異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン

文字の大きさ
上 下
27 / 77

本家VS分家、決着。

しおりを挟む
 遂に、これから頂上決戦が始まろうとしている。ルイスは相変わらず、人に自分をどう魅せるかを気にする。初戦敗退のモブキャラのトリマキを引き連れて、ゆったりと決闘場に再び、姿を現した。そして婚約者であるドーニャの元へ立ち寄り、そっと彼女の手を取った。そして言った。


「我が愛しのドーニャ。必ずやこの試合において、貴女に勝利を捧げます」



 キザというか、ここまでいくと気持ち悪いな。ところが、当のドーニャは、難しい顔をしていた。もちろん、そんな表情も抜群に美しいが。


「わたくし、人が亡くなるのは見たくありませんわ」


 ドーニャは目を逸らした。どういうことなんだろう。


「何を仰いますか、愛しのドーニャ。これは正義の為の戦いなのです」


 そう言って今度はドーニャの反応を確かめることなく、トリマキを残し、フィールドに向かった。
 俺の前に立つと、ルイスは目の色を変えた。キヤサーを殺した時の、あの狂気の目だ。


「これは決闘などという生易しいものではない」


「ああ。わかっている。ただ、どうしてお前はそこまで俺を憎むんだ。たかだか分家の人間ではないか」


「フッフッフ。これから死ぬ人間に教える必要はない」


 ダメだ。話にならない。まあいい。こんな奴をまともに相手にするだけ時間の無駄というものだ。
 そうこうしているうちに、いざ決戦の火蓋が切られた。観衆は盛り上がっている。それもそうだ。バルドナード本家と分家の嫡子同士の対決で、さらにはイケメン同士の対決が、決勝戦なのだから。
 マルイの合図と同時に、ルイスは剣を構えた。今までの試合を通してこんなに早い段階での仕掛けは初めてだ。



「エアロブラスト!」



 うわっマジか。いきなりかよ。剣から物凄い勢いで風が出て、ボケーっとしていた俺は、キンカーのように、吹っ飛ばされ、壁に体を打ちつけた。
 しかし、あら不思議。全然痛くも何ともない。さすがは俺。さすがはパオロ・バレンシア。この物語の主人公だ。
 待てよ、まだ倒れたまま、起きないでおこう。ルイスの驚く顔が見てみたい。奴は今、大きな声で高笑いをしている。馬鹿みたいに。こいつの鼻を明かした上で、ぶっ殺してやる。



「やあやあ、何か面白い出来事でもありましたかな、ルイス・バルドナード様」


「な、なんだと?」



 絵に描いたように驚くルイス。滑稽だ。



「覚醒ジェットストリーム!」



「あちょ、まっ」


 ルイスの次の「エアロブラスト」を待たずして、俺はルイスの元へと光の速さで飛んでいき、ルイスの心臓をぶち抜いた。決闘場からは、歓声と悲鳴の入り混じった、異様な叫び声が各所から飛び交った。広い決闘場は、物々しい雰囲気を醸していた。
 ルイスの相手としてパオロという主人公は、いくらなんでも強すぎた。

 ルイスは血をどくどく垂らしながら倒れた。俺は、ドーニャの顔を見ることができなかった。ドーニャに対して、申し訳ない感情しか湧かなかなったからだ。

 しかしながら、悲しみの涙を溢す者は、マルイ含め、内部の人間達の中には、1人たりとも見当たらなかった。後でわかったことだが、ルイスはキヤサー殺人以外にも数々の悪事を犯し、その度にバルドナード家の威光を振りかざしては事件を揉み消してきた経緯があり、さらにはほとんどの人間はそのことを知っていたらしい。そのため、ルイス含めバルドナード家の評判は見る見る下降線を辿っていた最中だったみたいだ。まあ、だからなんだという話だが。
 結局、最後の最後まで、ルイスが俺をあそこまで強く憎んでいた理由はわからずじまいに終わってしまった。

 俺は、目的を達成した。達成したはずなのに、何故だか複雑な気分だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

処理中です...