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メイド可愛いすぎん!?
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とぼとぼと部屋に帰ってきた俺は、完全に意気消沈していた。どうして初対面の人間に殺害予告を受けなきゃいけないんだよ。あっそうか。初対面ではないという設定なのか。原作観てねえから関係性がわからないっつーの。
このままだと入学するのが憂鬱になる。先が思いやられる。
現実世界でも、異世界でも俺はうまくやれない。現実でも社会不適合、異世界でも社会不適合なのか。
なんとなく、新しくなった自分の部屋の中を物色してみる。年季の入った机の上には分厚い本やノートがいくつもある。書かれている言語はもちろん日本語ではないけれど、不思議と理解できる。これもきっと「設定」だ。どうでもいい。俺はベッドに横になり、くよくよと落ち込んでいた。
長い時間、徹底的に落ち込んでいると、メイドが部屋のドアをノックしにきた。思わず背中がビクッとした。
ノックの音が大きすぎる。ドアが壊れるっつーの。なんなんだよ、こいつは。ガサツなんじゃないの?
「失礼します、パオロ様ー! パオロ様? あのう、晩御飯のお時間になりましたのでお知らせに参りましたー! パオロ様?」
「あ、ああ」
「ん? パオロ様、どうしたんですか? 元気ないみたいですけど、ロベルト様となんかあったんですか?」
部屋に入るなり、メイドは可愛い顔して俺の顔を覗き込んでくる。ったく。こいつ。可愛いければなんでも許されるってもんじゃないからな? デリカシーってモンがないのかよ。
こういう人間はどこの世界でもいるようだ。だが決して屈してはいけない。俺は意地でも顔を上げない。メイドは意地でも俺の顔を見ようとしてくる。イタチごっこに負けたのは、俺の方だった。
笑ってしまった。少し場の雰囲気が和んだ。この子は、不思議な魅力を持っている。そう感じた。
「メイド。正直に言うよ。私は春から、本家バルドナードのルイス様と同級生になるんだ」
「えっ! すごい! じゃあ、おふたりとも剣術科ってことですか? 私、以前聞いたんですけど、ギルバート帝国学院剣術科って、必須科目に決闘があるんですよね?」
「ああ。有名な話だ」
「死んじゃう人もいるとか…」
「問題はそこなんだよ。話を整理すると、私は春からギルバート帝国学院剣術科に通うことになる。これはバレンシア家嫡子の使命だ。そこで奇しくも、本家バルドナードの嫡子、ルイス様と同級生になることに」
「いいじゃないですか!」
「話は最後まで聞け」
「んもう! パオロ様ったら、完結にまとめてくださいよー!」
「わかった。では一言で話そう。私はルイス様に殺害予告された。以上だ」
ドヤ顔で言ってのけた。少しは気の毒がられるかと思ったら俺の予想は見事に外れた。メイドは目をまんまるくさせ、きょとんとしながら俺を見つめていた。
「えっ、決闘なんだから当たり前なんじゃないですか?」
「えっ」
「ルイス様に殺されたくなかったら、パオロ様がルイス様を殺せばいいのでは? もちろん、決闘で」
言い終えると、メイドは剣を振り回す真似をした。そうか。殺害予告なんて甘ったれたこと言っている場合ではなかった。
こんな意識の低さでは、バレンシア家の名誉に傷がつく。ていうか、バレンシア家ってなんだよ。意味わからない。まあその問題は今は置いておくにしてもだ。
それにしてもこのメイド、物騒なことを言いやがるな。これがこの世界では普通なのか?
「まあいいや、晩御飯行きましょう?」
メイドは走って、俺の部屋を後にした。なんなんだ、あいつ。俺はメイドがいなくなった部屋で1人、呆然と佇んでいた。しかし、こうしてはいられなかった。何かせんといかん。何せ俺には、命がかかっている。
このままだと入学するのが憂鬱になる。先が思いやられる。
現実世界でも、異世界でも俺はうまくやれない。現実でも社会不適合、異世界でも社会不適合なのか。
なんとなく、新しくなった自分の部屋の中を物色してみる。年季の入った机の上には分厚い本やノートがいくつもある。書かれている言語はもちろん日本語ではないけれど、不思議と理解できる。これもきっと「設定」だ。どうでもいい。俺はベッドに横になり、くよくよと落ち込んでいた。
長い時間、徹底的に落ち込んでいると、メイドが部屋のドアをノックしにきた。思わず背中がビクッとした。
ノックの音が大きすぎる。ドアが壊れるっつーの。なんなんだよ、こいつは。ガサツなんじゃないの?
「失礼します、パオロ様ー! パオロ様? あのう、晩御飯のお時間になりましたのでお知らせに参りましたー! パオロ様?」
「あ、ああ」
「ん? パオロ様、どうしたんですか? 元気ないみたいですけど、ロベルト様となんかあったんですか?」
部屋に入るなり、メイドは可愛い顔して俺の顔を覗き込んでくる。ったく。こいつ。可愛いければなんでも許されるってもんじゃないからな? デリカシーってモンがないのかよ。
こういう人間はどこの世界でもいるようだ。だが決して屈してはいけない。俺は意地でも顔を上げない。メイドは意地でも俺の顔を見ようとしてくる。イタチごっこに負けたのは、俺の方だった。
笑ってしまった。少し場の雰囲気が和んだ。この子は、不思議な魅力を持っている。そう感じた。
「メイド。正直に言うよ。私は春から、本家バルドナードのルイス様と同級生になるんだ」
「えっ! すごい! じゃあ、おふたりとも剣術科ってことですか? 私、以前聞いたんですけど、ギルバート帝国学院剣術科って、必須科目に決闘があるんですよね?」
「ああ。有名な話だ」
「死んじゃう人もいるとか…」
「問題はそこなんだよ。話を整理すると、私は春からギルバート帝国学院剣術科に通うことになる。これはバレンシア家嫡子の使命だ。そこで奇しくも、本家バルドナードの嫡子、ルイス様と同級生になることに」
「いいじゃないですか!」
「話は最後まで聞け」
「んもう! パオロ様ったら、完結にまとめてくださいよー!」
「わかった。では一言で話そう。私はルイス様に殺害予告された。以上だ」
ドヤ顔で言ってのけた。少しは気の毒がられるかと思ったら俺の予想は見事に外れた。メイドは目をまんまるくさせ、きょとんとしながら俺を見つめていた。
「えっ、決闘なんだから当たり前なんじゃないですか?」
「えっ」
「ルイス様に殺されたくなかったら、パオロ様がルイス様を殺せばいいのでは? もちろん、決闘で」
言い終えると、メイドは剣を振り回す真似をした。そうか。殺害予告なんて甘ったれたこと言っている場合ではなかった。
こんな意識の低さでは、バレンシア家の名誉に傷がつく。ていうか、バレンシア家ってなんだよ。意味わからない。まあその問題は今は置いておくにしてもだ。
それにしてもこのメイド、物騒なことを言いやがるな。これがこの世界では普通なのか?
「まあいいや、晩御飯行きましょう?」
メイドは走って、俺の部屋を後にした。なんなんだ、あいつ。俺はメイドがいなくなった部屋で1人、呆然と佇んでいた。しかし、こうしてはいられなかった。何かせんといかん。何せ俺には、命がかかっている。
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