ぼくらの国防大作戦

坂ノ内 佐吉

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第七章

Chapter.29 沖縄奪還

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 沖縄奪還

 5月23日 横浜
 月川が、周人と幸来紗のマンションを訪ねる。
「お久しぶりです」
「お久しぶりです。どうぞ、楽にしてください」
 周人が言い、月川が腰を下ろすと、幸来紗がコーヒーをテーブルに置く。
「月川さん。お久しぶりです。わざわざ来てくださって、どうなさいました?」
「第3次世界大戦、始まってしまいましたね」
「ええ、本当に核攻撃を回避できるようになりますかね」周人が心配そうに言う。
「回避できることを祈りましょう。……今日はですね、私の立場だから分かることを二人に伝えたくて、訪ねました。戦争が始まって、グループチャットで皆さんがやり取りしていて、私もいろいろ書き込みたいことがあったのですが、立場が立場で、内容が内容だけに、SNS上では危険かなと思ったことがあったので、それを伝えたいと思いまして」
「何ですか?」幸来紗が言い、二人は月川を見る。
「総理の側近の立場から、戦争に加わっている国々の工作員達の情報も、ちょこちょこと耳に入るのですが、とても激しい情報戦が繰り広げられています。それで分かってきたことがあります。沖縄はちょっと分かりませんが、おそらく、絶対とは言えませんが、九州に侵攻されることはないと思います」
「本当に! ……良かった」幸来紗は安心した表情になる。
「僕らの作戦に、効果が出始めたんですかね?」周人の期待も膨らむ。
「それは間違いありませんよ。間違いなくいい方向に向かっています」
「わざわざ、それを伝えに来てくれたんですか?」
「ええ、立場だけに電話で盗聴される可能性もありそうですので」
 周人との問いに、月川はにこやかに答えた。

 月川が二人のマンションを訪ねた夜、幸来紗は風呂に入るため、靴下を脱ぐと、足首に巻いていたミサンガが切れていた。幸来紗は周人に駆け寄る。
「周人。見て。ほら、ミサンガが切れてるよ」
「本当だ。……えっと、たしか、そのミサンガには、戦争が起きませんように、って願いをかけたって、インドで言ってたよね」
 周人はインドの列車の中での会話を思い出す。
「あの時はね。でも、LSJ計画に加わってからは、九州事変が起きませんようにって、願ってたんだよ。」
 嬉しそうな幸来紗は、周人に抱きついて頬にキスをした。
「すごい偶然だね。月川さんから、そんな報告を受けた日に切れるなんてね」
「偶然なんかじゃない。きっと必然。きっと大丈夫だよ」

 2日後、沖縄に侵攻したコンチャウ軍に対して、自衛隊とアユセウス軍による反撃が始まり、6月21日、コンチャウ軍は沖縄から撤退した。

 未来人『みんな、すごい! 沖縄を取り返したじゃん! これは計算外だよ。良かった!』
 智成『YES!』
 美智『日本人の心のオアシス、沖縄は守られた。(涙)』
 幸来紗『良かった! 既に何人かの命は救われたよね。』
 周人『政府がちゃんと動いていてくれてるからだよ。次は九州だ。動向を見守っていこう』
 坂広『僕も、貢献してるんですよね。すごいな』
 智成『次は九州が責められないことを祈ろう』
 
 グループチャット後、幸来紗は美智に電話をした。
「美智、そういえば、長崎の家族は大丈夫なの? 私の家族は、今はみんな本州にいるから大丈夫だけど」
 幸来紗は心配して訊く。
「お母さんはけっこう信じたけどさ、お父さんは初めから聞く耳もたなくて、酔っ払ってキレちゃったりしてさ。私を精神病扱いもしちゃったりしてさ…… でも、沖縄が侵攻されて、さすがにビビッて、今は山口にいる。大丈夫だよ。ありがとうね、幸来紗」

 2028年 2月17日
「周人、今日が、未来の歴史書に記された、九州事変の予定日だよ」
 幸来紗は最近、気を揉んでいる様子だ。
「沖縄も奪還してから、何もなないよ。きっと既に回避されてるんだよ。歴史書と比べても、コンチャウの動きは、おそらく予定より失速してるように感じる。月川さんも言っていたじゃん」周人が和やかに言う。
「うん、きっとそうだよね。九州は大丈夫だよね。願いを込めたミサンガも切れたし。きっと、大丈夫」
「そうだよ。きっと終息に向かってるよ」幸来紗は期待を込めて言う。
「未来の歴史書とだいぶ変わってるから、もしかしたら、すぐにでも東京に核ミサイルが飛んでくるってこともありえるんじゃないかな? そうなると、東京に住んでる幸来紗のお父さんが既に危険な期間に入ってるんじゃない?」周人は急に思いつき心配になる。
「私も気にしてるんだけど、そのリスクの可能性を下げるるために、仕事以外では、総理公邸の地下室に住み始めてるって、連絡がきたから」
「そうか、それなら良かったよ」
「そもそも、核ミサイルが東京に落とされるなんて、お父さん信じきってないと思うけどね」 

 その後、2年経過しても、九州が攻撃されることがなく、核ミサイルが東京に落とされる予定の2030年になった。
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