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衝撃の訪問者

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 やれやれ。入学式の式辞がかったるいのは、どの世界でも共通なのね。特に、校長のスピーチね。
 ちなみに一応ギルバート帝国学院はこの国で1番のエリート達が集まる学校らしい。日本でいうところの高等学校にあたるのかな、多分。自信はないけど。でもこの上の教育機関がないから、大学みたいな所なのかもしれない。
 国立大学みたいなモノかな、東大、みたいな?



 そして校長はもちろん、ギルバートさん。といっても、正式な名前はサブ・ギルバートといって、皇帝ではない。


 うわー。嫌だな、そんな人生。名前に「サブ」なんてつく人生。俺だったら確実に生きる希望を失うと思う。だからこそこの人は偉い。サブ・ギルバートさんは偉いんだよ。話が長いのは許さないけれど。

 入学式が終わると、それぞれの教室に案内された。俺は廊下側の1番後ろの席だった。ちなみにルイスは窓側の1番後ろの席。よく学園ドラマで、番長が座る席だ。隣同士じゃなくて本当によかった。うんうん。ほっとしたってやつだぜ。

 しばらくすると担任らしき男が入ってきた。歳は40前後くらいだが、なかなかの男前だ。ダンディな雰囲気を纏っている。



「はい! 今日から君たちのクラスを受け持つことになったマルイだ! よろしくな」


 えー!? 待って待って、今なんて言った? マルイ? 丸井? なんでいきなり日本っぽい名前きた? おかしすぎだろ、笑える。



「バレンシア君!」


「は、はい」


「おめなんで笑ってんだよ」


「すみません」


「人が話してる時はちゃんと聞かなきゃダメだべ?」


「え?」


「えじゃねえべよ! エアロブラストで吹き飛ばすぞ」


「はい」


 おいおい…。だべって…。なんか懐かしいよな、何弁なんだよ、まさか聞くわけにもいかないしな。


「バレンシア君!」

 ホームルーム的な時間が終わると、隣の男の子に話しかけられた。



「僕、キンカー、よろしくね!」


「ああ、よろしく、キンカー君。僕はパオロ・バレンシア」


「ははっ! 知ってるよ! だってさっき怒られてたじゃん!」


  こいつ、本当に俺と同じ15歳か? なんだか、幼すぎるな。ってか、もしかして俺、第一印象最悪ってやつっすか? トホホ…。まあいい、これから挽回していくしかない。ほら、ハードルは低い方がいいっていうじゃん? なんならハードル潜り抜けてやるよ。なんつって。



「てかさ、僕、パオロ君の隣になれるなんてまさか思ってなかったなー!」



「え、その言い方するってことは、俺のこと前から知ってたの?」


「えっ! 何言ってるんだよ、当たり前じゃん! バレンシア家って言ったらもう名門中の名門だし、パオロ君はその中でも次期当主、なんだもんね!」



 おいおい、バレンシア家ってそんな有名なのかよ。もしかして俺って、このストーリーの中でも結構重要な立ち位置なんじゃね? 主人公だったりして。まあ、それはないか。主人公はきっとルイスだろう。だって本家だし。公爵令嬢と婚約しているし。




「てかさ、僕も見てみたかったなー! パオロ君がコカトリスをさ、木刀で倒したところ! すっげえよな、だって木刀だぜ?」



 ひとしきり話しきると、キンカーは剣を振り回す真似をした。どっかのメイドみたいな落ち着きのなさだ。
 ていうか、俺がコカトリス倒した話どんだけ広がってんだよ! まあ、一応かなり快感だったが?



「まあ、何せよ、これからよろしくな、キンカー」


「おう! パオロ!」


 現実では味わえなかった青春を、やり直してやる。キンカーがいればそれができる気がする。あとは女の子と少しでも仲良くなることができれば…。

 なんつって。


 初日はさすがに授業はなかった。こういうところは現実世界と共通している。


 寮はほぼ、高級な外資ホテルみたいだった。外観もとてつもなく大きいし、雰囲気もゴージャスだし、中も広い。プールやゲーセンみたいなものなど、おまけに設備も充実している。こんなのいつ使うんだよ。
後で色々行ってみたいな。


 でもまあいいや、今日はさすがに疲れているから寄り道せずに真っ直ぐ自分の部屋に帰ろう。
 部屋のドアを開ける。ガチャ。



「ただいま~って、誰もいないか、ハハ」



「お帰りなさいませ、パオロ様!」



 そこにはメイドがいた。



「なんでおんねん、ワレ!」


ー続くんー




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