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衝撃の開幕戦
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初戦の第1戦目は、剣術科の中でもいつも真面目なテイラーと、宿題忘れてマルイに叱られてばかりのカムストックだった。正直、この対戦カードは見ものだ。分類的に言えば、技巧派対パワー系だ。野球で説明するのもおかしな話だけれど、言ってしまえばイチロー対松井みたいなもの。技術とセンスを駆使してヒットを量産するタイプと、フィジカルと規格外のパワーでホームランを量産するタイプ。イチマツ論争に遂に決着がつくのかってな感じで、俺は1人で勝手に盛り上がっている。もちろん、心の中でだけど。
他のみんなには、俺と違ってそんな余裕はない。命がかかっているからだ。なんなら、この対戦で死人が出る可能性だってある。ほとんどのクラスメイトにとっては明日は我が身といった気分だろう。
審判はマルイだ。マルイに審判なんて務まるのかという声が聞こえてきそうだが、それは大丈夫。俺が自信を持って推したい。何故ならマルイは、こう見えてここ、つまりギルバート帝国学院剣術科の卒業生だからだ。つまり、必須科目である「決闘」も経験済みだということである。もっと驚きな事実をいうと、マルイは常に成績優秀で、腕っぷしも強く、最終的に剣術科を首席で卒業したらしい。空前絶後のエリートである。もっとも、それくらいのエリートでないと、誇り高き我らがギルバート帝国学院剣術科の教員になど、絶対になれない。まあ、本人のあの感じからは想像もつかない話ではあるけれど。
そんなこんなで、マルイが決闘場の中央に入り、横綱の土俵入りのような形で、テイラーとカムストックの両者が向き合った。剣は公平性を考慮して、学科から支給された全員同じものを使用することを義務づけられている。当たり前といったら当たり前だ。
「はじめ!」
ついに、開幕。観衆を含めて1000人間以上の視線が中央のフィールドに集まる。俺は息を飲んだ。
剣術科のクラスメイト達の当初の予想通り、あくまでも冷静沈着なテイラーに対して、カムストックは初っ端からエンジン全開だ。
こちらが心配になるほどの運動量で攻撃の手数を増やしていくカムストック。一方でテイラーは、素早く、膨大な数の攻撃をすべてシャットアウト。ガードが固い。
カムストックは頭に血が昇る性格が裏目に出たか、脇が開いたり、余計なステップが増えてきた。このままではまずいと、誰もが思ったに違いない。まあ、カムストックの気持ちもわかないではないのけれど。
決闘が開始されてから5分経過したが、テイラーの方はまだ一度も攻撃を繰り出していなかった。そしてそれが、彼のポーカーフェイスと相まって凄く不気味に感じられた。
そんな中、遂にカムストックが勝負に出た。剣を頭の上に大きく振りかぶり、テイラーに襲いかかった。
「死ね! テイラー!」
テイラーはカムストックから目を離すことなく、カムストックが剣を振り下ろす瞬間、一直線にカムストックの顔を目指して剣を突き出した。
カラン…。
カムストックの剣は、振り下ろされることのないまま、虚しく地面に落ちた。
そしてテイラーによるたった一度の攻撃は、カムストックの脳天を貫いた。
観衆からは悲鳴が上がった。
あまりに恐ろしくて、俺も思わず目を覆った。やっぱり。これが、これこそが「決闘」の恐ろしさだ。ふと瞬間に隙を突かれ、いきなり命を落とすことが、非現実的な話ではないのである。さらに言うと、相手もいつも学校で仲良く過ごしている仲間であっても、命懸けで挑んでくる。相手にしたって恐怖に駆られているのは同じことだからである。これこそがまさに、命と命のぶつかり合いだ。
ー続くー
他のみんなには、俺と違ってそんな余裕はない。命がかかっているからだ。なんなら、この対戦で死人が出る可能性だってある。ほとんどのクラスメイトにとっては明日は我が身といった気分だろう。
審判はマルイだ。マルイに審判なんて務まるのかという声が聞こえてきそうだが、それは大丈夫。俺が自信を持って推したい。何故ならマルイは、こう見えてここ、つまりギルバート帝国学院剣術科の卒業生だからだ。つまり、必須科目である「決闘」も経験済みだということである。もっと驚きな事実をいうと、マルイは常に成績優秀で、腕っぷしも強く、最終的に剣術科を首席で卒業したらしい。空前絶後のエリートである。もっとも、それくらいのエリートでないと、誇り高き我らがギルバート帝国学院剣術科の教員になど、絶対になれない。まあ、本人のあの感じからは想像もつかない話ではあるけれど。
そんなこんなで、マルイが決闘場の中央に入り、横綱の土俵入りのような形で、テイラーとカムストックの両者が向き合った。剣は公平性を考慮して、学科から支給された全員同じものを使用することを義務づけられている。当たり前といったら当たり前だ。
「はじめ!」
ついに、開幕。観衆を含めて1000人間以上の視線が中央のフィールドに集まる。俺は息を飲んだ。
剣術科のクラスメイト達の当初の予想通り、あくまでも冷静沈着なテイラーに対して、カムストックは初っ端からエンジン全開だ。
こちらが心配になるほどの運動量で攻撃の手数を増やしていくカムストック。一方でテイラーは、素早く、膨大な数の攻撃をすべてシャットアウト。ガードが固い。
カムストックは頭に血が昇る性格が裏目に出たか、脇が開いたり、余計なステップが増えてきた。このままではまずいと、誰もが思ったに違いない。まあ、カムストックの気持ちもわかないではないのけれど。
決闘が開始されてから5分経過したが、テイラーの方はまだ一度も攻撃を繰り出していなかった。そしてそれが、彼のポーカーフェイスと相まって凄く不気味に感じられた。
そんな中、遂にカムストックが勝負に出た。剣を頭の上に大きく振りかぶり、テイラーに襲いかかった。
「死ね! テイラー!」
テイラーはカムストックから目を離すことなく、カムストックが剣を振り下ろす瞬間、一直線にカムストックの顔を目指して剣を突き出した。
カラン…。
カムストックの剣は、振り下ろされることのないまま、虚しく地面に落ちた。
そしてテイラーによるたった一度の攻撃は、カムストックの脳天を貫いた。
観衆からは悲鳴が上がった。
あまりに恐ろしくて、俺も思わず目を覆った。やっぱり。これが、これこそが「決闘」の恐ろしさだ。ふと瞬間に隙を突かれ、いきなり命を落とすことが、非現実的な話ではないのである。さらに言うと、相手もいつも学校で仲良く過ごしている仲間であっても、命懸けで挑んでくる。相手にしたって恐怖に駆られているのは同じことだからである。これこそがまさに、命と命のぶつかり合いだ。
ー続くー
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