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もう少しだけ
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お墓参りの翌朝、目が覚めてスマホを見てあまりの驚きに一瞬で目が覚めた。送り主は、高校時代の青春を捧げた女の子だった。
『久しぶり。覚えてる?』
久しぶりの連絡の内容はそれだけだった。僕は少し時間を置いて返信をした。
『覚えてるよ。元気だった?』
高校の三年間、付き合っていたとは思えないほどシンプルな返事をしてしまったが、別れてからもう九年という月日が経っていることもあり、納得のいく返信ではないかと思った。スマホから手を離し、洗面所へ向かおうとした時、着信音が鳴った。
「もしもし、俺だよ俺~」
オレオレ詐欺から電話がかかってくるような歳ではないと思い込んでいたが、僕の寿命が二十七歳ならもうお爺さんと呼ばれても仕方がない。そんなことを考えてしまった。しかし僕にはまだ子供はいないはずだが。そんなくだらないことを考えていたら、電話の主、半田は言葉を続けた。
「お前が高校の時付き合ってた幸に病気のこと伝えといたから」
「えっ」
「後悔すんなよ?じゃーな!」
言い返す暇もないまま半田は電話を切ってしまった。僕は呆然と立ち尽くした。今朝の彼女からのメッセージの意味が分かってスッキリした反面、緊張で心の中はモヤモヤしていた。半田同様、長いこと会っていなかった彼女に何を伝えるべきかははっきりしないままだった。
悩んでいるとまた電話が鳴った。電話の主は、やはり彼女だった。
「もしもし、省吾?突然ごめんね。」
彼女の声は相変わらずだった。おっとりとしていて優しい声。久しぶりに聴いたその声に、僕は高校の時のような新鮮な気持ちを再び体感した。
「大丈夫だよ。まだ連絡先持っててくれたんだね。」
「うん。省吾もね。」
僕の女々しさを追求されたようで、笑ってしまった。彼女は僕がなぜ笑っているか分からず電話の先で戸惑っていたが「元気そうでよかった」と笑ってくれた。
「会いたい」
しばらくお互いのし状況を伝え合ったのち、僕から切り出した。僕にしては大胆な行動に出たなと、余命の力はすごいなと実感した。彼女は意外にも隣の県に住んでいたらしく、翌日に会えることになった。
「じゃあまた明日」
「うん、またね」
そう言って電話を切った。
翌朝、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。きっと、僕の命に期限なんてついていなかったら、彼女にまた男としてみてもらうための準備をしていたと思う。しかし今回の準備は彼女にお別れを言う準備だ。彼女に会える喜びと、悲しみが同時に襲ってきた。
ゆっくり準備をしていたが、いつの間にか約束の時間の三十分前になっていた。
「やばいっ」
悲しんでる場合ではなく、急いでいかなければならなくなってしまった。集合場所は僕の最寄りの駅から二つ離れた所で、もしかしたら遅刻してしまうかもしれない。それは男としてはどうかと思うが、ほぼ走るように歩くと、スマホが鳴った。
『ごめん!ちょっと遅れる!』
彼女からだった。僕も遅刻しそうだったので安心した。
『ごめん、僕も遅刻しそうだったんだ。』
そう返信して、早歩きをやめた。ほっとして歩いていると、昔のことを思い出した。
僕たちの出会いは、高校一年生の時の入学式だった。僕は朝が弱く、寝坊して学校まで走っていると後ろからものすごいスピードで走ってくる足音が聞こえ、次の瞬間風のように過ぎ去った。と、思うと立ち止まり振り返って僕が来るのを待っていた。
僕は僕を待っていると気付かず過ぎ去ろうとしたが、彼女に呼び止められた。
「君、新入生だよね?」
僕が頷くと、焦っていて怖かった彼女の顔が急に笑顔になり、その笑顔に僕は一瞬で心を射抜かれた。
「良かった!新入生ってどこに行くか知ってる?」
彼女が僕を追い抜くようなものすごいスピードで行先も分からず走っていたのが面白くて、つい笑ってしまった。そんな僕を見て、彼女がキョトンとした顔をしたのだが、その顔にもときめいた。
そして、実は僕も行き先が分からなかった。配られたプリントをよく見ずに、とりあえず行こうとだいぶ適当な準備で来て、遅刻しそうという考えがぐるぐる回るだけで場所のことまで考えてなかった。
『進学そうそう遅刻か?(笑)』
半田からメッセージがはいり、僕は急いで電話した。それから、教室集合だと知り僕らは行き先をわかった上で走り出した。運良く彼女とは同じクラスで、仲良くなるのに時間はかからなかった。
そんな出会いを経て、僕と彼女は夏休み前に付き合い始めた。お互い似てるところが沢山あり、一緒にいてただ楽しかった。僕は時間にルーズで、デートの待ち合わせ時間に間に合うことがほとんどなかった。しかしそんな時は彼女も遅刻をしてきて、お互いがお互いを咎めることはなかった。
会う度に遅刻してごめんて謝っては、笑ったな。そう思うと遠い昔のようで、でも確かにあった記憶が僕の目をうるませた。
そんな、電車に乗る前のホーム。
僕は突然の耐え難い頭痛に、意識を失った。
『久しぶり。覚えてる?』
久しぶりの連絡の内容はそれだけだった。僕は少し時間を置いて返信をした。
『覚えてるよ。元気だった?』
高校の三年間、付き合っていたとは思えないほどシンプルな返事をしてしまったが、別れてからもう九年という月日が経っていることもあり、納得のいく返信ではないかと思った。スマホから手を離し、洗面所へ向かおうとした時、着信音が鳴った。
「もしもし、俺だよ俺~」
オレオレ詐欺から電話がかかってくるような歳ではないと思い込んでいたが、僕の寿命が二十七歳ならもうお爺さんと呼ばれても仕方がない。そんなことを考えてしまった。しかし僕にはまだ子供はいないはずだが。そんなくだらないことを考えていたら、電話の主、半田は言葉を続けた。
「お前が高校の時付き合ってた幸に病気のこと伝えといたから」
「えっ」
「後悔すんなよ?じゃーな!」
言い返す暇もないまま半田は電話を切ってしまった。僕は呆然と立ち尽くした。今朝の彼女からのメッセージの意味が分かってスッキリした反面、緊張で心の中はモヤモヤしていた。半田同様、長いこと会っていなかった彼女に何を伝えるべきかははっきりしないままだった。
悩んでいるとまた電話が鳴った。電話の主は、やはり彼女だった。
「もしもし、省吾?突然ごめんね。」
彼女の声は相変わらずだった。おっとりとしていて優しい声。久しぶりに聴いたその声に、僕は高校の時のような新鮮な気持ちを再び体感した。
「大丈夫だよ。まだ連絡先持っててくれたんだね。」
「うん。省吾もね。」
僕の女々しさを追求されたようで、笑ってしまった。彼女は僕がなぜ笑っているか分からず電話の先で戸惑っていたが「元気そうでよかった」と笑ってくれた。
「会いたい」
しばらくお互いのし状況を伝え合ったのち、僕から切り出した。僕にしては大胆な行動に出たなと、余命の力はすごいなと実感した。彼女は意外にも隣の県に住んでいたらしく、翌日に会えることになった。
「じゃあまた明日」
「うん、またね」
そう言って電話を切った。
翌朝、目覚ましが鳴る前に目が覚めた。きっと、僕の命に期限なんてついていなかったら、彼女にまた男としてみてもらうための準備をしていたと思う。しかし今回の準備は彼女にお別れを言う準備だ。彼女に会える喜びと、悲しみが同時に襲ってきた。
ゆっくり準備をしていたが、いつの間にか約束の時間の三十分前になっていた。
「やばいっ」
悲しんでる場合ではなく、急いでいかなければならなくなってしまった。集合場所は僕の最寄りの駅から二つ離れた所で、もしかしたら遅刻してしまうかもしれない。それは男としてはどうかと思うが、ほぼ走るように歩くと、スマホが鳴った。
『ごめん!ちょっと遅れる!』
彼女からだった。僕も遅刻しそうだったので安心した。
『ごめん、僕も遅刻しそうだったんだ。』
そう返信して、早歩きをやめた。ほっとして歩いていると、昔のことを思い出した。
僕たちの出会いは、高校一年生の時の入学式だった。僕は朝が弱く、寝坊して学校まで走っていると後ろからものすごいスピードで走ってくる足音が聞こえ、次の瞬間風のように過ぎ去った。と、思うと立ち止まり振り返って僕が来るのを待っていた。
僕は僕を待っていると気付かず過ぎ去ろうとしたが、彼女に呼び止められた。
「君、新入生だよね?」
僕が頷くと、焦っていて怖かった彼女の顔が急に笑顔になり、その笑顔に僕は一瞬で心を射抜かれた。
「良かった!新入生ってどこに行くか知ってる?」
彼女が僕を追い抜くようなものすごいスピードで行先も分からず走っていたのが面白くて、つい笑ってしまった。そんな僕を見て、彼女がキョトンとした顔をしたのだが、その顔にもときめいた。
そして、実は僕も行き先が分からなかった。配られたプリントをよく見ずに、とりあえず行こうとだいぶ適当な準備で来て、遅刻しそうという考えがぐるぐる回るだけで場所のことまで考えてなかった。
『進学そうそう遅刻か?(笑)』
半田からメッセージがはいり、僕は急いで電話した。それから、教室集合だと知り僕らは行き先をわかった上で走り出した。運良く彼女とは同じクラスで、仲良くなるのに時間はかからなかった。
そんな出会いを経て、僕と彼女は夏休み前に付き合い始めた。お互い似てるところが沢山あり、一緒にいてただ楽しかった。僕は時間にルーズで、デートの待ち合わせ時間に間に合うことがほとんどなかった。しかしそんな時は彼女も遅刻をしてきて、お互いがお互いを咎めることはなかった。
会う度に遅刻してごめんて謝っては、笑ったな。そう思うと遠い昔のようで、でも確かにあった記憶が僕の目をうるませた。
そんな、電車に乗る前のホーム。
僕は突然の耐え難い頭痛に、意識を失った。
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