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第九章
Chapter.37 母の手紙
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母の手紙
1ヵ月半後、過去へのタイムスリップの日、緊張した様子の友杏はラージサイズのスーツケースを引き、実家の坂広の研究室である地下室に入った。研究室には、高さが2.5メートル、底辺は平らだが、卵を3分の2くらい縦に縮めたような形のシルバーのタイムマシンが立っていた。中は空洞で、タイムマシンのドアには、飛行機にあるような小さな窓がひとつ付いている。
「おお、友杏来たか。いよいよだな。どうだ、コンディションは?」
坂広は寂しさを隠すように、普段通りに振舞う。
「緊張以外の何物でもない……」友杏の表情は引きつり気味だ。
「ママの姿が見えないけど、どこにいるの?」友杏は周りを見渡す。
「友杏を見送ったら、号泣して、取り乱して引き止めちゃいそうだからって…… どっかに行っちゃたよ」
「えっ、そうなの…… 1ヵ月以上会ってないのに。それが最後なんて」
友杏は寂しくてテンションが下がる。
「これ、ママからの手紙だよ」坂広が友杏に手紙を渡す。
「えっ、……パパ、ちょっと一人で読ませて」
友杏は封筒の中から手紙を取り出すと、一人で海が見渡せるバルコニーに出て、手紙を広げた。
『愛する友杏へ。友杏、旅立ちの日に見送ってあげれなくてごめんね。会って見送ったら、一人娘のあなたを引き止めて、取り乱しちゃう気がしてね。そんな臆病なママを許してね。あなたがタイムスリップする頃は、きっとショッピングモールで買い物でもして気を紛らわせてるかな。
あなたの選んだ道だから、徹底的に頑張ってね。それで150万以上の命を救ってあげてください。そんな選択をしたあなたはママとパパの誇りです。ひとつだけ残念なのは、友杏が過去に行って任務を遂行した結果を知るすべがないということ。でも、友杏、あなたならきっとできるってママは信じてるよ。あなたは昔から冒険心が強くて、危ないことをたくさんして、ママをよく心配させたね。それで、ママも鍛えられたよ。だから、今回もママは大丈夫。ママのことは気にしないで任務を遂行してね。もう、永遠に会えなくなるけど、時空を超えた愛とエールをいつも送ってるからね。あなたのママ、松田華怜より』
広げた手紙の表面に、大粒の涙が何粒もぽたぽたと落ちる。
「うわーん!!」友杏は、思わず叫ぶように大声で鳴き声をあげてしまう。
「ママ…… ごめん。ごめんね。最後まで自分勝手な娘で……」
友杏は両膝から崩れ落ち、手を床に付けると、そう呟いた。
部屋の中からその光景を見ていた坂広は、バルコニーに出て膝をつくと、友杏を強く抱きしめた。
「大丈夫か? 友杏」
友杏は坂広の胸の中で小さな鳴き声をあげながら喋る。
「ごめん。少しこのまま泣かせて……」
そのまま、友杏は坂広の腕の中で20分泣き続けた。
「ありがとう。パパ、ごめんね。私、最後まで自分勝手で心配かけてきて……」
「いいんだよ。それはすべて好奇心からきたものだ。その好奇心はいずれ新たなものを生み出し、人々のためになっていくんだよ。パパがそうだったようにな。パパもいろいろな物を発明して、人々がより良く生活できるように貢献してこれたと思っている。友杏だって、現にその好奇心から200万人近くの人々の命を救う旅に出発しようとしてるじゃないか」
「そうだね。私、やるよ」泣き止むと、友杏の目には力がみなぎってくる。
―家族の犠牲は、決して無駄にしない!
1ヵ月半後、過去へのタイムスリップの日、緊張した様子の友杏はラージサイズのスーツケースを引き、実家の坂広の研究室である地下室に入った。研究室には、高さが2.5メートル、底辺は平らだが、卵を3分の2くらい縦に縮めたような形のシルバーのタイムマシンが立っていた。中は空洞で、タイムマシンのドアには、飛行機にあるような小さな窓がひとつ付いている。
「おお、友杏来たか。いよいよだな。どうだ、コンディションは?」
坂広は寂しさを隠すように、普段通りに振舞う。
「緊張以外の何物でもない……」友杏の表情は引きつり気味だ。
「ママの姿が見えないけど、どこにいるの?」友杏は周りを見渡す。
「友杏を見送ったら、号泣して、取り乱して引き止めちゃいそうだからって…… どっかに行っちゃたよ」
「えっ、そうなの…… 1ヵ月以上会ってないのに。それが最後なんて」
友杏は寂しくてテンションが下がる。
「これ、ママからの手紙だよ」坂広が友杏に手紙を渡す。
「えっ、……パパ、ちょっと一人で読ませて」
友杏は封筒の中から手紙を取り出すと、一人で海が見渡せるバルコニーに出て、手紙を広げた。
『愛する友杏へ。友杏、旅立ちの日に見送ってあげれなくてごめんね。会って見送ったら、一人娘のあなたを引き止めて、取り乱しちゃう気がしてね。そんな臆病なママを許してね。あなたがタイムスリップする頃は、きっとショッピングモールで買い物でもして気を紛らわせてるかな。
あなたの選んだ道だから、徹底的に頑張ってね。それで150万以上の命を救ってあげてください。そんな選択をしたあなたはママとパパの誇りです。ひとつだけ残念なのは、友杏が過去に行って任務を遂行した結果を知るすべがないということ。でも、友杏、あなたならきっとできるってママは信じてるよ。あなたは昔から冒険心が強くて、危ないことをたくさんして、ママをよく心配させたね。それで、ママも鍛えられたよ。だから、今回もママは大丈夫。ママのことは気にしないで任務を遂行してね。もう、永遠に会えなくなるけど、時空を超えた愛とエールをいつも送ってるからね。あなたのママ、松田華怜より』
広げた手紙の表面に、大粒の涙が何粒もぽたぽたと落ちる。
「うわーん!!」友杏は、思わず叫ぶように大声で鳴き声をあげてしまう。
「ママ…… ごめん。ごめんね。最後まで自分勝手な娘で……」
友杏は両膝から崩れ落ち、手を床に付けると、そう呟いた。
部屋の中からその光景を見ていた坂広は、バルコニーに出て膝をつくと、友杏を強く抱きしめた。
「大丈夫か? 友杏」
友杏は坂広の胸の中で小さな鳴き声をあげながら喋る。
「ごめん。少しこのまま泣かせて……」
そのまま、友杏は坂広の腕の中で20分泣き続けた。
「ありがとう。パパ、ごめんね。私、最後まで自分勝手で心配かけてきて……」
「いいんだよ。それはすべて好奇心からきたものだ。その好奇心はいずれ新たなものを生み出し、人々のためになっていくんだよ。パパがそうだったようにな。パパもいろいろな物を発明して、人々がより良く生活できるように貢献してこれたと思っている。友杏だって、現にその好奇心から200万人近くの人々の命を救う旅に出発しようとしてるじゃないか」
「そうだね。私、やるよ」泣き止むと、友杏の目には力がみなぎってくる。
―家族の犠牲は、決して無駄にしない!
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