悪役令嬢は最強になりたい

咲良

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第1章 原作が始まる数年前

ヒロインさん、改めてこんにちは!

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「お姉様!」
「げふっ!」
私は意識を取り戻してすぐにセターレに抱きつかれた。ぐ、ぐるしい。でも、久しぶりだから嬉しいなあ。
「セ、セターレ、泣かなくて大丈夫よ。」
「で、でもううっ、お姉様は一週間も寝てたんですよ!」
えええっ!?
アレック数日って言ってたよね!?
一週間も寝てたからいつも真顔のサナが涙目になってるのか…
「じゃあセターレ、私が寝る前に任せておいた女の子は!?」
「ううっ。サナの分身によると今起きたようです。」
サナの分身、すごい役に立ってるわね。本当にサナは手放したくない。
それより、ヒロインのところへ行かなくては!
「よし!じゃあ女の子のところへ行くわよ!」
「お姉様、ヒック、危ないです。」
「大丈夫!うわっ!」
私は尻餅をついた。痛い。
「ずっと歩いてないからです。お嬢様。後であの子の方から来てもらいましょう。」
「う、うん」
私はサナの力を借りてベッドの上に寝転がった。
「お姉様、次どこかに行こうとしたら僕泣きますよ!」
もう泣いてるじゃん。
ずっと椅子に座りながらじっと見られてるの、慣れないな。
「お嬢様、連れてきました。」
さすがサナ。仕事が早い。
「…」
部屋の中に入ってきたのは、私と同い年のはずなのに、小柄で可愛い女の子だった。
「こんにちは、」
「…」
なんかセターレに一番最初に会った時に似てる。
「お姉様に挨拶してください。」
ちょ、弟よ、天使を睨んじゃダメよ。あ、泣き止んだのね。
ヒロインさんは口をパクパク動かした。
「もしかして、喋れないの?」
ヒロインさんは高速で何回も頷いた。
「文字は書ける?」
あれ、俯いちゃった。
「書けないの?」
ヒロインさんは涙目になってしまった。
どうしよう。
「字は習いたい?」
よかった。ヒロインさんの顔が明るくなってる。
じゃあ字の先生をつけるか。
「お父様とお母様に相談しなくちゃ。」
私がぶつぶつ呟いてると、ヒロインさんは細かく震えていた。
「大丈夫?」
私が手を伸ばそうとすると、彼女は一歩下がった。
あ!そうだった!確か小説の中でヒロインローザは孤児院長の娘にずっとお母様とお父様にいいつけてやるわ!って言われてたんだっけ。この文章読んだ時も許せないって思ったけれどトラウマを残すほどとは… 
本当に最低。
とりあえずヒロインさんを安心させなくちゃ。
「大丈夫よ。私のお母様とお父様はとても優しいから。あなたのために部屋と服、食事を用意してくれると思うわ。あなたが出ていきたいと思うまで、ここに住んでていいからね。」
私はなるべく優しく伝えた。はずなのに、天使のようなヒロインは涙を流していた。
「だ、大丈夫?おいで。」
私が手をもう一度伸ばすと、ローザは私の手を握ってくれた。
よかった。心を開いてくれたみたい。
涙を流しているヒロインは、少し微笑んでいた。悲しい涙じゃないみたい。
こういう場面で感動するはずなんだけど、後ろで嫉妬心丸出しにしている弟がいるので私とサナは全く感動できない。
とりあえず、ヒロインさんを救出できたから私はもう平和に生きていければいいんだけど。まあまだあと6年あるんだし、平和でしょ。と、思った私は馬鹿だった。
数ヶ月後、私は歩けるようになり、ローザは字を習う許可をもらい、彼女の名前がローザだと判明した頃、
「やっときたか。」
私の兄、アステル公子に会う日だ。なんだかんだでほっといてたからね。転生して数ヶ月、私の生存確率は(多分)上がっている。でも後はこの小説に出てくる男たちだけ。その一人、アステル公子。本当はそんなに強くないが暴君と呼ばれる存在。いつも私の可愛い天使のような弟をいじめた酷いやつ。だから何倍もの威力でやり返すわ!
「ふふ。」
「姉上、笑い方が怖いです。」
そりゃあそうよ。私は復讐する気まんまんなんだから。
[ローザ様、何か企んでますね?]
もう怯えなくなり、私やセターレと文字を通して会話できるようになったローゼは、今じゃこんなふうに私が考えてることを見通すことがなぜかできる。
「え!なんでわかったの!?」
[お見通しです。]
「お姉様、何を企んでるんですか?」
二人の顔がだんだん近づいてくる。
「まさかお兄様からの手紙が原因ですか?」
「あなたもどうしてわかったの?」
「お姉様の弟だからです。」
[しかし私は血が繋がっていませんがローゼ様の考えていることがわかりますよ?]
「とりあえず、何企んでるんですか。」
あ、セターレ、話をそらしたわね。
「今日何故かお兄様から挑戦状的なものが来たのよ。俺と魔法の勝負をしろって書いてある。」
絶対に言えない。あなたのための復讐よ!なんて。
「え!危ないですよ!」
ローゼも首がもげそうなくらい首を縦に振ってる。
「大丈夫よ。ローゼを止められるくらいの魔力があるんだから。」
今じゃもっと魔力もあるし強いんだけどね。
「ダメです!」
「いいえ、私は行くわ。二人とも、そんな顔しないで。戦場に行くわけじゃないんだから。」
二人は今半泣き状態。絶対に泣かせちゃだめだ。
「セターレ、ローゼ、私のかっこいいところみたいでしょ?」
二人は同時にゆっくりと頷いた。
「じゃあ私は絶対勝つから、私が勝つ瞬間を見ててくれる?」
二人はまた頷いた。
「よし!じゃあ決まり!サナ!」
「はい、お嬢様。」
「アステル公子に受けて立つわって返事送っといて!」
「かしこまりました。」
サナはまたシュバっと消えた。
もう忍者だね。侍女より。

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