53 / 112
魔法使いの国編
第53話 彼氏寝取られ女と婚約破棄され女の復讐
しおりを挟む
サオリは唱和した。
「降臨《サモン》」
魔法陣から光の柱が立ち昇る。
光の中から、似顔絵ソックリの一人の男が現れた。
「慶太君!」
チナツとサオリが揃って歓声を上げる。
「ほら、見てよ! 私って本番には強いんだから!」
サオリが胸を張る。
「おお? ここはどこだ? 俺、確か学校で……」
召喚されたケイタは、不思議そうに辺りを見渡してる。
「慶太君! 私よ! 千夏よ!」
チナツが満面の笑みで走り寄る。
「慶太、ここは異世界よ! 私がよく行きたいって言ってた!」
サオリがチナツを押しのける。
女にもてて羨ましいなあ。
僕はそう思った。
女二人に囲まれたケイタは困惑していたが、だんだん状況を把握出来たのか目の焦点が合って来た。
「沙織はいいとして、千夏……お前、死んだんじゃないの?」
「ええ。そこにいる女に突き飛ばされてトラックに引き潰されて死んだわ。だけど、この世界に転生したの。赤ん坊からスタートして今日までずっと、あなたのためにここで生きて来たわ」
「重いな……」
ケイタは顔をしかめた。
「千夏、よく聞きなさい。慶太は私と結婚するのよ。そして、私のお父様の会社を継ぐの。ねっ」
サオリはケイタの顔を覗き込んだ。
ケイタ、ここはよぉく考えて答えるんだ。
だけど、ケイタは悪びれも無くこう言った。
「ゴメン。千夏。俺、沙織のことが好きだから」
チナツは負けた。
悔しいのか、拳を握り締めたまま立ち尽くしている。
「ルビー様」
執事のトールスがルビーことチナツのことを心配している。
「……ってか、ここ熱くね。早く学校に戻りたいんだけど」
「大丈夫。私、召喚魔法使えるから、逆のことをすれば……。でも、私、慶太とならここでずっと一緒に住んでてもいいかな」
「こいつぅ!」
空気を読まない(否、読めない)バカップルがイチャつき出した。
今度ばかりは、さすがの僕も復讐する相手(この場合はチナツ)に同情した。
彼女は元々、この世界の住人ではない。
ここに転生しなければ、魔王討伐パーティにも入ることなく、僕に嫌がらせすることもなく、元の世界で幸せに暮らしていたんだ。
その幸せを壊したのは、この自分勝手女サオリじゃないか!
こいつこそが……
「金剛石飛翔《ダイヤモンド・スプラッシュ》!」
ジェニ姫!?
彼女の手から氷のつぶてが無数に放出される。
それがサオリとケイタに一直線で向かって行く。
「危なっ! 何すんのよ!」
間一髪、サオリとケイタは鋭い飛翔物を避けた。
よかった……。
でも、なぜジェニ姫が!?
そうか、彼女はグランから婚約破棄された身。
同じく、彼氏を寝取られたチナツにシンパシーを感じて、こんな行動を……?(いや、この場合はちょっと違うか……)
「ちょっと! ストップ!」
僕は声を荒げた。
サオリに死なれると困る。
僕は、彼女にこの後、試して欲しいことがあるんだ!
だけど、そんな思いも虚しく、サオリとケイタを氷のつぶてが襲う。
「グゥオゴオオオオ!」
突如ゴーレムが現れ、氷のつぶてを一身に受ける。
まるで、バカップルの盾になるかのように。
その後、続けざまに魔法陣から、モンスターが飛び出す。
子ケルベロスにゴーレム、キメラにミノタウロス。
トロルにドラゴン……
全て、サオリが手なずけた者達だ。
「さぁ、お前達、私とケイタに危害を加える者達を、全て殺ってしまいなさい!」
使役されたモンスター達は従順だった。
僕らに襲い掛かる。
つづく
「降臨《サモン》」
魔法陣から光の柱が立ち昇る。
光の中から、似顔絵ソックリの一人の男が現れた。
「慶太君!」
チナツとサオリが揃って歓声を上げる。
「ほら、見てよ! 私って本番には強いんだから!」
サオリが胸を張る。
「おお? ここはどこだ? 俺、確か学校で……」
召喚されたケイタは、不思議そうに辺りを見渡してる。
「慶太君! 私よ! 千夏よ!」
チナツが満面の笑みで走り寄る。
「慶太、ここは異世界よ! 私がよく行きたいって言ってた!」
サオリがチナツを押しのける。
女にもてて羨ましいなあ。
僕はそう思った。
女二人に囲まれたケイタは困惑していたが、だんだん状況を把握出来たのか目の焦点が合って来た。
「沙織はいいとして、千夏……お前、死んだんじゃないの?」
「ええ。そこにいる女に突き飛ばされてトラックに引き潰されて死んだわ。だけど、この世界に転生したの。赤ん坊からスタートして今日までずっと、あなたのためにここで生きて来たわ」
「重いな……」
ケイタは顔をしかめた。
「千夏、よく聞きなさい。慶太は私と結婚するのよ。そして、私のお父様の会社を継ぐの。ねっ」
サオリはケイタの顔を覗き込んだ。
ケイタ、ここはよぉく考えて答えるんだ。
だけど、ケイタは悪びれも無くこう言った。
「ゴメン。千夏。俺、沙織のことが好きだから」
チナツは負けた。
悔しいのか、拳を握り締めたまま立ち尽くしている。
「ルビー様」
執事のトールスがルビーことチナツのことを心配している。
「……ってか、ここ熱くね。早く学校に戻りたいんだけど」
「大丈夫。私、召喚魔法使えるから、逆のことをすれば……。でも、私、慶太とならここでずっと一緒に住んでてもいいかな」
「こいつぅ!」
空気を読まない(否、読めない)バカップルがイチャつき出した。
今度ばかりは、さすがの僕も復讐する相手(この場合はチナツ)に同情した。
彼女は元々、この世界の住人ではない。
ここに転生しなければ、魔王討伐パーティにも入ることなく、僕に嫌がらせすることもなく、元の世界で幸せに暮らしていたんだ。
その幸せを壊したのは、この自分勝手女サオリじゃないか!
こいつこそが……
「金剛石飛翔《ダイヤモンド・スプラッシュ》!」
ジェニ姫!?
彼女の手から氷のつぶてが無数に放出される。
それがサオリとケイタに一直線で向かって行く。
「危なっ! 何すんのよ!」
間一髪、サオリとケイタは鋭い飛翔物を避けた。
よかった……。
でも、なぜジェニ姫が!?
そうか、彼女はグランから婚約破棄された身。
同じく、彼氏を寝取られたチナツにシンパシーを感じて、こんな行動を……?(いや、この場合はちょっと違うか……)
「ちょっと! ストップ!」
僕は声を荒げた。
サオリに死なれると困る。
僕は、彼女にこの後、試して欲しいことがあるんだ!
だけど、そんな思いも虚しく、サオリとケイタを氷のつぶてが襲う。
「グゥオゴオオオオ!」
突如ゴーレムが現れ、氷のつぶてを一身に受ける。
まるで、バカップルの盾になるかのように。
その後、続けざまに魔法陣から、モンスターが飛び出す。
子ケルベロスにゴーレム、キメラにミノタウロス。
トロルにドラゴン……
全て、サオリが手なずけた者達だ。
「さぁ、お前達、私とケイタに危害を加える者達を、全て殺ってしまいなさい!」
使役されたモンスター達は従順だった。
僕らに襲い掛かる。
つづく
0
お気に入りに追加
185
あなたにおすすめの小説
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー
すもも太郎
ファンタジー
この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)
主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)
しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。
命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥
※1話1500文字くらいで書いております
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる