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本家VS分家、決着。
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遂に、これから頂上決戦が始まろうとしている。ルイスは相変わらず、人に自分をどう魅せるかを気にする。初戦敗退のモブキャラのトリマキを引き連れて、ゆったりと決闘場に再び、姿を現した。そして婚約者であるドーニャの元へ立ち寄り、そっと彼女の手を取った。そして言った。
「我が愛しのドーニャ。必ずやこの試合において、貴女に勝利を捧げます」
キザというか、ここまでいくと気持ち悪いな。ところが、当のドーニャは、難しい顔をしていた。もちろん、そんな表情も抜群に美しいが。
「わたくし、人が亡くなるのは見たくありませんわ」
ドーニャは目を逸らした。どういうことなんだろう。
「何を仰いますか、愛しのドーニャ。これは正義の為の戦いなのです」
そう言って今度はドーニャの反応を確かめることなく、トリマキを残し、フィールドに向かった。
俺の前に立つと、ルイスは目の色を変えた。キヤサーを殺した時の、あの狂気の目だ。
「これは決闘などという生易しいものではない」
「ああ。わかっている。ただ、どうしてお前はそこまで俺を憎むんだ。たかだか分家の人間ではないか」
「フッフッフ。これから死ぬ人間に教える必要はない」
ダメだ。話にならない。まあいい。こんな奴をまともに相手にするだけ時間の無駄というものだ。
そうこうしているうちに、いざ決戦の火蓋が切られた。観衆は盛り上がっている。それもそうだ。バルドナード本家と分家の嫡子同士の対決で、さらにはイケメン同士の対決が、決勝戦なのだから。
マルイの合図と同時に、ルイスは剣を構えた。今までの試合を通してこんなに早い段階での仕掛けは初めてだ。
「エアロブラスト!」
うわっマジか。いきなりかよ。剣から物凄い勢いで風が出て、ボケーっとしていた俺は、キンカーのように、吹っ飛ばされ、壁に体を打ちつけた。
しかし、あら不思議。全然痛くも何ともない。さすがは俺。さすがはパオロ・バレンシア。この物語の主人公だ。
待てよ、まだ倒れたまま、起きないでおこう。ルイスの驚く顔が見てみたい。奴は今、大きな声で高笑いをしている。馬鹿みたいに。こいつの鼻を明かした上で、ぶっ殺してやる。
「やあやあ、何か面白い出来事でもありましたかな、ルイス・バルドナード様」
「な、なんだと?」
絵に描いたように驚くルイス。滑稽だ。
「覚醒ジェットストリーム!」
「あちょ、まっ」
ルイスの次の「エアロブラスト」を待たずして、俺はルイスの元へと光の速さで飛んでいき、ルイスの心臓をぶち抜いた。決闘場からは、歓声と悲鳴の入り混じった、異様な叫び声が各所から飛び交った。広い決闘場は、物々しい雰囲気を醸していた。
ルイスの相手としてパオロという主人公は、いくらなんでも強すぎた。
ルイスは血をどくどく垂らしながら倒れた。俺は、ドーニャの顔を見ることができなかった。ドーニャに対して、申し訳ない感情しか湧かなかなったからだ。
しかしながら、悲しみの涙を溢す者は、マルイ含め、内部の人間達の中には、1人たりとも見当たらなかった。後でわかったことだが、ルイスはキヤサー殺人以外にも数々の悪事を犯し、その度にバルドナード家の威光を振りかざしては事件を揉み消してきた経緯があり、さらにはほとんどの人間はそのことを知っていたらしい。そのため、ルイス含めバルドナード家の評判は見る見る下降線を辿っていた最中だったみたいだ。まあ、だからなんだという話だが。
結局、最後の最後まで、ルイスが俺をあそこまで強く憎んでいた理由はわからずじまいに終わってしまった。
俺は、目的を達成した。達成したはずなのに、何故だか複雑な気分だった。
「我が愛しのドーニャ。必ずやこの試合において、貴女に勝利を捧げます」
キザというか、ここまでいくと気持ち悪いな。ところが、当のドーニャは、難しい顔をしていた。もちろん、そんな表情も抜群に美しいが。
「わたくし、人が亡くなるのは見たくありませんわ」
ドーニャは目を逸らした。どういうことなんだろう。
「何を仰いますか、愛しのドーニャ。これは正義の為の戦いなのです」
そう言って今度はドーニャの反応を確かめることなく、トリマキを残し、フィールドに向かった。
俺の前に立つと、ルイスは目の色を変えた。キヤサーを殺した時の、あの狂気の目だ。
「これは決闘などという生易しいものではない」
「ああ。わかっている。ただ、どうしてお前はそこまで俺を憎むんだ。たかだか分家の人間ではないか」
「フッフッフ。これから死ぬ人間に教える必要はない」
ダメだ。話にならない。まあいい。こんな奴をまともに相手にするだけ時間の無駄というものだ。
そうこうしているうちに、いざ決戦の火蓋が切られた。観衆は盛り上がっている。それもそうだ。バルドナード本家と分家の嫡子同士の対決で、さらにはイケメン同士の対決が、決勝戦なのだから。
マルイの合図と同時に、ルイスは剣を構えた。今までの試合を通してこんなに早い段階での仕掛けは初めてだ。
「エアロブラスト!」
うわっマジか。いきなりかよ。剣から物凄い勢いで風が出て、ボケーっとしていた俺は、キンカーのように、吹っ飛ばされ、壁に体を打ちつけた。
しかし、あら不思議。全然痛くも何ともない。さすがは俺。さすがはパオロ・バレンシア。この物語の主人公だ。
待てよ、まだ倒れたまま、起きないでおこう。ルイスの驚く顔が見てみたい。奴は今、大きな声で高笑いをしている。馬鹿みたいに。こいつの鼻を明かした上で、ぶっ殺してやる。
「やあやあ、何か面白い出来事でもありましたかな、ルイス・バルドナード様」
「な、なんだと?」
絵に描いたように驚くルイス。滑稽だ。
「覚醒ジェットストリーム!」
「あちょ、まっ」
ルイスの次の「エアロブラスト」を待たずして、俺はルイスの元へと光の速さで飛んでいき、ルイスの心臓をぶち抜いた。決闘場からは、歓声と悲鳴の入り混じった、異様な叫び声が各所から飛び交った。広い決闘場は、物々しい雰囲気を醸していた。
ルイスの相手としてパオロという主人公は、いくらなんでも強すぎた。
ルイスは血をどくどく垂らしながら倒れた。俺は、ドーニャの顔を見ることができなかった。ドーニャに対して、申し訳ない感情しか湧かなかなったからだ。
しかしながら、悲しみの涙を溢す者は、マルイ含め、内部の人間達の中には、1人たりとも見当たらなかった。後でわかったことだが、ルイスはキヤサー殺人以外にも数々の悪事を犯し、その度にバルドナード家の威光を振りかざしては事件を揉み消してきた経緯があり、さらにはほとんどの人間はそのことを知っていたらしい。そのため、ルイス含めバルドナード家の評判は見る見る下降線を辿っていた最中だったみたいだ。まあ、だからなんだという話だが。
結局、最後の最後まで、ルイスが俺をあそこまで強く憎んでいた理由はわからずじまいに終わってしまった。
俺は、目的を達成した。達成したはずなのに、何故だか複雑な気分だった。
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