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入学式
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だり~。だり~。だり~。って今の気持ちだけで歌が作れそうだ。正直、めちゃめちゃ憂鬱な気分。どうしてか? んなコト聞かなくたってわかるだろ? 学校だよ、ガッコウ。
今日から俺は、ギルバート帝国学院に入学する。そして3年間の寮生活が待っている。
んで、今は学校までの道すがら。馬車に揺られている最中。知ってる? 馬車ってさ、めっちゃ酔うの。あ~気持ち悪い。
まあ、ふざけるのも大概にしてそろそろ気を引き締めていきたいと思う。でないと死ぬわけだし。
1時間ほど馬車に揺られると、ようやく学校に到着した。これまた中世ヨーロッパ感満載の、どこかの魔法映画に登場するような、お城みたいな学校だ。
「新入生の方でしょうか?」
案内役らしき女性の職員に聞かれ、少し緊張しながら返事をする。
「あ、はい、そうです」
「ちなみにお名前を教えていただいてもよろしいでしょうか」
「あ、はい。パオロ・バレンシアと申します」
俺が名を名乗ると、女性職員はあからさまに緊張した様子で、心なしかさっきより背筋をビシッとさせた。やれやれ、そんな気負わなくてもいいのに。中身は40のニートのオッサンなんだから。
「バレンシア様ですね! こちらにどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
女性職員に案内され、俺は大きなホールに足を踏み入れた。中には既に沢山の新入生がパイプ椅子のようなものに腰掛けていた。この辺は日本の入学式や卒業式と似ている。
俺が適当な席に着こうとすると、女性職員に慌てて制止された。
「バレンシア様…! こ、困ります…!」
「へ?」
女性職員はたいそう恐縮しているようだった。だから、気を遣わないでくれって。逆にやりづらいわ。
「バレンシア様はこちらへどうぞ…!」
今度は見るからに他の生徒たちより1段階も2段階も豪華な席が並んでいるエリアに案内された。この辺りは席の数も少ない。嫌な予感がする。既に何人か席に着いてはいるが、俺は誰のことも見ないようにしながら、女性職員の顔だけを見て話した。
「えっと、私がこちらの席に案内されたのは、剣術科だから、ということですか?」
「いえ! めっそうもございません! バレンシア家はギルバート帝国の功労者であらせられますので、こちらに案内させていただいております。VIP席でございます」
「あ、そう」
もう面倒くさくなってぶっきらぼうに返事をすると、女性職員は完全に恐縮しきって、深々と頭を下げ、去っていった。
「やあ」
背後から、聞き覚えのある声がする。振り返ってみる。やっぱりだ。そこにはルイスが偉そうに足を組みながら豪華なラベンダー色の椅子にふんぞり返って座っていた。
「隣、座りなよ」
「失礼致します」
「今日からついに同級生だね。光栄だよ」
「こちらこそ、光栄あるバルドナード本家のご嫡子であらせられる、ルイス様と肩を並べてしまい、大変恐縮でございます」
俺はとりあえず頭を下げた。するとルイスはうっふふと嫌味ったらしく笑った。
「まあそう固くならないでよ。君と僕は同じクラスなんだからさ」
「えっ! そうなんですか!」
「なんだ、嫌なのか?」
「いえ! とんでもないです!」
「ハッハッハ。なら、もうひとついいことを教えてあげるよ」
「は、はい」
「決闘は、同じクラスの者同士でやるらしいよ」
ー続くー
今日から俺は、ギルバート帝国学院に入学する。そして3年間の寮生活が待っている。
んで、今は学校までの道すがら。馬車に揺られている最中。知ってる? 馬車ってさ、めっちゃ酔うの。あ~気持ち悪い。
まあ、ふざけるのも大概にしてそろそろ気を引き締めていきたいと思う。でないと死ぬわけだし。
1時間ほど馬車に揺られると、ようやく学校に到着した。これまた中世ヨーロッパ感満載の、どこかの魔法映画に登場するような、お城みたいな学校だ。
「新入生の方でしょうか?」
案内役らしき女性の職員に聞かれ、少し緊張しながら返事をする。
「あ、はい、そうです」
「ちなみにお名前を教えていただいてもよろしいでしょうか」
「あ、はい。パオロ・バレンシアと申します」
俺が名を名乗ると、女性職員はあからさまに緊張した様子で、心なしかさっきより背筋をビシッとさせた。やれやれ、そんな気負わなくてもいいのに。中身は40のニートのオッサンなんだから。
「バレンシア様ですね! こちらにどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
女性職員に案内され、俺は大きなホールに足を踏み入れた。中には既に沢山の新入生がパイプ椅子のようなものに腰掛けていた。この辺は日本の入学式や卒業式と似ている。
俺が適当な席に着こうとすると、女性職員に慌てて制止された。
「バレンシア様…! こ、困ります…!」
「へ?」
女性職員はたいそう恐縮しているようだった。だから、気を遣わないでくれって。逆にやりづらいわ。
「バレンシア様はこちらへどうぞ…!」
今度は見るからに他の生徒たちより1段階も2段階も豪華な席が並んでいるエリアに案内された。この辺りは席の数も少ない。嫌な予感がする。既に何人か席に着いてはいるが、俺は誰のことも見ないようにしながら、女性職員の顔だけを見て話した。
「えっと、私がこちらの席に案内されたのは、剣術科だから、ということですか?」
「いえ! めっそうもございません! バレンシア家はギルバート帝国の功労者であらせられますので、こちらに案内させていただいております。VIP席でございます」
「あ、そう」
もう面倒くさくなってぶっきらぼうに返事をすると、女性職員は完全に恐縮しきって、深々と頭を下げ、去っていった。
「やあ」
背後から、聞き覚えのある声がする。振り返ってみる。やっぱりだ。そこにはルイスが偉そうに足を組みながら豪華なラベンダー色の椅子にふんぞり返って座っていた。
「隣、座りなよ」
「失礼致します」
「今日からついに同級生だね。光栄だよ」
「こちらこそ、光栄あるバルドナード本家のご嫡子であらせられる、ルイス様と肩を並べてしまい、大変恐縮でございます」
俺はとりあえず頭を下げた。するとルイスはうっふふと嫌味ったらしく笑った。
「まあそう固くならないでよ。君と僕は同じクラスなんだからさ」
「えっ! そうなんですか!」
「なんだ、嫌なのか?」
「いえ! とんでもないです!」
「ハッハッハ。なら、もうひとついいことを教えてあげるよ」
「は、はい」
「決闘は、同じクラスの者同士でやるらしいよ」
ー続くー
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