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転職!?
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それからしばらくの間、屋敷での生活が続いた。皇帝から処分が下されるまで、「外出禁止令」が発せられたからだ。これじゃあただの引きこもりニート生活の豪華版じゃん。トホホ。
ただ、ひとつ。今までと違うのは、1人じゃないということだ。以前の引きこもりの時はカップラーメンのゴミの山がいくつもある狭い部屋に1人きりだったが、今は違う。ソーナとアロンゾとミョージャがいる。
今、バレンシア家には一時的に当主がいない状態なので、便宜上はソーナを臨時当主とした。もっとも、事務的な仕事は内緒で俺がやっており、出かける用事のある仕事の時だけはソーナに頼んだ。最初は不慣れでビクビクしていたが、今では「臨時当主」の地位が様になっている。
アロンゾには、魔法や剣術や勉強など、俺が今までギルバート帝国学院で学んだことを教えている。もちろん、「アクアミスリル」は皇帝に返上するため、剣庫に閉まってある。そのため、アロンゾとの修練において用いたことはない。それに、アロンゾは剣術科ではなく、魔法科に行きたいらしい。我が家が騎士にはなれなくなったので当然といえば当然だが、学ぶ意欲があることは素晴らしい。
ミョージャとは、時期を見て婚約したいと思っている。「時期を見て」というのは俺の処遇が決まって、色々なことが落ち着いてきたら、という意味だ。これはまだミョージャと具体的に話し合っているわけではないが、楽しみだ。
俺はアロンゾとミョージャと遊ぶ時間や、ミョージャと2人きりの時間が大好きだ。まあ、ミョージャが大好きなのである。
シュミートは騎士団への入団が決まった。ブルーナも騎士団への入団が決まった。驚くべきことに、同じ騎士団だった。宮殿を直接警護したり、有事の際には闘う、エリート騎士団である。やはり、あの過酷な「決闘」や「魔物サバイバル」を生き抜いただけのことはある。それらが評価されてのことに違いない。まあ、少しだけ羨ましいが、仕方のないことだ。
ある時、宮殿に呼び出された。ついに、俺の「処分」が決まったようだ。いつものようにカバジ・ジャコフに案内され、俺は例の部屋に向かった。
「パオロ・バレンシア君。君にはここを離れてもらおう。首都半径10キロメートル圏に魔膜を張る。これで君には首都圏には入れない」
「あの…。職業は」
「ああ、何でもよい。ただし『騎士』にはもうなれない。わかるね?」
「はい…」
「よし」
ギルバート15世は立ち上がり、俺が持っているアクアミスリルを受け取りにきた。逆らいたい気持ちはやまやまだが、やむを得ない。素直に差し出す。
「これが、アクアミスリル」
ギルバート15世は噛み締めるように言った。その瞬間だった。宮殿の何処かで大きな、それも連続した爆発音が鳴り響いた。
ただ、ひとつ。今までと違うのは、1人じゃないということだ。以前の引きこもりの時はカップラーメンのゴミの山がいくつもある狭い部屋に1人きりだったが、今は違う。ソーナとアロンゾとミョージャがいる。
今、バレンシア家には一時的に当主がいない状態なので、便宜上はソーナを臨時当主とした。もっとも、事務的な仕事は内緒で俺がやっており、出かける用事のある仕事の時だけはソーナに頼んだ。最初は不慣れでビクビクしていたが、今では「臨時当主」の地位が様になっている。
アロンゾには、魔法や剣術や勉強など、俺が今までギルバート帝国学院で学んだことを教えている。もちろん、「アクアミスリル」は皇帝に返上するため、剣庫に閉まってある。そのため、アロンゾとの修練において用いたことはない。それに、アロンゾは剣術科ではなく、魔法科に行きたいらしい。我が家が騎士にはなれなくなったので当然といえば当然だが、学ぶ意欲があることは素晴らしい。
ミョージャとは、時期を見て婚約したいと思っている。「時期を見て」というのは俺の処遇が決まって、色々なことが落ち着いてきたら、という意味だ。これはまだミョージャと具体的に話し合っているわけではないが、楽しみだ。
俺はアロンゾとミョージャと遊ぶ時間や、ミョージャと2人きりの時間が大好きだ。まあ、ミョージャが大好きなのである。
シュミートは騎士団への入団が決まった。ブルーナも騎士団への入団が決まった。驚くべきことに、同じ騎士団だった。宮殿を直接警護したり、有事の際には闘う、エリート騎士団である。やはり、あの過酷な「決闘」や「魔物サバイバル」を生き抜いただけのことはある。それらが評価されてのことに違いない。まあ、少しだけ羨ましいが、仕方のないことだ。
ある時、宮殿に呼び出された。ついに、俺の「処分」が決まったようだ。いつものようにカバジ・ジャコフに案内され、俺は例の部屋に向かった。
「パオロ・バレンシア君。君にはここを離れてもらおう。首都半径10キロメートル圏に魔膜を張る。これで君には首都圏には入れない」
「あの…。職業は」
「ああ、何でもよい。ただし『騎士』にはもうなれない。わかるね?」
「はい…」
「よし」
ギルバート15世は立ち上がり、俺が持っているアクアミスリルを受け取りにきた。逆らいたい気持ちはやまやまだが、やむを得ない。素直に差し出す。
「これが、アクアミスリル」
ギルバート15世は噛み締めるように言った。その瞬間だった。宮殿の何処かで大きな、それも連続した爆発音が鳴り響いた。
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