パーティから追放された雑用係、ガチャで『商才』に目覚め、金の力で『カンストメンバー』を雇って元パーティに復讐します!

yonechanish

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武闘家の国編

第58話 ゲームはロストテクノロジー

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 ジェニ姫と僕は砂漠の中を歩いていた。
 北の国を目指していた。
 ラクダに乗ったジェニ姫。
 僕はそのラクダの手綱を手に、歩いている。

「......グランは今も私達を監視してるってこと?」
 
 ジェニ姫は眉根を寄せ、僕を見下ろす。

「うん」
「復讐されに来るのを待ってるってこと?」
「そうなります」
「何のために?」
「分かりません」

 暑い中、10kmも歩いてへとへとだ。

「はい。お水」

 ジェニ姫が手の平に乗せた水の球を僕に渡す。
 僕はそれを飲み干して、喉の渇きを癒す。

「貴重な水よ。この辺は大気が乾燥してて、水分子が少ないんだから」
「ありがとうございます」

 ツンケンしてるけど優しい。

 魔法学校で稼いだ金は、トールスにほとんど手渡した。
 復讐に参加したいと言う彼を説き伏せるのは苦労した。
 彼には、西の国の統治と魔法学校の運営を頑張って欲しい。
 それに、グランの考えが分からない以上、多くの人を巻き込みたくない。

「グランの奴、悪趣味ね。私達が右往左往してるところを、安全などこかから見て、ほくそ笑んでるって訳ね。まるで、私達をゲームかなんかのプレイヤー扱いしてるんだわ」
「ゲーム?」

 聞き慣れない単語だ。

「これ」

 ジェニ姫はまとっているローブの内ポケットから、横長の箱みたいな物を取り出した。
 箱の真ん中には、透明な四角いガラス(この例えが正しいのか分からない)に覆われていて、その右には十字架の様なボタン。
 左にはAとBと書かれた丸いボタンが二つ付いている。
 四角いガラスの下には、STARTと書かれた横長ボタンと、その隣にRESETと書かれた横長ボタンがある。
 更に、箱の右角にはRというボタンが、左角にはLというボタンが付いている。
 
「これがゲーム?」
「うん」
「はぁ......」

 ジェニ姫はSTARTボタンを押した。
 真ん中の透明ガラスに、『ゲーム』と赤い文字が浮かび上がる。

「おお!」

 軽快な音楽が砂漠に鳴り響く。
 ピコピコって感じ。
 全く聞き慣れない音で作られた音楽は、耳に心地良かった。

「主人公を操作して、こうやって冒険して仲間を集めて、魔王を倒すの」

 ジェニ姫は慣れた手つきで、十字架とA、Bボタンを使って、透明ガラスに映った人型(駒?)を操作する。

「今の僕達が、これ......ですか」
「ふふふ。何度でも遊べるの。自分の行動で敵の行動も変わるから、毎回違う冒険が楽しめるのよ。もう1000回は遊んだわ。でも一度もクリアー出来ない」

 ジェニ姫はこのゲームを子供の時、城で見つけたらしい。

「お父様の玉座の下に置いてあったの」

 それ以来、暇な時はこれで遊んでいた。

「でも、これどうやって動いてるんですか?」
「これ」

 ジェニ姫の手には銀色の箱が握られていた。

「電気」
「電気?」
「正確には雷の魔法」

 ゲームで遊ぶために子供の頃のジェニ姫は、知恵を絞った。
 それこそ、中身を分解してみたりもした。
 そして、ある日、電気でゲームが動くことが分かった。
 ジェニ姫は電気の元である雷の魔法の初歩を習得し、『携帯充電器《モバイル・バッテリー》』という魔法機器を開発。
 ゲームは今も携帯充電器《モバイル・バッテリー》で動いている。

「でも、凄いですね。こんな技術、今のこの世界にはないですよ」
「過去を遡ってもね」

 ジェニ姫はこのゲームという物のルーツを探るため、城にある文献を読み漁った。
 歴史書、百科事典、数学、工学、哲学、魔法学。
 だが、そのどのページにもゲームについて書かれていなかった。

「恐らく、この世界じゃない誰かがやって来て置いて行った物なのよ。でないと、この世界の歴史と技術じゃ、このゲームは作れない」

 僕はピコピコと音を出すゲームを覗き込んだ。
 主人公が敵と戦っている。

つづく
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