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必殺技爆誕!
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二回戦、俺は座学成績一位のシュミートと当たった。座学には剣術学と魔法学があるが、どちらも学年1位の成績だった気がする。まあ申し訳ないがモブキャラなんだけれど、一応魔法とかも飛び出してくるから気をつけないとな。
マルイに指示を受け、所定の位置に向かう途中、ドーニャと目が合った。ドーニャは祈るような美しい瞳で、俺に会釈した。俺も慌てて一礼する。するとそのやりとりを見ていたのか、ミョージャがムキになって声援を飛ばし始めた。こいつ、可愛いな。でも焼きもちなんか焼く必要ないぞ。ってか、めちゃめちゃ目立つな。恥ずかしいからやめてくれ。
試合が始まると、シュミートは小刻みに足を動かして、俺の周りをウロチョロし出した。そんなことしたって無駄だっつーの。お前は所詮モブキャラなんだから。悪いことは言わないから降参しとけ。まあ、殺したりは絶対にしないが。
「パオロ君! 僕はこの日のために修練を積んだんですぞ!」
「ですぞ」って…。にしても偉いな、モブのくせに。シュミート、実技は最下位だったもんな。
じゃあ、申し訳ないけどそろそろ終わらすわ。ルイス戦のために体力温存しておかなければいけないし。
俺は、剣を軽く振りかざした。
フンッ!
あれ?
俺の剣は空を切る。その瞬間、シュミートのデカい顔が俺の目の前に現れた。シュッと、音がする。俺の肩に、シュミートの剣が食い込んだ。
「フッフッフ。パオロ君、甘いですぞ! 僕は君のデータがここに入っているんですからな!」
シュミートは、自分のこめかみを人差し指でトントン、と叩いた。
それはなんでもいいんだけど、肩痛え。血めっちゃ出てるし。後でミョージャに治してもらおう。それはいいとして、俺の行動パターンが把握されてるとなると、今まで使ったことのない、必殺技とかでも使ったらいいんじゃないかな。でも自分のことがよくわかっていない俺は、自分はどんな技が使えるのかわからなかった。
仕方ない。ここはキンカーが使っていた技を拝借するとしよう。そしてキンカーと俺の、2人の勝利ということにしたい。
なんつったっけ、「ジェットストリーム」だったっけ? だけど、そのままの名前だと芸がないな…。よし、わかった! じゃあ、俺の必殺技の名前は「覚醒ジェットストリーム」だ。少しダサいような気もするけど、仕方ない、いったれ!
俺はさっきのキンカーの動きを見よう見まねでやってみた。シュミートはそんな俺の動きを、目をまんまるくさせて眺めていた。
「な、な、な! 何をする気ですかな?」
「覚醒ジェットストリーム!」
俺の周りには、さっきのキンカーがやった時とは比べものにならないくらい大きな竜巻きが巻き起こった。そしてそのまま俺の体を乗せて、シュミートの元へ飛んでいった。この時、シュミートが死なないように、俺はわざと剣の土手の方をシュミートに向けた。
「ぐふっ!」
シュミートは倒れ込んだ。やべ、大丈夫かな、生きてるかな。
「うわあー! 降参降参!」
そう言って、シュミートは元気に走って逃げていった決闘場の外まで逃げていった。おいおい、逃げ過ぎだ。そこまで追いかけるほど鬼じゃないっての。
観衆からは、笑い声が沸き起こった。「決闘」イベント全体を通して、唯一空気が和んだ瞬間だった。
マルイに指示を受け、所定の位置に向かう途中、ドーニャと目が合った。ドーニャは祈るような美しい瞳で、俺に会釈した。俺も慌てて一礼する。するとそのやりとりを見ていたのか、ミョージャがムキになって声援を飛ばし始めた。こいつ、可愛いな。でも焼きもちなんか焼く必要ないぞ。ってか、めちゃめちゃ目立つな。恥ずかしいからやめてくれ。
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「ですぞ」って…。にしても偉いな、モブのくせに。シュミート、実技は最下位だったもんな。
じゃあ、申し訳ないけどそろそろ終わらすわ。ルイス戦のために体力温存しておかなければいけないし。
俺は、剣を軽く振りかざした。
フンッ!
あれ?
俺の剣は空を切る。その瞬間、シュミートのデカい顔が俺の目の前に現れた。シュッと、音がする。俺の肩に、シュミートの剣が食い込んだ。
「フッフッフ。パオロ君、甘いですぞ! 僕は君のデータがここに入っているんですからな!」
シュミートは、自分のこめかみを人差し指でトントン、と叩いた。
それはなんでもいいんだけど、肩痛え。血めっちゃ出てるし。後でミョージャに治してもらおう。それはいいとして、俺の行動パターンが把握されてるとなると、今まで使ったことのない、必殺技とかでも使ったらいいんじゃないかな。でも自分のことがよくわかっていない俺は、自分はどんな技が使えるのかわからなかった。
仕方ない。ここはキンカーが使っていた技を拝借するとしよう。そしてキンカーと俺の、2人の勝利ということにしたい。
なんつったっけ、「ジェットストリーム」だったっけ? だけど、そのままの名前だと芸がないな…。よし、わかった! じゃあ、俺の必殺技の名前は「覚醒ジェットストリーム」だ。少しダサいような気もするけど、仕方ない、いったれ!
俺はさっきのキンカーの動きを見よう見まねでやってみた。シュミートはそんな俺の動きを、目をまんまるくさせて眺めていた。
「な、な、な! 何をする気ですかな?」
「覚醒ジェットストリーム!」
俺の周りには、さっきのキンカーがやった時とは比べものにならないくらい大きな竜巻きが巻き起こった。そしてそのまま俺の体を乗せて、シュミートの元へ飛んでいった。この時、シュミートが死なないように、俺はわざと剣の土手の方をシュミートに向けた。
「ぐふっ!」
シュミートは倒れ込んだ。やべ、大丈夫かな、生きてるかな。
「うわあー! 降参降参!」
そう言って、シュミートは元気に走って逃げていった決闘場の外まで逃げていった。おいおい、逃げ過ぎだ。そこまで追いかけるほど鬼じゃないっての。
観衆からは、笑い声が沸き起こった。「決闘」イベント全体を通して、唯一空気が和んだ瞬間だった。
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