段見ない顔の魔法使いも多い。

「手伝って来ます」

 ジェス姫は休むことも無く、治療所へ向かった。
 私はディオ王への報告のため、彼女を見送った。
 今、思えばそれが間違い(私にとっての)の始まりだった。

つづく
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

処理中です...