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第六章
Chapter.23 坂広の居場所
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坂広の居場所
月川の案内で、幸来紗は、後部座席に乗り込み、横浜へ向かう。
「お嬢様、お疲れさまでした」月川は笑顔で話す。
「行きも帰りも、送ってくださりありがとうございます」
「どうでしたか?」
「条件付きで、国防力の強化は検討してくれそうなんですけど、その条件をクリアできるか? ってところですかね」幸来紗はため息を吐く。
「あの、お嬢様。実はですね、総理の部屋には、盗聴器が仕掛けられていましてね、私は二人の会話を聞いているんです」
「えっ?」下を向いていた、幸来紗の顔は上がる。
「ごめんなさい。悪く思わないでください。これは側近の私だけが総理と情報を共有するために許された特権なのです。他の人間は誓って何も聞いていませんから。それは絶対なので、信じてください」
「全部、聞いていたんですか?」幸来紗は嫌そうな表情をする。
「すみません。全部聞いていました」月川は、運転をしながら頭を下げる。
「まあ、いいんですけど」
「お嬢様、ぜひ、私に何か協力させてください。お嬢様の目標の達成のために力になりますよ。総理に最も近い存在でもあるし、力になれますよ」
月川のテンションは高めだ。
「どうして、そんなに親身になってくれるんですか?」
「まあ、単刀直入に言えば、単純に面白そうだからです。加えて、ワクワクしますね。成功すれば、首都東京を救えるわけですよね。そんな大きなミッションに参加できるなんて、素晴らしいじゃないですか。ミッションの規模の割にはリスクも少なそうだし」
「なんだか、楽しそうですね。あの、ちょっと気になったんですけど、この車に盗聴器が設置されてたりしていないですか?」
「設置されてませんよ。誓います。もし設置されていたら、私はこんな話はできないですよ」
「そうですよね。……でも私から情報を引き出そうと、スパイ的なことをしてるってことはないですか?」幸来紗は疑う。
「そんなことは絶対にないですよ。私は、総理の思想とは正反対ですから。……スパイといえばね、昔、私はスパイになりたかったんですよ」
「本当ですか? そもそも、日本にもそんな機関があるんですか?」
「もちろんありますよ。映画みたいに、外国のだけの機関だと思ってましたか?」
「そうですね。ただなんとなく、日本にはなさそうだなぁ、って思っていました」
「でもね、適正検査で落ちちゃったんですよ。でも、お嬢様の話を聞いて、その時の情熱が沸き上がりました。私も、もう46だし、なにか大きなことしたいですね」
幸来紗は、熱くなっている月川を少しうっとうしく感じ始めていた。
「名刺を渡しておくので、なにか協力して欲しいことがあったら、いつでも連絡してください」
「分かりました」幸来紗は、名刺を受け取った。
「ただいま。周人」
「おかえり。どうだった」周人は焦る気持ちを抑えて訊く。
「少しは協力してくれそうな意思を示してくれたけど、難しいね。条件出されちゃって」幸来紗は、顔をしかめる。
「条件ってどんな?」周人の表情は真剣になる。
「タイムマシンの発明が本当に可能なのか、証明してほしいって。それができないと協力する気になれないって」
「そうか…… 友杏さんのお父さんに協力してもらうしかないよね。この時代じゃ、同世代かもしれない。居場所がわかるかな?」
周人は友杏に電話をする。
「もしもーし」友杏は元気そうな口調で電話に出る。
「もしもし、周人です」
「久しぶり。元気? LSJの方の進展はどお?」
「そう、そのことなんだけど、幸来紗が総理と話してくれて、ちょっと、面倒くさそうな問題がでてきて…… 幸来紗に変わるね」
「もしもし、幸来紗です」
「幸来紗ちゃん、元気?」
「はい、元気です。父に協力してもらうために、ちょっと条件を出されちゃって」
幸来紗は、総理、利蔵とのやりとりをすべて友杏に話す。
「分かった。なるほどね…… パパの居場所なら分かるよ。静岡にいる。住所のデータもあるよ。ただ、2024年現在で、タイムマシンの開発を証明できるだけの理論がどれだけできあがっているかが問題だね」
「友杏さん、会いに行けますか?」
「それがね、協力したいのはやまやまなんだけど…… 前もインドで話したと思うけどね、自分の親に会っちゃうことで、自分の存在に関わってきちゃう恐れがあるんだよ。タイムパラドックスが起こっちゃうから会っちゃダメだって未来のパパからも強く言われてたんだよね。みっちーも言ってた、バック・トゥ・ザ・フューチャー的なやつだよ」
「そうなんですね……」スムーズに理解できていなかったが、幸来紗は答える。
「智くんとみっちーに頼もう。私から連絡しておくから」
「うん、分かった。よろしくお願いします」
月川の案内で、幸来紗は、後部座席に乗り込み、横浜へ向かう。
「お嬢様、お疲れさまでした」月川は笑顔で話す。
「行きも帰りも、送ってくださりありがとうございます」
「どうでしたか?」
「条件付きで、国防力の強化は検討してくれそうなんですけど、その条件をクリアできるか? ってところですかね」幸来紗はため息を吐く。
「あの、お嬢様。実はですね、総理の部屋には、盗聴器が仕掛けられていましてね、私は二人の会話を聞いているんです」
「えっ?」下を向いていた、幸来紗の顔は上がる。
「ごめんなさい。悪く思わないでください。これは側近の私だけが総理と情報を共有するために許された特権なのです。他の人間は誓って何も聞いていませんから。それは絶対なので、信じてください」
「全部、聞いていたんですか?」幸来紗は嫌そうな表情をする。
「すみません。全部聞いていました」月川は、運転をしながら頭を下げる。
「まあ、いいんですけど」
「お嬢様、ぜひ、私に何か協力させてください。お嬢様の目標の達成のために力になりますよ。総理に最も近い存在でもあるし、力になれますよ」
月川のテンションは高めだ。
「どうして、そんなに親身になってくれるんですか?」
「まあ、単刀直入に言えば、単純に面白そうだからです。加えて、ワクワクしますね。成功すれば、首都東京を救えるわけですよね。そんな大きなミッションに参加できるなんて、素晴らしいじゃないですか。ミッションの規模の割にはリスクも少なそうだし」
「なんだか、楽しそうですね。あの、ちょっと気になったんですけど、この車に盗聴器が設置されてたりしていないですか?」
「設置されてませんよ。誓います。もし設置されていたら、私はこんな話はできないですよ」
「そうですよね。……でも私から情報を引き出そうと、スパイ的なことをしてるってことはないですか?」幸来紗は疑う。
「そんなことは絶対にないですよ。私は、総理の思想とは正反対ですから。……スパイといえばね、昔、私はスパイになりたかったんですよ」
「本当ですか? そもそも、日本にもそんな機関があるんですか?」
「もちろんありますよ。映画みたいに、外国のだけの機関だと思ってましたか?」
「そうですね。ただなんとなく、日本にはなさそうだなぁ、って思っていました」
「でもね、適正検査で落ちちゃったんですよ。でも、お嬢様の話を聞いて、その時の情熱が沸き上がりました。私も、もう46だし、なにか大きなことしたいですね」
幸来紗は、熱くなっている月川を少しうっとうしく感じ始めていた。
「名刺を渡しておくので、なにか協力して欲しいことがあったら、いつでも連絡してください」
「分かりました」幸来紗は、名刺を受け取った。
「ただいま。周人」
「おかえり。どうだった」周人は焦る気持ちを抑えて訊く。
「少しは協力してくれそうな意思を示してくれたけど、難しいね。条件出されちゃって」幸来紗は、顔をしかめる。
「条件ってどんな?」周人の表情は真剣になる。
「タイムマシンの発明が本当に可能なのか、証明してほしいって。それができないと協力する気になれないって」
「そうか…… 友杏さんのお父さんに協力してもらうしかないよね。この時代じゃ、同世代かもしれない。居場所がわかるかな?」
周人は友杏に電話をする。
「もしもーし」友杏は元気そうな口調で電話に出る。
「もしもし、周人です」
「久しぶり。元気? LSJの方の進展はどお?」
「そう、そのことなんだけど、幸来紗が総理と話してくれて、ちょっと、面倒くさそうな問題がでてきて…… 幸来紗に変わるね」
「もしもし、幸来紗です」
「幸来紗ちゃん、元気?」
「はい、元気です。父に協力してもらうために、ちょっと条件を出されちゃって」
幸来紗は、総理、利蔵とのやりとりをすべて友杏に話す。
「分かった。なるほどね…… パパの居場所なら分かるよ。静岡にいる。住所のデータもあるよ。ただ、2024年現在で、タイムマシンの開発を証明できるだけの理論がどれだけできあがっているかが問題だね」
「友杏さん、会いに行けますか?」
「それがね、協力したいのはやまやまなんだけど…… 前もインドで話したと思うけどね、自分の親に会っちゃうことで、自分の存在に関わってきちゃう恐れがあるんだよ。タイムパラドックスが起こっちゃうから会っちゃダメだって未来のパパからも強く言われてたんだよね。みっちーも言ってた、バック・トゥ・ザ・フューチャー的なやつだよ」
「そうなんですね……」スムーズに理解できていなかったが、幸来紗は答える。
「智くんとみっちーに頼もう。私から連絡しておくから」
「うん、分かった。よろしくお願いします」
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