58 / 112
武闘家の国編
第58話 ゲームはロストテクノロジー
しおりを挟む
ジェニ姫と僕は砂漠の中を歩いていた。
北の国を目指していた。
ラクダに乗ったジェニ姫。
僕はそのラクダの手綱を手に、歩いている。
「......グランは今も私達を監視してるってこと?」
ジェニ姫は眉根を寄せ、僕を見下ろす。
「うん」
「復讐されに来るのを待ってるってこと?」
「そうなります」
「何のために?」
「分かりません」
暑い中、10kmも歩いてへとへとだ。
「はい。お水」
ジェニ姫が手の平に乗せた水の球を僕に渡す。
僕はそれを飲み干して、喉の渇きを癒す。
「貴重な水よ。この辺は大気が乾燥してて、水分子が少ないんだから」
「ありがとうございます」
ツンケンしてるけど優しい。
魔法学校で稼いだ金は、トールスにほとんど手渡した。
復讐に参加したいと言う彼を説き伏せるのは苦労した。
彼には、西の国の統治と魔法学校の運営を頑張って欲しい。
それに、グランの考えが分からない以上、多くの人を巻き込みたくない。
「グランの奴、悪趣味ね。私達が右往左往してるところを、安全などこかから見て、ほくそ笑んでるって訳ね。まるで、私達をゲームかなんかのプレイヤー扱いしてるんだわ」
「ゲーム?」
聞き慣れない単語だ。
「これ」
ジェニ姫はまとっているローブの内ポケットから、横長の箱みたいな物を取り出した。
箱の真ん中には、透明な四角いガラス(この例えが正しいのか分からない)に覆われていて、その右には十字架の様なボタン。
左にはAとBと書かれた丸いボタンが二つ付いている。
四角いガラスの下には、STARTと書かれた横長ボタンと、その隣にRESETと書かれた横長ボタンがある。
更に、箱の右角にはRというボタンが、左角にはLというボタンが付いている。
「これがゲーム?」
「うん」
「はぁ......」
ジェニ姫はSTARTボタンを押した。
真ん中の透明ガラスに、『ゲーム』と赤い文字が浮かび上がる。
「おお!」
軽快な音楽が砂漠に鳴り響く。
ピコピコって感じ。
全く聞き慣れない音で作られた音楽は、耳に心地良かった。
「主人公を操作して、こうやって冒険して仲間を集めて、魔王を倒すの」
ジェニ姫は慣れた手つきで、十字架とA、Bボタンを使って、透明ガラスに映った人型(駒?)を操作する。
「今の僕達が、これ......ですか」
「ふふふ。何度でも遊べるの。自分の行動で敵の行動も変わるから、毎回違う冒険が楽しめるのよ。もう1000回は遊んだわ。でも一度もクリアー出来ない」
ジェニ姫はこのゲームを子供の時、城で見つけたらしい。
「お父様の玉座の下に置いてあったの」
それ以来、暇な時はこれで遊んでいた。
「でも、これどうやって動いてるんですか?」
「これ」
ジェニ姫の手には銀色の箱が握られていた。
「電気」
「電気?」
「正確には雷の魔法」
ゲームで遊ぶために子供の頃のジェニ姫は、知恵を絞った。
それこそ、中身を分解してみたりもした。
そして、ある日、電気でゲームが動くことが分かった。
ジェニ姫は電気の元である雷の魔法の初歩を習得し、『携帯充電器《モバイル・バッテリー》』という魔法機器を開発。
ゲームは今も携帯充電器《モバイル・バッテリー》で動いている。
「でも、凄いですね。こんな技術、今のこの世界にはないですよ」
「過去を遡ってもね」
ジェニ姫はこのゲームという物のルーツを探るため、城にある文献を読み漁った。
歴史書、百科事典、数学、工学、哲学、魔法学。
だが、そのどのページにもゲームについて書かれていなかった。
「恐らく、この世界じゃない誰かがやって来て置いて行った物なのよ。でないと、この世界の歴史と技術じゃ、このゲームは作れない」
僕はピコピコと音を出すゲームを覗き込んだ。
主人公が敵と戦っている。
つづく
北の国を目指していた。
ラクダに乗ったジェニ姫。
僕はそのラクダの手綱を手に、歩いている。
「......グランは今も私達を監視してるってこと?」
ジェニ姫は眉根を寄せ、僕を見下ろす。
「うん」
「復讐されに来るのを待ってるってこと?」
「そうなります」
「何のために?」
「分かりません」
暑い中、10kmも歩いてへとへとだ。
「はい。お水」
ジェニ姫が手の平に乗せた水の球を僕に渡す。
僕はそれを飲み干して、喉の渇きを癒す。
「貴重な水よ。この辺は大気が乾燥してて、水分子が少ないんだから」
「ありがとうございます」
ツンケンしてるけど優しい。
魔法学校で稼いだ金は、トールスにほとんど手渡した。
復讐に参加したいと言う彼を説き伏せるのは苦労した。
彼には、西の国の統治と魔法学校の運営を頑張って欲しい。
それに、グランの考えが分からない以上、多くの人を巻き込みたくない。
「グランの奴、悪趣味ね。私達が右往左往してるところを、安全などこかから見て、ほくそ笑んでるって訳ね。まるで、私達をゲームかなんかのプレイヤー扱いしてるんだわ」
「ゲーム?」
聞き慣れない単語だ。
「これ」
ジェニ姫はまとっているローブの内ポケットから、横長の箱みたいな物を取り出した。
箱の真ん中には、透明な四角いガラス(この例えが正しいのか分からない)に覆われていて、その右には十字架の様なボタン。
左にはAとBと書かれた丸いボタンが二つ付いている。
四角いガラスの下には、STARTと書かれた横長ボタンと、その隣にRESETと書かれた横長ボタンがある。
更に、箱の右角にはRというボタンが、左角にはLというボタンが付いている。
「これがゲーム?」
「うん」
「はぁ......」
ジェニ姫はSTARTボタンを押した。
真ん中の透明ガラスに、『ゲーム』と赤い文字が浮かび上がる。
「おお!」
軽快な音楽が砂漠に鳴り響く。
ピコピコって感じ。
全く聞き慣れない音で作られた音楽は、耳に心地良かった。
「主人公を操作して、こうやって冒険して仲間を集めて、魔王を倒すの」
ジェニ姫は慣れた手つきで、十字架とA、Bボタンを使って、透明ガラスに映った人型(駒?)を操作する。
「今の僕達が、これ......ですか」
「ふふふ。何度でも遊べるの。自分の行動で敵の行動も変わるから、毎回違う冒険が楽しめるのよ。もう1000回は遊んだわ。でも一度もクリアー出来ない」
ジェニ姫はこのゲームを子供の時、城で見つけたらしい。
「お父様の玉座の下に置いてあったの」
それ以来、暇な時はこれで遊んでいた。
「でも、これどうやって動いてるんですか?」
「これ」
ジェニ姫の手には銀色の箱が握られていた。
「電気」
「電気?」
「正確には雷の魔法」
ゲームで遊ぶために子供の頃のジェニ姫は、知恵を絞った。
それこそ、中身を分解してみたりもした。
そして、ある日、電気でゲームが動くことが分かった。
ジェニ姫は電気の元である雷の魔法の初歩を習得し、『携帯充電器《モバイル・バッテリー》』という魔法機器を開発。
ゲームは今も携帯充電器《モバイル・バッテリー》で動いている。
「でも、凄いですね。こんな技術、今のこの世界にはないですよ」
「過去を遡ってもね」
ジェニ姫はこのゲームという物のルーツを探るため、城にある文献を読み漁った。
歴史書、百科事典、数学、工学、哲学、魔法学。
だが、そのどのページにもゲームについて書かれていなかった。
「恐らく、この世界じゃない誰かがやって来て置いて行った物なのよ。でないと、この世界の歴史と技術じゃ、このゲームは作れない」
僕はピコピコと音を出すゲームを覗き込んだ。
主人公が敵と戦っている。
つづく
0
お気に入りに追加
185
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる